軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第67話 待ち伏せされていた

夕刻。定時に仕事を終えた私は、日課の訓練のため走り込みをしていました。

騎士団の敷地の外を走っています。騎士団と魔導師団の外周ですね。そのほうが人目が少ないのですよ。

今日は結局、魔導師団長に内部調査を依頼をするということにとどまりました。

ゼイエラの亡霊のことは後回しになってしまいました。人選にも時間がかかることでしょう。

後手後手に回らないと良いですね。

あれ? 珍しい人物が道端に立っています。

「これは、魔導師団長ではないですか。外に出られているなんて珍しいですね」

そう言って、私は足を止めました。

はい、途中で話を切り上げてしまったグレンバーレルが魔導師団の塔から出ているのではないですか。

「誰かが壊した扉を直していたのですよ」

「それは今後、呼び鈴が鳴れば出るように部下を教育しておくという対応をしてくれるということですね」

「はぁ、何故今になって現れたフェリラン」

大きなため息と共に、フェリランがここにいることを問われました。

そう言われましても、部下だったマルトレディルの娘として生まれた理由など、私が一番知りたいものですよ。

「まだ、魔導生物の疑いをかけられているのですか?」

「それはないと理解しました。おかしな魔力が混じっている痕跡がありませんからね」

そうですか。あの話をしている間に、調べられていたということでしょう。

「貴方の死は、この国に多大な影響を与えたのですよ」

「何を言っているのです。暁天のガレイアの死も、残菊のヘルグランゼの死も、黒鴉のオフィレアの死も、多大な影響を与えましたよ」

戦場の死神と言われても所詮は人です。

傷つき多くの者たちが戦場で命を落としていきました。

失っていい命などないのです。

「しかし、私は部下の娘……あ、子供として生まれてきたのです。問われても私には答えられる言葉を持ち合わせていません」

「ああ、それで子供の姿で」

「これでも二十歳だ!」

「……」

絶対にその目は疑っていますよね。

あ、一つ言っておくことがありました。

「グレンバーレル。貴様の仮説は正しかった」

「仮説?突然どうしたのです?」

「血族による特殊魔法など存在しないという仮説だ」

私はそう言って氷の剣を作り出します。

その剣の柄をグレンバーレルの方に向けました。

氷の剣を受け取るグレンバーレル。

「確かに、これはハイラディ侯爵家の魔法ですね」

「その血族が積み重ねてきたノウハウを子孫が会得することにより、魔法が使えているだけ。魔法とは想像力だ。グレンバーレル。貴様の研究は正しかった。私が証明してやったぞ」

私はえっへんという感じで偉そうに言ってやりました。

マルトレディル伯爵家に血族の特殊魔法は存在していません。

ただ、童顔の血が濃いだけなのです。

だから、普通は氷属性の特化型の魔法を使う者は生まれないはずです。

ですが、私は前世でその氷と風の魔法を極めました。その感覚は記憶として残っています。

それにより、シエラメリーナとなった私でも、前世と同じように魔法が使えるのです。

するとグレンバーレルは空を見あげました。

数秒だけれども感覚的に長いと思える沈黙。

「……ありがとう……フェリランだけでした。私の研究を否定しなかったのは」

そう言ってグレンバーレルは身をかがめて、ニコリと笑ってきました。涙目なのは見逃して差し上げますわ。

「一族の血を引いていても、使えない者を知っていましたからね」

「そうですね。あと、フェリラン。貴女に謝罪をしておきたいと思ってここで待っていたのです」

突然、シレッと話を変えてきました。

泣いているのがバレて、恥ずかしいのですかね。

「謝罪?」

このグレンバーレルが私に謝罪? 明日は空から槍でも降ってくるのでしょうか?

そして、私の耳元で言葉を紡ぎました。

「魔導生物研究のサイバディラ。アレがスパイでした。私も団長も彼の嘘を見抜けませんでした。貴女が身内を疑えとあれほど言っていたにも関わらず……申し訳ないです」

……それを何故先ほど訪れたときに言わないのです。その者が魔道具を持ち出した可能性があるのではないですか!

「団長はその責任を取って辞任し、サイバディラの始末をするために帝国に行ったのですが……」

これは返り討ちになったということですね。きっと。

だって、私が知る前任の魔導師団長は薬物研究をしていました。なので戦える者ではないのです。

「途中で見失ったと……各国を放浪していますね」

「それ素材探しの旅になっていません?」

ため息を吐きながら、グレンバーレルが離れていきましたので、きっとそういうことなのでしょう。

「それから、人と物の出入りは監視していますので、不用意に物が外に出たという記録はありません」

「はぁ、そのサイバ?」

「サイバディラです」

「その者のことを何故先ほど言わなかったのです」

「……その話でした?」

「その話です! どうして、こう話が噛み合わないのですかね!」

研究以外の話が、さっぱりもって通じないのはどうにかならないものなのですかね。

彼の頭の中には、今日話した裏切り者の調査と過去の裏切り者の話が個別で管理されているのでしょうね。

「この話は明日、騎士団団長に報告させていただきます」

「……フェリラン。本当に従騎士なんてしているのですね」

それどういう意味ですか?