軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第53話 おかしいです

私は下街をプラプラ歩いています。

日傘を差す従者を伴って……おかしいですわ!

レクスの侍従が何故に私の従者をしているのですか!

はい、私の斜め後ろにはレクスの侍従のエストがいるのです。

カフェを出たところで、馬車をご用意しましょうかと現れ、必要ないと返せば、傘持をしますと日傘を差して私の買い物につきあっているのです。

「あの? レクスは騎士団に行きましたのに、私の買い物に付き合わなくてもいいのでは?」

ワインを数本購入して受け取ろうとしましたら、横から手が出てきたところで言いました。

いいえ、同じことを言うこと、五度目です。

「主はお嬢様のところに戻ってまいりますので、その間は私がお嬢様の荷物持ちをいたします」

同じ答えが返ってくるのも五回目です。

私が待っていると言ったことに対して、文句をいうこともなく。レクスが街をフラフラしている私のところに来るという謎の確信があるというのもどうかと思います。

でも気がつけば、背後霊化していそうだと私も思ってしまいました。

「はぁ、エストさん。貴方、レクスがユーフィア・フェリランにつきまとっていることを良く思っていなかったですよね?今はいいのですか?」

レクスが従騎士をしていた頃、休日までも私の従騎士をするというレクスの謎の行動に、私もエストも苦言を呈していました。

しかし今回はそのようなことを一度も口にしていません。

レクスが死人の名を言い出した時には、諌めていたようですが、レクスの背後霊化をやめるように言っている様子がないのです。

「今と昔とでは違います。それにマルトレディル伯爵家と懇意にすることを否定することではありません」

確かに20年前と今では違いますね。

レクスは、ファングラン公爵家の跡取りで婚約者もいた立場だったのが、今は騎士団団長なのですから。

それに前世はハイラディ侯爵家の影がちらついていましたので、危険視していたのかもしれません。

「しかしファングラン公爵家の当主は、主が継ぐものという思いは変わっていません」

「弟君がファングラン公爵の爵位を受け継いだのですよね? それは難しいのではないのですか?」

ただの使用人が口にすべきことではないでしょう。

「先程話に上がっていた、一族の力のことです」

姿は見えませんでしたが、聞き耳は立てていたのですか。

ファングラン公爵家の力。王家の闇を担うための力ということは分かっています。

しかし詳しいことは知りません。

知ろうとして消されたら嫌ですからね。

「今のファングラン公爵は、主ほどの力は扱えません。ですから我々のような者が役目の身代わりを行って……」

私は途中から両耳を塞いで聞くことを否定しました。これファングラン公爵家の内情です。聞いては駄目なやつです。

「何を考えているのですか?」

普通は話してはならないことを、使用人であるエストが部外者の私に話したのです。

その意図は何なのでしょう?

「主の望みを叶えるのも、我々の役目だと思っております」

レクスの望み……アレですか。

私は否定しましたわよ。

「どちらにしても不相応です。それに今の話と、レクスの望みは繋がりません」

エストは今のファングラン公爵を降ろして、レクスを当主にすることを望んでいます。しかし、それは現実的ではないでしょう。

普通であれば、ご子息のファングラン公爵令息が跡を引き継ぐことになります。

それに万が一、そのようなことが起きても、王家の闇を担うファングラン公爵家に田舎の伯爵家の者が嫁ぐことは、それこそありえません。

「それから、私の悪評はお聞きになっていますよね?」

意図的に流されたであろうシエラメリーナ・マルトレディルの噂です。誰が再起不能になるまでボコるのですか。

「不相応だと排除するのが普通ですよ」

悪評がつきまとう私は、騎士団団長にしろ、ファングラン公爵家にしろ、周りが嫁ぐことを許さないでしょう。

それに私はマルトレディル伯爵家の領地の端で、前世には味わえなかったほのぼのとした田舎暮らしをしていくつもりなのですから。

「それぐらいはどうにでもなりますよ」

……背後から聞こえてくる言葉に、うなだれます。ファングラン公爵家が動けば、正しくなくても『是』となりそうで怖いですわ。

「噂はこのままでいいです。私は結婚するつもりはありませんので」

家族というものを私に与えてくれた、父や母に恩を返したいので、このまま領地で暮らすことを望みますわ。

「しかし、主を嫌っているわけではありませんよね?」

それ、どういう意図がある質問なのですか?

「うーん? 好き嫌いというより、元部下という感覚のほうが大きいですかね?」

隊長呼びが直りませんし、敬語も直りませんし、私のほうが部下なのですけどと何度言ったことでしょうか。

あと、知り合いの子供が成長して、すごいわねという親戚のおばさんのような感覚でしょうか?

「わかりました。それであれば、こちらで対処いたしましょう」

「何が!」

え? 今の話って対処するような話だったでしょうか?