軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

公爵再来

公爵一行が家に帰った翌日から2週間、竜馬は狩りとスライムの世話で忙しい日々を送っていた。そんなある日、突然4人の人間が竜馬の家に訪れる。

「おーい! リョウマ! 開けてくれ! 俺だー! ヒューズだ! 敵じゃない!」

竜馬の家の前で叫んでいるのは、2週間前に怪我人としてここを訪れたヒューズ。一緒に居るのも同じくここを訪れたジル、カミル、ゼフの3人だ。彼らは家の入口が岩で塞がっていたため中に声が届くように大声をかけているのだが……肝心の竜馬は彼らの後方にある茂みに居た。

「今、開ける!」

「おお!? 何だ、外に居たのかよ」

「狩り、行ってた……で、どうしてここに」

「改めてこの前の礼を言いにきたのさ。そのための土産もあるんだが……ちょっと多くてな、少し離れた所で空間魔法使いの執事とメイド2人、あとラインハルト様とそのご家族が森に用があって一緒に居るんだ。急で悪いが、今から呼んでもいいか? 都合が悪ければ日を改めるが」

竜馬は一瞬考えたが特別な用事はなく、わざわざ来てもらったところを理由無く追い返す気にはならなかったため了承すると、護衛の4人は一度森にいるというラインハルト達を呼びに向かう。

その間、竜馬は狩りのために外に出していたスライムを呼び戻し、やってくる人々を迎える用意を整える事にした。

そして30分ほどが過ぎて用意が終わると、竜馬は家の前で日光浴をするスライム達、その数なんと1000匹近くが 犇(ひし) めく中心で珍しい客を待っていた。

やがてラインハルト一行が来たのだろう。スライム達が大勢の人の接近に気づいて体をぶるぶると揺らし始めた。竜馬が一度服の乱れを整えて森を眺めていると、じきに向かってくる人々の姿を捉える。

人数は全部で11人。ラインハルトの後ろに見覚えの無い美女と美少女、老いてはいるが背筋は真っ直ぐで威厳のある男性が続き、さらに後ろにヒューズから聞いた通りメイドが2人と老執事が1人。護衛の4人に前後を挟まれて歩いていた。

(服装からしてラインハルトさんの後ろの3人が家族か。しかし執事服、はともかくメイド服は目立つな……森の中で動きにくくないのかね?)

「……あちらの方ですか?」

「スライムがあんなに……」

「ほう、多くのスライムをテイムしていると聞いていたが、あれほどとは思わなんだ」

「スライムとは言え、よくあれほどの数を操れるわね」

「従魔は数が増えるほど契約するのも難しいはずなのに……」

竜馬がメイド服の機能性を疑問視している間にも彼らは近づき、大量のスライムを目にした若いメイドが顔を引きつらせている。それに対してラインハルトを除く公爵家の3人は興味津々といった様子でスライムが集まるのを眺めていた。

そして彼らが家の前の広場にたどり着くと、まずラインハルトが前に出て竜馬に歩み寄る。

「リョウマ君、2週間ぶりだね。もう聞いたとは思うけど、今日は君に改めてこの前のお礼を言いにきたんだ。少しだけど、お土産も持ってきた」

「ありがとうございます」

「いやいや、ほんの気持ち程度の物だからね」

「あなた、その前に私たちを紹介して下さいな」

後ろから美女に声をかけられ、そうだったとラインハルトは紹介を始めた。

「紹介しよう。私の父であるラインバッハと妻のエリーゼ、それから娘のエリアリアだ」

「ラインバッハ・ジャミール、ジャミール公爵家の先代当主じゃ。いきなり押しかけてすまぬのぅ。よろしく頼む」

「エリーゼ・ジャミールよ、先日は夫と部下を助けてくれてありがとう」

「エリアリア・ジャミールですわ。よろしくお願いします」

「お初にお目にかかります……私、リョウマ・タケバヤシと申します……遠い所を、ようこそいらっしゃいました…………大したもてなしは出来ませんが、歓迎させていただきます」

途切れ途切れではあるものの、その丁寧な言葉遣いに公爵家の4人とその周りにいる護衛やメイド達が目を丸くするが、すぐに我に返ったラインバッハが声をかける。

「そんな丁寧な言葉遣いは不要じゃよ、あまり気にせずに話してくれていい。もてなしも不要じゃ、いきなり来たこちらが悪いのじゃからな」

「ありがとうございます。それでは中、へ……あ」

話すなら家の中へ、と案内しようとしたところで沢山のスライムが入口の前を塞いでしまっている事に竜馬は気づき、中へ入るように指示を出す。するとスライム達は入口に近い個体から順に家の中へとなだれ込む。

それを見たラインハルトが一言。

「明るいところで見るとすごい数だね……気のせいかな? 少し増えてないかい?」

「……皆さんが帰った後……分裂しました……」

現在、竜馬のスライムの数はこうなっている。

スティッキースライム×364

ポイズンスライム×323

アシッドスライム×211

クリーナースライム×11

スカベンジャースライム×730

ヒールスライム×2

スキル 回復魔法Lv1 生命力強化Lv1 光合成Lv3 消化Lv1 吸収Lv1 分裂Lv2

はっきり言って増え過ぎであり、スライムが分裂した直後の竜馬は増えたスライムとの契約や餌の確保に追われることになった。

だがその結果、ここに来てようやく竜馬も自重というものを思いだし、このままだと森の生態系に影響が出る可能性と増えすぎたスライムの扱いに悩み始め、今は手始めに餌の量を減らし、進化と分裂に栄養を使わせないようにしている。スライムは生きるだけならそれほどの食事は必要がないからだ。

もしこれでダメなら責任を持って増えすぎたスライムを間引く事も考えているが、この2週間はたまたま森に集落を作り始めていたゴブリンの群れがあったので、それを殲滅して凌いでいる。

また、ゴブリン殲滅は餌の確保だけでなく思わぬ幸運も招いた。ゴブリンとの戦いで大怪我を負って死にかけのスライムを見た竜馬が大急ぎで死にかけのスライムを集めて回復魔法をかけると一部のスライムは一命を取り留め、そのうちの2匹が翌日には回復魔法を使える新しいスライム、ヒールスライムに進化していたのだ。

尤(もっと) もヒールスライムが生まれた事で竜馬に再び火が付きかけているのだが、現状を見てなんとか堪えていた。

「部屋に入りきるのかい?」

「大丈夫……になりました……」

「大丈夫になった、とはどういうことだ?」

「こういう事、です」

ラインハルトがそう聞くと、竜馬はスライムにある命令を出す。

実は分裂後の一番の問題が生活スペースの不足であった。しかし、それは分裂して3日後に偶然解決されている。その発端は竜馬の心に浮かんだ妄想に近い疑問だ。

竜馬は一度、スライム用に用意した居住スペースから溢れ、自分の寝室の床まで這いまわるスライムを見て呟いた。

『このスライム達、合体とかしないのか? こう、ド○クエみたいに……』と。

その瞬間、全てのスライムが激しく震え、同じ種類のスライム同士が一箇所に集まり、あっという間に合体して1匹のスライムに変わる。

慌てて竜馬が鑑定を行った結果は

ビッグスティッキースライム×1

スキル 強力粘着液Lv5 粘着硬化液Lv4 粘着糸吐きLv3 物理攻撃耐性Lv1 肥大化Lv2 縮小化Lv4 ジャンプLv2 消化Lv3 吸収Lv3

ビッグポイズンスライム×1

スキル 毒液生成Lv4 毒耐性Lv4 麻痺毒液生成Lv4 物理攻撃耐性Lv1 肥大化Lv2 縮小化Lv4 ジャンプLv2 消化Lv3 吸収Lv3

ビッグアシッドスライム×1

スキル 強酸液生成Lv5 強酸耐性Lv4 物理攻撃耐性Lv1 肥大化Lv2 縮小化Lv4 ジャンプLv2 消化Lv4 吸収Lv3

ヒュージスカベンジャースライム×1

スキル 病気耐性Lv5 毒耐性Lv5 悪食Lv6 清潔化Lv6 消臭Lv6 消臭液Lv4 悪臭放出Lv5 養分還元Lv4 物理攻撃耐性Lv2 肥大化Lv3 縮小化Lv5 ジャンプLv2 消化Lv6 吸収Lv3

一度は突然の事に驚きながらも、元に戻れと言えばすぐにスライム達はバラバラに別れて元の数に戻り、ひと安心した竜馬は興奮して実験を繰り返す。

その結果合体と分離は自由であり、同種のスライムが100匹でビッグ~スライム、500以上でヒュージ~スライムになると判明した。ちなみに、100未満の数では合体不可能、名前がビッグからヒュージに変わる境目が499と500だった。

そして幸運にも合体したスライムは縮小化というスキルの効果で普通のスライムより少し大きい程度まで小さくなることができ、餌も1匹のスライムと比べると数倍になるが、100匹のスライムの塊として考えれば20分の1から50分の1の量にまで抑えられる。つまりスペースと餌の量が大幅に節約でき、竜馬はこれを生活環境の維持や餌の枯渇を防ぐ自己防衛能力ではないか? と確証は無いがそう考えている。

また、ビッグスライムになる最低数の100匹以上かつ同種のスライムならば今のところいくらでも合体でき、スキルから分裂が無くなっている事も含めると、ビッグ以上のスライムはそれぞれの種類のスライムの集合体とも考えている。

合体や縮小化のスキルで小さくなった分の体積は何処に行っているのかは不明であるなど、まだ謎は残されているが、とりあえずスペースと餌の問題の解決に有効であると喜んで使っていた。

そのため竜馬は見たほうが早いとスライムに命令し、質問をしたラインハルト達の目の前で合体させたのだが……その様子を見た公爵家の大人3人が目を見開き、他の者は声を出さずにビッグスライムを凝視していた。

「ビッグスライム!?」

「まさか!?」

「いえ、間違いありません……あなた、ビッグスライムと契約しているの?」

「……おかしい、ですか?」

「ビッグスライムはね、今まで誰もテイム出来なかった魔獣なのよ?」

「え?」

今度はエリーゼの言葉に竜馬は困惑し、それを察したラインバッハが説明を始めた。

「ビッグスライムなど、一部のスライムの上位種には従魔術の肝である従魔契約の効果が無いのじゃよ。契約を試みる者はたまにいるが、成功事例が無いのじゃ」

それを聞いた竜馬は得心した。

「従魔契約、意味ない……当たり前です……」

「どうしてだい?」

周囲の目が竜馬に集まり、少々居心地の悪さを感じながら竜馬は話す。

「ビッグスライム……多数のスライムの集まりです。

……従魔契約の条件、満たせません。

契約できるのは1度に1匹、1度に沢山は無理。

契約の時に100の中の1、正確に把握するのも無理。

核が1つにしか見えないから…………だから、従魔契約……効果ありません。

僕は……沢山のスライムと契約してから……集めたから……出来ました……」