軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レオンの力

魔法学の教室から他の生徒が出て行った後。応援に呼んだ同僚にも帰って貰う。

ハウエル先生が契約書に署名し、血を一滴垂らす。微かに光るのを確認してからペンを置くと、意を決したように口を開いた。

「殿下、どういう事か伺ってもよろしいでしょうか」

「私も訊きたい」

マナミリュ殿下がレオンに向き直る。

「レオン、君はトマリーナ国の魔法使いなのか?」

「国の? いや?」

「それだけの素質があって?」

「素質? よく分からないが、まともに訓練をしたのは数年ぶりだ。知っているだろう? 私はついこの間まで死にかけていた」

「あぁ……」

マナミリュ殿下が頭を抱えて、怪訝そうな顔付きのハウエル先生に目をやった。

「念の為の確認ですが、レオンが取る授業の担当教師には事前に魔法契約をして貰ったはず。ハウエル先生もしましたよね?」

「はい。身分を明かさないという契約ですね」

つまりハウエル先生もレオンの本当の身分を知っているということ。

マナミリュ殿下は、ふうと息を吐いた。

「レオン、魔力循環の訓練はしていたのか?」

「うん。ほとんどの時間、ベッドの中にいたから暇だったんだ。魔法も使ってみたかったし」

「かなり幼い頃からだよな?」

「ああ。でもさっきみたいに上手くいかなかった。身体が壊れていたからかな? いつもの調子で魔力回路を意識してみたら、急に魔力が溢れてきて慌てたよ。物凄い勢いで巡り始めたから必死に止めようとした。制御するのが大変だった」

「……そうか。そうだろうな」

レオンはそうとは知らず、壊れた回路に何度も何度も繰り返し魔力を流そうと努力してきた。その結果、扱える魔力量が増えていったらしい。これまでは回路が壊れていたから分からなかったのだ。

それはとても難易度が高い訓練だった。努力しても成果が見えないので、途中でやめてしまう人が多い。

でもレオンは膨大な時間をかけて、ひたすら頑張っていた。努力は無駄にならず、レオンの体内に感覚が残っている。

サールが不思議そうに尋ねた。

「先ほどレオンが光って、それを見た先生や殿下、他の生徒達までとても驚いていました。何の意味があるのですか?」

「光った? 私が?」

「はい。全身がピカーッと。眩しいほどに」

「あぁ、それはマズいな」

「光ると駄目なんですか?」

「歴史を知っている人は青ざめるだろう。帝国時代の戦争で、暴れ回った強力な魔法使い達はみんな光っていた。遠目でも居場所が分かるほどに」

「あぁ、だから……」

レオンは自分の手を見下ろした。意識して右手だけに魔力を流すと、そこだけ白く光り出す。

「うわぁ……まじか……」

「レオン、その力は秘密にしておいた方がよさそうだ。とりあえずこのクラスでは大丈夫だが、よそでは使わないように」

「了解した。……ちなみに私はその気になれば、すぐにでも魔法が使えるのだろうか」

「当然だ。使える属性は先生なら調べられるが、我が国で調べない方がいいだろう。国家機密にあたる」

「そうだな。父上に手紙を送ってみるよ」

マナミリュ殿下は薄く微笑んだ。

「さすが王族だな。とても素晴らしい才能だ。あの光り方からすると、複数の属性を使える可能性が高い。それを踏まえて今後の授業は……レオンは座学だけで実技は見学だな。他の三人の指導を頼む」

レオンは残念だと肩を落とした。

「魔法が使えるのに、使ってはいけないのか……」

「王子の能力を他国で広める訳にはいかないだろう。友好国とはいえ、何が起こるか分からない。我が国には敵も多い。どの国の間者が紛れ込んでいるのか分からない」

「自室で密かに教本を見ながらなら、やっても構わないだろうか」

「う~ん。その膨大な魔力を完璧に制御出来るのであればいいのだが……寮を吹き飛ばされては困る」

「分かった。無理はしない。完璧な制御を身につけるまでは、専門家の立ち合いの元で練習するようにする」

「それがいいだろうな。祖国の許可が下りてから、ハウエル先生に教わってくれ」

「分かった。しばらくは教本を読むだけにしておく」

「くれぐれも無茶をしないようにな」

「分かった。私も誰も傷つけたくない」

二人の間で話はついた。

しばらく魔法の実技はおあずけになったが、レオンは自分が魔法を使えると知って、とても嬉しそうだった。