軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後奏1「平穏なだけではつまらなくってよ!」

ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!私は今、ソーラス王国でゴーストを狩っておりますの!

まあ、ゴーストなんて、銀の剣があればスパスパ切れちゃうような雑魚ですもの。大した敵じゃありませんわね。まあ、銀の武器が無かったら攻撃手段皆無のやられっぱなしになるわけですから、ソーラス王国には荷が重いのでしょうけれど……私にはちょいと物足りませんわねえ。魔法を使うゴーストが混じっていたって、誤差ですわ、誤差。

それでも、数が数ですからそれなりに楽しめましてよ。いかに速く、いかに多く倒していくかを突き詰めていけば、それは1つのゲーム足りうる楽しさになってくれますの。

「ヴァイオリア。そっちの調子はどうだ」

「100はやりましたわね。途中から、私を恐れるゴーストが逃げていくようになってしまって、効率が落ちてますわあ……」

「そうか。俺もだ」

……ちなみに、これを話しているドランは、銀の指輪を付けているだけの拳でゴーストを殴り殺せますわ。銀の指輪1つでどんな攻撃をしているのかしらと思ったら、どうやら殴り殺してるらしいですわ。ゴーストを殴り殺す奴なんて、この世界広かれどもドランくらいなものでしょうね。……やっぱこいつ、バケモンでしてよ!

それからも私達のゴースト狩りは続きましたわ。

「なーヴァイオリア。こいつ切っても切っても居るんだけど、増えてる?」

「あなたが銀の刃を使ってないから減ってないだけですわ!お貸しなさいッ!あなたの仕込みナイフ、銀のに代えてやりますわっ!」

チェスタが銀でもない普通のナイフでゴーストをぺちぺちやってたのの間に入って面倒を見てやったり。

「ゴーストってトロいから僕程度の腕でもナイフで殺せちゃうんだ。へー」

「あらキーブ!いい腕ですわね!その調子で頑張ってくださいな!」

キーブが久しぶりに銀の投げナイフで戦っているのを褒め称えたり。

「ヴァイオリア様ー!銀の杖とは、どのように使えばよい物でしょうか!?魔力の流し方を変えればよいのですか!?」

「普通に魔法を使えばよくってよ!魔法なら効きますわ!……もし魔法が上手く発動しないようなら、その銀の杖でぶん殴るのですわ!」

「わ、分かりました!ぶん殴ります!」

リタルにアドバイスをしてやったり。……ええ。銀の杖はリタルとあまり相性が良くなかったようなんですの。ということで、単なる鈍器になってますわね。

まあ、そんなこんなで楽しくゴースト狩りをしましたわ。ソーラス王国を救うべく、怒涛の勢いでゴーストを狩りつくしていく私達の姿はソーラス国民にどのように見えたかしらね。

それに引き換え、ソーラス王家はまだ銀の武器の分配だのなんだのでもたついているようですから……まあ、ソーラス王家の支持率が下がる分には愉快ですからよくってよ!

さて。そうして私達はソーラス中のゴーストを狩りつくしましたわ。私達が撒いたゴーストですけれど、それをいざ撤去するとなると結構面倒なものなんですわねえ。ええ、つまり、費用対効果はバツグン、ってことですわね!

「ただいま戻りましたわ、ジョヴァン!」

「えっ早くない?まだ3日しか経ってませんよ、お嬢さん」

「3日もあればソーラス中のゴーストを狩るくらい、簡単なことでしてよ!」

船に戻ったら、お留守番だったジョヴァンに慄かれましたわ。まあ、ソーラス王国の兵士が頑張ってゴーストを撤去しようと思ったら一週間や二週間じゃきかないのかもしれませんけど、こちとらフォルテシア王国の精鋭5人ですのよ?ゴースト如き、3日もあれば十分ですわ!

「ということで、ジョヴァン。すぐに銀の武器が値崩れしますから、そこを買い叩いておしまいなさいな」

「はいはい。いやあこんなに簡単に稼げちゃっていいのかしら」

「よくってよ!」

銀の武器を売って買い戻すことで手に入る差額は、要はソーラス王家からの奢りってことになりますわね。ま、迷惑料として受け取っておいてやりますわ!おほほほほほ!

そうして私達は帰国しましたわ。

私達が帰国している間にもソーラス王国が大変なことになっているらしいですけどそんなん知ったこっちゃーなくってよ。ソーラス王国から食料の供給だけはさせますけれど、それ以外は適当にやっててくださいな。

「はー、疲れましたわあ……」

ということで執務室に戻った私は、早速ソファでくつろがせていただきますわ!運動ばかりでしたから、ちょいと疲れましたのよ。まあ、今日1日は少しゆっくり過ごした方がいいかもしれませんわねえ……。

「なーなーヴァイオリア。このワイン開けていい?」

「ええ、よくってよ。今回はあなたも働かせてしまいましたものね。好きなの開けてよくってよ」

私がくつろぎ始めた横で、チェスタもぐでっとしてますわ。まあそうですわよね。彼、ずっと戦いどおしでしたものねえ……。

「ヴァイオリア。このお菓子もらっていい?」

「ええ、好きなだけどうぞ。ああ、リタルも好きなのお選びなさいな。お茶、淹れて差し上げますわ」

「いいのですか!?光栄です!」

キーブとリタルがそれぞれにお菓子の棚から好きなのを選び始めましたから、それに合うお茶を用意することにしましょうね。可愛い子には美味しいお菓子とお茶があるべきなのですわ!

「俺は少し眠るぜ。悪いねお嬢さん。仮眠室、借りるわ」

「ええ、ご自由にどうぞ」

ジョヴァンはちょいとふらふらしながら眠りに行きましたわねえ。多分、眠って起きたら早速銀の武器の買い付けが始まるんでしょうから、今はゆっくり休んでほしいところですわあ。

「今回は皆、ご苦労様でしたわね。今日くらいはゆっくり休んでくださいな」

ジョヴァンだけじゃなくて、ここに居る皆に休憩が必要ですわね。なんだかんだ、優秀だと使い倒される運命にありますもの。その分、休憩すべきところでは休憩していかなければ。

「オペリアの方はもう少し放置するのか」

「そうですわねえ……向こうもけしかけたクラーケンがもうちょっとばかし暴れてからの方が楽しくってよ」

オペリアもオペリアで、麻薬を流してくれやがってますから、早目にシメてやりたいところですけれど……それはもう少し後でにしたいですわ。何せ私、忙しくって疲れてますのよお……。

……と思っていたら。

「ヴァイオリア。調子はどうだ」

「お兄様っ!いらしてたんですのね!?」

なんと!お兄様がお戻りでしたわ!……その肩、明らかにカタギじゃない人間の簀巻きを2つも乗せて!

「ああ。可愛い妹の為に、土産を持ってきたぞ。そら」

お兄様は簀巻き人間をごろんごろん、と床に転がすと、満面の笑みで説明してくださりましたわ。

「こっちは穀倉地帯に火をかけた奴のリーダーだ。他の工員はあまりに骨が無かったのでな、殺してしまった」

「あらまあ。でもリーダーだけでも公開処刑にできれば十分ですわね」

なんと。お兄様ったら、もう穀倉地帯の放火魔をやっておいででしたわ!なんて素敵なお土産なのかしら!

「こいつ、やっぱり火炙りがよろしいかしら。やはり放火は私の十八番ですもの。それをパクった罪は重くってよ!」

「そうだな。やはりそうしてやるべきだろう。公開処刑すれば見せしめにもなる。治安の維持に役立てていこうではないか」

素敵なことに、穀倉地帯の放火魔の処遇がもう決まりましたわね。ええ。未だにこの国では公開処刑は娯楽として楽しまれておりますもの。国民へ娯楽を提供してやるという意味でも、他国への……特にこいつを送り込んできたソーラスへの見せしめとしても、そして私の暇潰しとしても、丁度よくってよ!

「それで、お兄様。こっちは何ですの?」

それで気になるのは、もう1人の方ですわ。そう。簀巻きは2人分ありますのよ。

「ああ。これは、オペリア王国の麻薬売買組織のトップだ。オペリアの港で諸々の処理に追われていたところを生け捕りにしてきたぞ」

……ええ。

ビックリなことに、お兄様ったら、私が休憩後に処理し始めようとしたヤツをもうやっておいででしたのよ!

「ということで、全部解決しましたわ」

「おめでとうございます、ヴァイオリア様!」

ぱちぱちぱち、とリタルが拍手してくれてるところ悪いんですけど、私はなんとなく釈然としないものを感じていますわぁ……。最後のはお兄様の手柄ですものね。気づいたら解決してた、ってなもんですから、全然実感がありませんのよ……。

「ま、気持ちは分からないでもないけどそんな顔しなくていいんじゃないの。ジョヴァンが稼いだり、オペリアに麻薬を売る伝手ができたりしたんだからさ」

キーブが慰めてくれている通り、まあ、悪いことばかりじゃありませんのよね。ええ。

何せ、エルゼマリンの港を襲っていたクラーケンを女王自ら討伐したとあっては民衆からの評価は鰻登り。ついでにそのクラーケンをオペリアに嗾けたことで憎きソーラス王国を孤立させ、ふざけた関税と食料価格を是正させてやることができ。ついでにそのゴタゴタに乗じてジョヴァンが銀の武器でしこたま儲けて。

……そして今回、お兄様が見つけてきてくださった穀倉地帯の放火犯は無事、火刑に処すことができましたし、公開処刑を楽しみにしている民衆に娯楽を提供できましたし……。何より、オペリアの麻薬売買組織のトップもお兄様が捕まえてきてくださいましたもの。そこの利益が大きくってよ。

何をしたかっていったら、簡単なことですわ。オペリアの麻薬売買組織のトップさんをチョイと脅して、フォルテシア王国に麻薬を入れないことと、フォルテシア王国から麻薬を輸入することを約束させることができましたのよ。これでオペリア王国の裏世界にも私の権力が及ぶことになりますわねえ。おほほほほ。

……ということで、一応、完全勝利、ではありますのよ。

ゴースト狩りで一暴れできましたし、ソーラスの国王に一泡吹かせてやれましたし、オペリアの麻薬売買組織が私のものになるのも時間の問題となりましたし。自国の食糧も、無事に確保できる算段が付きましたし……そして何より、周辺諸国に対して見せしめの効果は、十分にあったんじゃないかしら。

「やっぱり、今後とも定期的に暴れていかなければなりませんわねえ」

革命が起きたての国を、年若い女王が1人で治めているとなれば、我が国を狙う不届き者が大勢湧いて出るのも已む無しですわ。ですから今回みたいに、諸外国を巻き込んで暴れて見せてやることで、この国の平穏を保っていかなければなりませんのね。

「はー、今後もこの調子だと困りますわねえ……。諸外国、大人しくなってくれりゃーいいんですけど」

「いっそのこと、隣国もまとめて統治してしまえばどうだ」

「流石に国はいくつもは要らなくってよ!」

ドランがくつくつ笑いながら飛ばしてきた冗談を叩き落として、私はため息を吐くことになりましたわ。

(……まあ、ドランの冗談が実現してしまうの、そう遠くありませんでしたけど……。)

……今回の一連の騒動で分かりましたけれど。

私、平穏を望む性分じゃないんだと思いますわ。

ずっと同じところに留まっているなんて、御免ですの。ですから、他国に吹っかけられた喧嘩は全て買って勝って差し上げますし、それが無ければ自国内でより高みへ高みへと駆け上がっていきたいんですのよ。

であるからして、今回みたいなのは大歓迎、ということですわね。

ええ、勿論、面倒が勝るようなのは御免ですけど。でも、私に暴れる口実をくれるような、素敵なトラブルは歓迎していきたいところですわ。……今回ので、それが分かっちゃいましたわ。

「私って、女王に不向きですわねえー……ねえ、お兄様?」

国民からしてみたら、波乱を喜ぶ女王なんて、迷惑なものなんじゃあないかしらね。勿論、だから何だって話でもありますけど。

「ふふ、そうか?私にはお前が生き生きとしているように見えるがな」

……まあ、お兄様の仰る通り、私自身は楽しいんですのよ。厄介なことに。

ですから……今後もこの調子でいくんだと思いますわ。この国も、私も。

「さ。ひとまず色々と片付いたことを祝して、お茶にしましょう!」

ま、難しいことなんて考える必要はありませんわね。向いていようがいまいが、国民が迷惑しようがしまいが、この国の女王は私。この国は私のものなんですもの!

「俺は酒の方がいいんだけど」

「はいはい、好きなの持って行きなさいな」

「僕、お茶を淹れますね!」

「適当にお菓子、空間鞄から持ってくる」

チェスタがワインを漁り始めたり、リタルがお茶の準備を始めたり、キーブが空間鞄からお茶菓子のケーキスタンドを取り出して選び始めたり。そうしている間に、ジョヴァンがテーブルの準備をしていますし、ドランはワイングラスを棚から取り出していますし、お兄様はちゃっかり着席していますし。

ですから私もちゃっかりお兄様のお隣に着席して、お茶を楽しむことにしますの。

色んなことがあるんですもの。それら全てを楽しみ尽くさなきゃ、勿体なくってよ!

……ということで、それでは皆様、ごきげんよう!今日も明日も明後日も、どうか楽しい日々をお過ごしくださいな!