軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後奏1「救って差し上げますわ!」

ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

私は今、目の前で土下座してるソーラス王国の使者を眺めているところですの!

けれど私、使者ごときに土下座されたって嬉しくありませんの。それでしたら適当にクリスあたりに土下座させた方が面白くってよ。

私が求めるのは、ただ1つ。

うちを舐め腐った関税引き上げと食料価格高騰をやってくれた不遜なソーラス国王その人に土下座させてやることですわ!

「頭を上げなさいな」

ということで私、ソーラスの使者にそう優しく声を掛けてやりましたの。

ソーラスの使者は希望を滲ませた表情で顔を上げて、私を見上げましたわ。……けれど、そこできっと、気づきましたわねえ。

私の横に立っているリタルは隠すことなく怒りを滲ませていますし、その反対隣りに控えているキーブは無表情ながら目が滅茶苦茶に怖くってよ!

そして更に、謁見の間としているこの部屋の入口は、やたらとガタイのいい男とガラの悪い男……つまりドランとチェスタによって封鎖されていますわ!

ソーラスの使者に逃げ場なんてありませんわ!救いの手に見えるかもしれないものは私の微笑みだけですの。けれど私だって、こいつを救ってやる気はサラサラ無くってよ!

「そういうことでしたら、私、直接ソーラス王国に伺いますわ」

「へ……?」

ほら、全く予想していなかった言葉が私から出てきて、使者が困惑していますわねえ。この表情はちょっぴり面白くってよ。

「そして、国王陛下と直々にお話ししたくってよ」

私は微笑んで使者を見下ろしてやりますけれど、使者にはちゃーんと意図が伝わったようですわね。

『土下座するなら国王にやらせろ』と。これが嫌なら最初から舐め腐った態度を取らなければよくってよ!おほほほほほ!

ということで私達、華麗なる船旅と参りますわ。

ソーラス王国までは船で移動しますのよ。そこから後は陸路で王城まで……ということになるでしょうけれど、まあ、折角ですもの、私はドラゴンで行きますわ。使者より先に王城に到着してやりますわ!

折角ですから大砲の一発くらいはぶち込んでやりたい気分ですけれど、まあ、ゴーストに襲われて慌てふためく国の姿を見ることでその代わりとしてやりましょうね。

そんな船旅ですから、私、久しぶりにワクワクしてましてよ。やっぱり戦うことも争うことも、私の活力となるのですわぁ……。

「どう?お嬢さん。楽しんでる?」

「ええ、とっても」

私が甲板で水平線を眺めていたら、そこへジョヴァンがやってきましたわね。

「じゃ、そんなお嬢さんに差し入れってことで。折角の船旅なんだもの、バカンス気分で楽しんだっていいじゃない?」

そしてジョヴァンが空間鞄から取り出していくのは、まず、ミニテーブル。そして椅子。私をエスコートして椅子に座らせたら、その次に出すのはケーキスタンド、ですわね。……けれどこのケーキスタンド、乗っているのはお菓子ばかりじゃなくってよ。

ジャガイモのガレット、チーズとナッツの盛り合わせ、お肉のリエットやレバーペーストをクラッカーにのせたもの、ローストしたドラゴン肉……それに、濃厚なチョコレートケーキやスパイスとお酒を効かせたドライフルーツのバターケーキ。

ま、要はワインのおつまみですわ。そして案の定、ジョヴァンが次に出してきたのはワインのボトルでしたわ!

「あら素敵。じゃあ椅子、もう一脚出しますわね」

「あらほんと?なんたる幸福。じゃ、お言葉に甘えて俺も頂くとするかな」

「それを想定して来たくせによく言いますわぁ」

どー見てもこのおつまみ、1人分にしちゃ多くってよ。ということで私の空間鞄から椅子を1つ取り出して、私の向かいに設置してやりますわ。

そこへジョヴァンも着席して、きりりと冷えたワインを開けてグラスに注いで……柔らかな陽光と爽やかな潮風の中、優雅なティータイムならぬワインタイム……これ、アフタヌーンワインって言えばいいのかしら?アフタヌーン酒?何て呼びますの?どなたか教えてくださいまし!

「で、お嬢さん。ソーラス相手にどういう交渉の仕方をするつもり?」

「あら、至極簡単ですわ。『関税がありますので定価で武器を卸すのは少々難しいんですのよ』と言ってやりますの。そうすれば向こうは関税を元に戻さざるを得ないでしょうし、戻さないと言ってきたら卸す武器の量をしこたま減らしてやりますわ。ゴースト相手に滅びりゃよくってよ」

「わーお、悪魔」

それ、私にとっては誉め言葉ですわねえ。ジョヴァンも誉め言葉のつもりで言ってますわ。おほほほほ。

「そして、もし向こうが関税を下げることを真っ先に伝えてきたら、『こちらも頂きたいものがありますのよ』って、食料供給の話を持ち出しますわ。食料価格を相場の3倍のままで言ってくるようなら、こっちの武器の値段も相場の3倍ですわね」

ま、こちらの要求は至極単純ですの。『公平な取引を望む』と。ついでに、『なめてかかった分の謝罪を望む』と。

ただそれだけですわ。それだけの主張をするためにこんな手を使わなきゃいけないんですから、因果なものですわね。

「あら優しい。じゃあ、向こうが食料価格を相場通りに出してきたら、武器の価格も相場通りにしてやるってわけ?」

「ええ。まあ、ほんのり気持ちばかりボッタクりたいところですけど。……けれど何よりも、『ここで購入数を決定してくださいまし』って迫ることが重要なのですわ。『この場での取引以降は他国との兼ね合いもあるので、希望するだけの武器を供給することができなくなる可能性が高い』とでも言ってやりますの」

ま、要は脅しですわね。『ここで即決なさい』と脅してやるのですわ。そしてしっかり契約を結んでしまいますのよ。もう反故にできないようにね!

「それで、相手に大量の武器を買わせて、こっちに大量の食糧を売っていただいたら、私とドランでちょっと『お楽しみ』してきますわ」

もう、考えただけでワクワクしますわ!私、ソーラス行きで一番楽しみにしてるのはソーラス国王の土下座ですけど、その次に『お楽しみ』に期待を掛けていますの!

「……『お楽しみ』?ドランと?まさかいかがわしいことじゃーないでしょうね」

「このメンツでいかがわしいことすると思いますの……?単なるゴースト狩りですわよ……?」

そう。私とドランと、あと希望するならチェスタ辺りも加えて、私達、ゴーストハントと参りますのよ。

ジョヴァンが『成程ね!』とけらけら笑いながら手を叩いていると、『何やってんの?』とチェスタが寄ってきましたわ。まあ、気分がよろしいんですもの。チェスタも混ぜてやってもよくってよ!椅子とワインもう1本を鞄から取り出して差し上げますわ!

……と、そうして私達のアフタヌーン酒盛りが始まったところで、次々に『僕も混ぜてよ』とキーブがやってきて、『僕もご一緒させてください!』とリタルがやってきて、そして『俺が舵を取っている間に酒盛りとはな』とドランがのっそりやってきましたわ。しょーがないから全員で酒盛りにしましたわ!船の舵はクリスに任せましたわ!

まあ、少し早いですけど、勝利の美酒ってことでよろしいんじゃなくって!?おほほほほ!

はい。ということで翌日。

「ふざけた関税と食料価格を吹っかけてきたことについての説明を頂けますかしら?話はそれからにしましょう?」

私はソーラス王国の貴賓応接室で堂々と微笑むことになったのですわ!

「正直に申し上げまして、あなた達、滑稽極まりなくってよ。こちらを舐め腐った態度を取っておいて、いざ必要になったら掌返しですの?将来を見据えて関係を築こうともしなかった癖に、こちらの助けを得られると思ってらっしゃるのかしら?」

私の言葉にソーラス国王は目ン玉ひん剥いてますし、大臣だかなんだかは『あわわわわわ』ってなってますわ。けどこっちは誰一人として狼狽えてなくってよ。当然ですわねえ、こっちに控えてるのはリタルとキーブ、そしてドランですもの。

……ええ。1人ガタイのいいのを混ぜておくことによって威圧感を存分に出すって作戦でしてよ!ドランが混ざっていると、リタルとキーブも『ヤバい奴と一緒に居て全く動じていない奴ら』になりますから、ヤバさが上がるのですわ!

「そ、それは……」

「言い訳したければそれは結構ですわ。惨めたらしく言い訳して頂いても、それはそれで楽しめますもの。けれど、私が求めているものが何かくらいは流石にお分かりいただけますでしょ?」

そう。今、ソーラス王国が私達に対してできることはただ1つ!舐め腐った態度取ったことについての謝罪と、その補填!それだけなのですわ!

「……食料価格は、こちらも食料が然程豊作ではなかった故の仕方ない値上げであった。そして関税についても、我が国の産業を守るための、致し方ない措置であって……」

「あら、言い訳してくださるの?でも大して面白くありませんわね。これが続くようでしたら、制限時間はあと30秒とさせていただきますわ」

言い訳も、面白いやつなら許容しますし、喜んだかもしれませんけれど。つまらない言い訳でしたら結構ですわ。私、面白いかどうかについては厳しくってよ!

「……その、決して、フォルテシア王国を軽んじたわけでは」

「軽んじてましたわよねえ、間違いなく」

そして謝罪も碌すっぽ出てこないようですわねえ。まあ、国王たるもの簡単に他国へ頭を下げるわけにはいかない、ということなのでしょうけれど……そんなん知ったこっちゃーありませんわッ!

「そちらの使者の方は土下座してくださいましたけれど、あなたは何をしてくださいますの?」

圧を、掛けますわよ。もう二度と私達を軽んじることの無いように!シッカリキッチリ、見せしめも兼ねて圧を掛けますわよ!

結局、国王は土下座しませんでしたわ。まあ、国王ですものね。しょーがなくってよ……。

でも謝罪の言葉は引き出せましたし、その上でこちらに有利な貿易の条件を呑ませましたからまあ許しますわ。

そして私達フォルテシア王国は食料を定価で手に入れ、その代わり、相手には銀の武器を定価ちょい乗せで売ってやることにしましたわ。まあ、より切羽詰まってる方が多く金を出すのは当たり前のことですものね。おほほほほ。

そのままソーラス城で泊まっていくよう勧められましたけれど、私達はそれを断りましたわ。毒でも盛られたらたまったもんじゃなくってよ。いえ、私は毒大歓迎ですけど、キーブやリタルが毒に中ったら大変ですものね!

それに……のんびりお泊まりしてる暇なんざ、ありませんの!だってこれから、楽しい楽しい『お楽しみ』の時間ですもの!

「ということでこれからゴーストを狩りますわ」

「……ゴーストを?狩る?どういうこと?」

早速、キーブが混乱し始めましたわねえ。でも、彼はそう言いながらも考え始めていますから、答えにたどり着くのは早い気がしますけれど。

「あの、ヴァイオリア様。ソーラス王国には銀の武器を売りましたよね?なのに、ソーラス王国のゴーストを退治する、のですか……?」

「ええ。そうすりゃ相手は銀の武器を持て余すことになりますもの。つまり、半分は嫌がらせですわ」

私、関税と食料価格を吹っかけてきたことについては取引と謝罪で許してやりましたわ。

けれど、恐らくソーラスが、うちの穀倉地帯に火をかけた張本人ですもの。そっちの方は全く許しておりませんのよ!

「ゴースト退治のために武器を購入したのにゴーストが居なくなったともあれば、ソーラス王国は不要な武器を大量購入した、ということになりますものね」

「ま、嫌がらせとしては特級品だわな。……で、そうなると、需要がガタ落ちなのに供給分だけは余り余ってる、って具合になるわけよ。お分かり?」

私の説明をジョヴァンが引き継いでウインクすれば、キーブは早速、『ああ、そういうこと』みたいな顔になってきましたわ!リタルはまだこういうことの経験が浅いですからよく分かっていないようですし、その後ろでぽけらんとしてるチェスタはそもそも話を聞いていないでしょうけれど!

「ソーラスが大量に武器を購入して、そしてそれが一気に不要になったとなれば、まあ、武器の価格が一気に下落しますでしょ?ソーラスとしては、多少値下げしてでもさっさと売り払いたいと思うはずですわ。ですからそこを、ジョヴァンが格安で買い取りますの。差額分、丸儲けですわ」

「いやはや……全く、俺達の女王陛下はなんて素晴らしいお人なんだか!」

「もっと褒めてくださいまし!」

私とジョヴァンが盛り上がっている横で、リタルは唖然としてましたけれど、キーブはけらけら笑って喜んでくれましたわ!

さあ!そんな『お楽しみ』ですもの!今宵は全力でゴースト狩りに勤しみますわよ!そして寛大なるフォルテシア女王はソーラス王国を救ってやるのですわーッ!おほほほほ!