作品タイトル不明
164 最終日
「――見つけた。シャリー、周辺の探知を頼んだぞ」
「おっけー。今のところ問題なし。けど、わかってるでしょ?」
「ああ」
森を突っ切った後、開けた場所でアレンとシンティアを見つけた。
一組と戦っている。
面白いことに、アレンは盾を持っていた。
対してシンティアの武具はなし。まあ、普段から使っていないので特に必要もないだろう。
残っている組で目立つのはデュークとリリス。
後は二回目の退学が怖くてビビって隠れているはずだ。点数も持っていないだろうし、狙う理由もない。
「どうする? 仕掛ける?」
「いや、まだ様子見だ」
フルーツの件ではらわたが煮えくり返っているが、今は得策じゃない。
シャリーは俺よりも索敵に優れている。
だがそれ以上に、デュークとリリスは気配や魔力を消すことに長けている。
特にリリスは、覚醒してからまったくといっていいほど探知に引っかからない。
突然現れる高速移動と筋肉野郎は、あまりにも厄介すぎる。
アレンとシンティアをすぐに落とすこともできないだろう。
『アル・イリア。一回目の脱落。シンティア・ビオレッタにプレートが移動します』
シャリーに視線を向けてみるが、迷いはなさそうだった。
「一応、このあたりにも罠しかけとくね」
「ああ」
ま、そんなのは当然か。
とはいえ、もしアレンがが退学になる戦いだったら違っただろうが。
彼女は、地面に手を置く。
隠蔽魔法の上達が凄まじく、見破ることはほぼ不可能だろう。
魔力増強のアイテムがないのは悔やまれるが、それでも十分すぎる。
ま、最終決戦を前に 武器(・・) が手に入ったのは良かったが。
「動かず、か」
アレンとシンティアは続いてもう一人倒した後、近くで待機し始めた。
魔力の温存と、アナウンスが流れるのを待っているのだろう。
開けた場所で待つのは、俺たちとデュークたちを警戒しているに違いない。
更にカルタとオリンが敗北している今、遠距離からの攻撃も怖くないだろうからな。
「さてシャリー長期戦だ。漁夫られないように待つぞ」
「ぎょふ? なにそれ?」
「ゲームの基本だろ」
「? ヴァイスって時々よくわからないこというよね」
「かもな」
――――
――
―
最終時間まで二時間くらい、ようやくアナウンスが流れ始めた。
おそらく逃げていた奴らの潰し合いだろう。
退学も数人いるらしい。まったく手加減がない試験だ。
ようやくアレンとシンティアが動きだす。
この場所で戦うより、点数を稼ぎにいくのだろう。
「いくぞシャリー」
「わかった」
距離を保ったまま、後を追う。
空を飛ばれると厄介だったが魔力を温存しているらしい。
俺とシャリーは追跡試験でも優秀なほうだ。見破られることはないだろう。
やがてアレンとシンティアは止まって、そのまま戦いに割り込んだ。
一気に点数を稼ぐつもりだ。
――だが。
「行くぞ」
絶好のチャンスだ。
そのとき後ろに気配がした。
狩るものと狩られるものというクロエの言葉が、頭に響く。
「さようなら、シャリーさん」
どこからともなく現れたリリスが、彼女の首にナイフを刺す。
だがシャリーは――ドロドロの水となって消えた。
「な!?」
「今だ! シャリー!」
シャリーは、空から思い切り魔力砲を放った。
それは、精霊で付与した渾身の一撃。
俺たちは初めからアレンとシンティア狙いではなかった。
デュークとリリスはどこかにいる。そして俺は、既に視られているだろうと断定していた。
二人を侮っていない。気配に消すことに長けている二人だからこそ、敵として 尊敬(リスペクト) していたのだ。
そこで動き出す瞬間を狙ってくると仮定し、シャリーに擬態魔法で人型を作らせた。
絶対にバレないようにする為、夕方までかかったが、その価値があると踏んだ。
だが次の瞬間、デュークが前に出てきて、防御術式を展開した。
だがそれは読んでいた。そして俺には―― 視えている(・・・・・) 。
「――悪いなデューク」
俺は手にレイピアを持っていた。
この武器は耐久力がないものの、速度に優れている。
リリスの心臓を一撃で狙い落とす。
ぐんぐん伸びていく。だがリリスは恐るべき反応速度を見せた。
両掌を心臓の前に出して、俺のレイピアを受け止めるような動作をする。
だがそんな生易しい攻撃ではない。
しかし速度は落ちる。
その僅差で、デュークがリリスの身体をズラした。
――はっ。
リリスは凄い。考える時間の猶予がなかったはずだが、反射レベルで心臓をカバーした。
きっと俺がどこを狙うのか瞬時に理解したのだろう。
普通、人間は回避行動を取ろうとする。だがそれをせず、デュークにすべてを任せた。
魔眼で一秒先を見ていたが、リリスが手のひらを出すところまでだった。
対象をデュークにするべきだったかもしれない。
かなりの連携だ。
二人でしっかりと訓練を重ねてきたんだろう。
とはいえ、防がれた場合の想定もしていないわけじゃない。
「――癒しの加護と破壊の衝動」
「――癒しの加護」
間髪入れずに二人で詠唱し、俺の力が爆発的に向上する。
更に 身体強化(パワーアップ) を限界まで高めた。
もちろんそれだけじゃない。
地面から、シャリーの罠が続けて二人を襲う。
火、水、風、土などの元素で満たされた魔力砲が地面から飛び出し、追尾魔法によって放たれた。
決して強い威力ではない。だが防御しなければ属性でのダメージを負う。
俺の攻撃を避けながらそれは――不可能だ。
「デビビ!」
更に上空に放っていたデビが、闇の波動砲を放った。
逃がさない。絶対に。
この二人の身体能力を、俺は決して侮っていない――。
姿を現した瞬間、お前たちを堕とす。
さらに魔眼をも発動させ、どんな防御すらも俺は突破しようとした。
だが驚いたことに、デュークの動きが全てに対応している。
残像が重なり、未来がいくつも枝分かれした――。
俺はそのまま渾身の速度でデュークにレイピアを振り続ける。
右手、右足、左手、左足。
全てがヒット、大ダメージを与えるも、致命傷だけ防がれる。
「オラァ!!!!!!!」
デュークは倒れなかった。
地面を思い切り拳で殴り、砂埃に魔力を 融合(ブレンド) させて姿を消す。
姿が見えなければ俺の魔眼は発動しない。
それをわかって? いや、そんなわけがない。
おそらく、本能だ。
そしてその砂の隙間から拳が出てくる。
俺は両腕を差し出し受け止めるも、とてつもない威力で身体がずれる。
そのまま押し込まれるが、あまりの強さに自ら後方へ飛ぶ。
そのまま40メートルほど飛ばされ、シャリーが近寄って付与で動きを止めてくれた。
俺は前を見つめ、デュークとリリスを見る。
少なくとも二人はかなりのダメージを負った。しかし変だ。
間違いなく落ちていたはず。
魔力が漏出しているのがわかる。だが、倒れない。
「――ヴァイス、今回俺は、お前に勝つ」
その目は、その声は、いつものデュークとは違う。
俺の知らない奴が、そこにいた。
その瞬間、アレンが、シンティアが横から現れた。
飛び出し、デュークとリリスを狙う。だが――返り討ちにあたったのはなんと、アレンとシンティアだった。
大きく吹き飛ばされていく。
――一体こいつら、どんな訓練をした?
――おもしろい、おもしろい、おもしろいぞ。
「シャリー、最終戦だ。――後は全力で行くぞ」
「わかった」
相手にとって不足はない。
お前らを叩き潰し、俺は今回も一位を獲る。