作品タイトル不明
161 正念場
「シャリー、そっちへ行ったぞ!」
「―― 魔法津波(ビックウェーブ) 」
翌朝、早速行動を始めた俺たちは砂浜の近くで、二組、つまり四人相手に戦っていた。
アナウンスが流れることで、今現在誰が一番多くのプレートを持っているのか、それが筒抜けだ。
そうなると自然に共同戦線が張られる。
だが標的だった場合はそれが突然に崩れたりもする。
刻一刻と変わる戦況に対応することが、この試験で最も大事なことだ。
更に武器に関しては、俺は短剣で、シャリーは何も持っていない。
戦っている奴らには既に弓やロングソード、魔法の杖を持っている。
おそらくだが、探知魔法に長けているやつが多いのだろう。
ノブレスは原作がゲームである以上、主人公側は戦闘能力に長けている奴が多い。
それに被らないようにか、他の学生はサポート面に特化している。
仕方がないが、武器はそのまま戦闘力に繋がる。
普段はないことだが、これも戦場ではありえることだ。
といっても下に見ているわけじゃないし、戦闘力が劣っているとも思っていない。
今ここにいる連中も研鑽を積んでいる。
全力で戦うのが筋だよなァ!
「――癒しの加護と破壊の衝動」
砂浜に魔法陣が広がっていく。
だがそれだけじゃない。
「――防御術式結界」
シャリーが、それに合わせて壁を作った。
本来これは、敵から身を守るものだ。
だがそれをあえて逆に。
ここから逃げ出さないようにするためだ。
「クッ、 魔法防御(マジックシールド) 」
「 火防御(ファイアシールド) 」
二人の学生が防御を展開しながら、武器を構えた。
手には弓とロングソード。二人ともバランスが良く、俺でも攻撃を避けるのに苦労した。
特に弓の使い手は、元々得意なのだろう。かなりの速度だった。
しかしおもしろいのは――ここからだ。
「 闇(シャドウ) ―― 煙幕(スモーク) 」
シャリーが後ろ手に触れながら魔法を詠唱。周囲が見えなくなっていく。
彼女の精霊魔法は相手に付与ができるが、その逆も可能だ。
俺に触れていることで闇が使える。
さらに俺の力も上乗せしている。魔力感知ができなくなり、場所もわからない。
だが俺は違う。
観察眼(ダークアイ) を発動させる。
魔法陣で位置がわかる上に、姿も視認できる。
誰がどこにいるかわからないこの場面において、武器の優劣なんて関係ない。
「な、何も見えないぞ!?」
「構えろ! ヴァイスが来るぞ!」
「――もう遅い」
――――
――
―
煙が晴れた後に残りの二人も倒し、同時に俺の名札にプレートが移動した。
これで点数は16点、まずまずだ。
だが一度負ければ全てを失う。更に俺のアナウンスが流れているので狙われやすくもなる。
最後まで油断は許されない。
「これもダメか」
地面に落ちていた弓を拾ってみたが砕け散る。
一度認証されるとその他以外は使えないようになっているらしい。
よく考えられた 魔法(システム) だ。
「ヴァイスにばっかり矛先がいくね」
「片方だけに集まるのは面倒だな」
ネームプレートでのポイントが公平に分けられない以上、どうしても偏りが出る。
そうなるとシャリーより俺が狙われ、分断魔法が多くなっていく。
そのとき、デュークとシャリーのアナウンスが聞こえた。
同時に3組、つまり6人も倒している。
今朝もアナウンスが流れていた。標的がいなければ16点で同数だが、暫定一位だと思った方がいいだろう。
「次だ。急ぐぞシャリー」
「わかった。あ! まって!」
「なんだ――」
彼女が向いていた方向に視線を向けると海から樽が流れていた。
目に魔力を凝らすと、ノブレス文字でフルーツと書かれていた。
俺はウッキイと駆け寄り、足が水浸しになるのも顧みず走った。
「ヴァ、ヴァイス!?」
急いで開けてみると「食い意地をはるな」と書かれた札だけが中から出てきた。
これ、絶対ミルク先生だろ。
「……次、いこっか」
シャリーが俺の肩を叩いて慰めてくれた言葉は、俺の中で一番染みた。
◇
南付近で、デュークが戦っていた。
リリスに後衛を任せ、1人で前に出る。
「火の魔法、エンドレスワルツ!」
らせん状の炎を放たれるも、頭を振りながらダッキングして回避する。
魔法抵抗、防御に優れているデュークだが、当たればただではすまない威力の魔法だった。
しかしデュークはおそれることなく最短距離で近づいていく。
そのままたどり着くと、問答無用で脇腹に一撃をお見舞いした。
「があぁぁあっああ」
訓練服の上から、あばらが折れた音が響く。
「悪いな。ま、でもココ先生に治してもらってくれ」
『ワアリア一回目の脱落。デューク・ビリリアンにプレートが移動します』
『ロシアリア一回目の脱落。デューク・ビリリアンにプレートが移動します』
「ふう。これで16点か。まさか標的のオリンとカルタが、ヴァイスたちにやられるとはな」
「ですね。予定通り、どこかで戦うことになりますね」
「ああ、でもリリスもし――」
「デュークさん、私は手加減なんてしませんよ。シンティアさんにも、そうだったでしょう?」
「……だな。すまねえ」
デュークが頬をかいて、リリスは満面の笑みで答えた。
そのとき、空から強い魔力を感じた。
二人は顔を見合わせた後、同じ位置に移動し、空に手を向ける。
防御術式を重ね合わせると、そこに魔力砲が放たれた。
「――くっ」
「これは――カルタさん!」
かろうじて受け止めるも、間髪入れず素早い動きで魔狼が四体、前後左右から飛び掛かる。
リリスが手に持った石に魔力を漲らせ、デュークが身構えたとき、魔狼が真っ二つに斬れた。
それが、デュークに襲いかかる。
「ハッ、おもしれぇ! リリス!」
「はい!」
二人はしゃがみ込む。
そのナニカは、後ろの魔狼にぶち当たり、真っ二つにして消えていく。
残った二体の魔狼をデュークとリリスは一撃で倒す。
しかしふたたび空から魔力を感じ、二人は顔を見合わせた。
「 二組(・・) 同時だ。――リリス、俺たちのやり方でいこう」
「はい!」
空にはカルタ、森にはオリン。
そして木の裏にはトゥーラとセシルが狙いを定めていた。