軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

158 信念

ヴァイスとシャリーが、アレンたちの脱落アナウンスを聞く一時間前。

リリスとデュークを見つけたアレンとシンティアは、静かに魔力を漲らせた。

氷剣(グラキエース) の使用は可能だが、初日から使うにはリスクと高い判断し、抑えている。

アレンは、まだ武器を持っていなかった。

二人の選択は、意識外からの威力の高い魔法砲だった。

「――リリス、よけろ!」

「!?」

それに気づいたデュークが叫び、リリスと共に飛び上がって回避する。

しかしアレンは追尾魔法を付与していた。

空高く飛んだデュークの下から、ぐんぐんと魔力砲が近づいていく。

だが――。

「はっ、こんなんじゃ俺はやれねえぜッ!」

思い切りスタンプ。足に漲らせた魔力で蹴りつけながら、軌道を逸らす。

それを見たアレンとシンティアは続けて攻撃を仕掛けようとするも、既に後ろに陣取っていたのはリリスだった。

即席の尖った石に魔力を漲らせ、急所を狙う。

アレンはかろうじて回避するも、ふたたび前で待ち構えていたのはデュークだった。

「悪いなアレン、伊達に特訓してねえンだわ!」

「――くっ」

デュークは渾身の一撃をアレンに叩きこむ。

かろうじて右腕で防ぐも、メキメキと鈍い音を立てて訓練服の一部がはじけ飛ぶ。

その瞬間、アレンの右腕が動かなくなった。

戦闘訓練服は、想定されたダメージを受けると瞬時に再現される。

つまり、アレンの右腕は本来なら完全に粉砕されたということだった。

「……デューク!」

「悪いなアレン、今回ばかりは、俺が主役にならせてもらうぜ」

そして、その隣では、シンティアが鋭い眼でリリスと対峙していた。

「思えば久しぶりですわね。あなたと戦うのは」

「はい、シンティアさん。――ようやく追いついたところを、見せますよ」

『アレン、シンティア・ビオレッタ魔力漏出により一度目の退出、デューク・ビリリアンにプレー度が移動。一時間後、再転移されます』

魔法鳥のアナウンスが流れた瞬間、俺とシャリーは顔を見合わせた。

「……厄介なことになったね」

「ああ。これで二人のプレートが移動したな」

とはいえ、勝つ為には作戦も必要だ。

まずは与しやすいペアを倒し、最後に俺たちの狙ったプレートを持っているデュークとリリスを倒す。

そのとき――。

「シャリー、しゃがめ!」

「――!?」

壁の外から魔力を感じた。

俺とシャリーは思い切り屈むも、頭スレスレに風が一閃走る。

ぼろぼろの家屋だったとはいえ真っ二つに斬れた家が、ガタガタと崩れ落ちる。

俺は急いでシャリーを掴み、小窓から脱出する。だが何とそこには 不自然な壁(アンナチュラル) が設置されていた。

それも、構築術式が付与されていて、強制的な反動となって空に舞い上がる。

間髪入れず二激目、鋭い風の刃が襲いかかってきた。

俺とシャリーは同時に防御術式を展開した。

「 防御(シールド) 」

「―― 防御(シールド) 」

無事防ぎ、そのまま地面に着地した瞬間、泥となり沈んでいく。

更に三撃目、シャリーは体勢を崩している。

俺は身体を咄嗟に前に出し、 不可侵領域(バリア) で防ぐ。

防御魔力は、その攻撃に応じて消費される。今のでかなりつかわせられた。

この連続攻撃と幾重に張り巡らされた罠を置く頭脳。

そして唯一無二の攻撃力。

姿は見えない。だが、誰だかわかる。

お前たちは一点ずつだ。メリットを考えると、武器がない今、戦うのは得策じゃない。

だが――。

「癒しの加護の破壊の衝動」

魔法陣を展開する。これは抵抗力を奪い、力にするだけではなく、もう一つの能力がある。

それは、隠れていても場所がわかることだ。

岩陰の二つの魔力を見つけた。

―― 一撃必殺(ワンヒットキル) 。

すぐに攻撃を仕掛け、そこに、シャリーが精霊魔力を付与。

純粋な風と精霊により破壊力抜群の攻撃だ。

ぐんぐんと伸びていくと岩が切り裂かれ、そこからあぶりだされたのは、やはりセシルとトゥーラ。

そしてトゥーラは俺の攻撃を受けたのか、右腕が少し破けていた。

だが驚いたことに、彼女は木刀を持っていた。

対して俺はただの木の棒だ。

そのまま剣を鋭く構える。

「ヴァイス殿、すまないな。運が味方をしたみたいだ」

「初戦の相手としては、楽しい二人ね」

「悪いが俺は、弘法筆を選ばずなんだ。お前らにそれをみせてやるよ」

相手にとって不足なし。

出し惜しみはしない。

「そうか。――楽しみだ!」

トゥーラが笑みを浮かべながら駆けてくる。

そして俺は、 観察眼(ダークアイ) を発動させた。更に 閃光(タイムラプス) 。

これが、今までの俺の限界だった。

だが違う。これからは――全く違う。

トゥーラは、上段からあえて横払いに切り替えてきた。

武器の差をわかっているからだ。

受けると俺の武器だけが破壊され、二手目で詰んでしまう。

彼女は剣の天才だ。まともに戦うだけでも難しいだろう。

とはいえ魔法に対しても特化している。

しかし、俺には 視えていた(・・・・・) 。

「――なっ!?」

「悪いな」

トゥーラの攻撃を受けず、俺は一切太刀筋を見ずに身をかがめて回避し、脇腹に一撃を与えた。

彼女は顔を歪めながら血を吐き、そして大きく後ろに下がる。

「な……なんだいまの動き。そしてヴァイス殿……なんだその目は」

「はっ、悪いなトゥーラ。お前が、実験第一号だ」

そして気づく。俺の右目が、黒く光っていることに。