作品タイトル不明
03あなたは一方的に怪我をさせられ、引きずられて奴隷にされるときでも快く相手を許すんだ?
責めてばかりもいられまい。いくら自分でも精霊王だと気づけというのは酷だ。今隣にいる精霊王の補佐をしている、人間の国で言う王配のような立場にいる男でさえも、覚醒するまで気配を察知できなかった。
それなのに小さな妖精らへ責任を問うのは過剰な期待。ここは一つ、寛容さを見せておこう。
「妖精たち、私に顔を見せて?」
呼びかけるとわらわらと愛し子(過去)から速攻離れる。その大移動に姉メーライは唖然と見送るしかない。どうしたのだと将来の旦那様に問われていても、何も答えないだろう。
自分の元から妖精たちが離れてしまった、なーんて。
獣王の側近男のピルスンの回復をする前に離れたので、奴の復帰は灯火の火になった。回復なんてわざわざさせるわけもない。
できないと精々獣人国の人々から責められ、この国からも役立たず扱いを受けてしまうな。果たして、隣にいる王は愛し子を剥奪された姉を側に起き続けるのか実物だ。
「どうした、メーライ」
「が、ガオン様……よ、妖精、たち、が」
なにか言いかけているけれど、こちらは妖精たちが「姫様」「姫様」「母様」と言うので愛でるのに大忙し。
ノンファンが怪我を治癒したばかりなのだから、無理をさせてはいけないぞと優しげな声を出す。叱咤するよりも、甘やかすこちらの意図をすぐに把握してくれたらしい。
叱責してしまうと、自分も同じ立場だとも、考えたに違いなさそうだ。別に怒るなんてしないのに。
彼はブラックドラゴンの因子も持っているので、濃厚な殺意が夜会に参加する元たちをずっと押さえつけている。
皆があまり動かないのは、そういう言葉にできない本能が止まれと言っているのだろう。
「ノンファン、様。わ、私の側近が乱暴なことをして申し訳なかった」
「私が倒れたら、構わんそのまま引きずってでもって聞こえた」
「!」
ガオンは目をあちこちにやる。姉を見てから何かを言い始めた。
「君からも何か言ってくれ。君が妹も自分を長年虐げたと言っただろ?」
声音は優しいけど、責任の所在を姉に擦り付けようとしている?
そんなの許されないけどね。ノンファンはにやりと笑う。逃げ道なんてないんだよ。もうずっと前から。
両親だけ裁けばよかったのに、たかだか服を奪われたから奴隷扱いなんて法律で見ても姉妹同士の喧嘩で済ませたり、すれ違いだ。これはあくまで悪意があってこそ成立するけど。
ノンファンの前の意識には意地悪なんてものはなく、着るものが本当になさすぎて、困った末に数着欲しいと強請っただけ。いや、強請ったというのは言い方が強い。
あれは、そうだなぁ。もしよかったら。誕生日だからプレゼントとしてあの着古した服が欲しいと願っただけ。隣に住む人に。姉妹とか姉とか、家族とか、そんな意識はこの魂の持ち主は考えたこともない。明日はなにか食べられればいいなぁって。
なんで貴族の娘なのに放置されてごはんもあまり食べられなかったのか?
と疑問に思うかもしれないけど、両親が子供のご飯や着るものについて誰かに指示しない人たちだったから。
姉については、誰か知っている人にヤケに似ていたから気になって、色々嫌がらせみたいなつもりで古着を買ったり時代遅れなものを与えたりした。
ノンファンは誰にも似てないので生まれたことすらすっかり忘れていただろう。ご飯を食べる場に呼ばれることもない、執事や侍女に部屋へ運ぶ指示もやったことはない。
「ちょっといい?そこにいる両親に私の年齢を聞いてみて」
顎で指示をすると獣王は戸惑った顔で今も気絶しそうなくらい顔を真っ青にさせている実の親へ、ノンファンの年齢確認をする。
二人は青ざめた顔をくるくる変えて、目線を上にしたり下にして目配せすると、数えるように口を動かす。
その様子にガオンの顔色を変える。もしや、という予感が頭をサアッと過ぎたのだ。
「ま、さか……知らない……の、か?」
古着を大量に買ったのでノンファン向けに服を買った記録はない。一緒に買ったのだろうくらいに思ったはず。サイズもバラバラだし。二人姉妹の片方だけに主に渡されたと調査員は考えたかな。
古くて綺麗でもない飾りはノンファン向けに渡されたとか?
姉は食事の場に毎回呼ばれていて、妹の姿が見えないことに僅かでも違和感を持てばいいのに。
あの人、妹の部屋に来たこともないから部屋の中を見たことがないだろうし。
「い、いえっ、は、八歳……九歳か?」
両親がこちらの姿を見て当てずっぽうをする。見た目でそういうことを言い出すのはわかってた。引っかかったなと笑う。
「十二歳です」
十二歳。言った途端に貴族たちの声にならない悲鳴が聞こえた。
「えっ」
姉の声も聞こえる。姉も年齢を知らなかったのか。ガオンは実物の幻の妹を見たことがないので、年齢について深く考察もしなかったのかな?
賢いと有名なのに、杜撰。それとも、美容に取り憑かれているから痩せていてもおかしくないと、勝手に脳内が判断したのか?
もう、ことは全て終わってしまっていて後悔なんて無意味だけど。
「どう?十二歳に見える?見えないよね?九歳?バカじゃないの?」
怒りが湧いて両親へ魔法をかける。受ける苦痛を三倍にするものだ。これから待ち受ける罰の感じ方が変わるだろう。なにをされたか誰も知らないまま、夜会は進む。
「すま、なかった。ノンファン様」
さっきからなぜか謝るけれど、彼はまだ自分の立場を理解しきれてないらしい。
「獣王ガオン。あなたは一方的に怪我をさせられ、引きずられて奴隷にされるときでも快く相手を許すんだ?」
目を鋭くさせたノンファンが口元を歪めている。