軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01虐げられてきたのは姉だけではない。え、私も断罪対象?着る服にも困る私をですか?

「私の番を長年虐げてきたのは、調べにより全て知っている」

「なっ、なにを!?」

大きくて、凛々しい体を怒らせてこちらへ淡々と告げる雄々しい男の声。

それに反論するのは、ノンファンの父親。

凛々しい男には寵姫のように腰を支えられて、囲い込まれるようにして守られている実姉。

彼女は華奢な体を大切そうに腕にホールドされている。それを見る実妹であり、断罪されている男の娘の一人がノンファン。

今のうちに食べないと、次にいつ食べられるかわからないからとテーブルにある食べ物を食べていたら、いつの間にか、こんなことになっていた。

でも、そんなことすらどうでもよかったのは、空腹だったせい。食べている間にも、番の獣王に見そめられた姉について言及する番の獣人。

「お前もだ、ノンファン嬢。姉の服を取っていくらしいな」

父、母、を順々に説き伏せたら今度はこちらになにかを言い出した。取っていく、というやり方に身に覚えはない。

姉のお古をもらわないと下の妹のこちらには着るものはないから。貰うしか方法はないから、欲しいと頼んだ。

父達にそんなことを言っても買ってもらえないから、あるところから貰うのは当たり前だ。

姉はなぜか、よく父達に構われるから着るものは定期的に寄越される。ダメだ、頭がぼーっとして彼らがなにを言っているかわからない。

「ピルスン、ラチが空かない、連れてこい」

「はっ」

獣王が側近に言うとノンファンはその男に腕を掴まれた。しかし、日常的な不摂生により急な動きに対応できず引っ張られた途端、転倒。

ーーガシャン!

持っていた皿も床に落ちてノンファンは、両腕を使えなかったので頭を打つ。

「構わない、そのまま引きずってでも!」

獣人の王が言うが側近は腕の細さに違和感を覚え、おまけに意識を失っていることに気付く。

「あっ、王よ、血が、頭からっ」

どくどくと打ちつけた頭から流れる血が、大理石に広がる。

「……早く連れてこい」

ガオンの冷めた声音が部屋に響く。

「……承知しました」

番を傷つけた女に今更配慮するつもりはないと、見せつけるために側近に指示したが不安げな顔を浮かべる妹の姉が 強張(こわば) った顔になる。

「ガオン様……治療を」

「気にしなくていい。お前を虐げてきた妹など百害あって一理もない」

「しかし、あの子は妹なのです。私が妖精達に頼みますから」

「むぅ、お前が妖精に好かれる愛し子と発表する気も教える気も、予定にすらない」

「ですが、このままでは死んでしまいます」

妖精に好かれるという体質の愛し子と知る獣王は、断腸の想いで番の女、メーライの手を取り口づける。

「優しいな、おれの番は」

許しの言葉と受け取った長姉は妖精達に声を掛ける。

「お願い、皆、あの子を治してあげて」

『うん。わかった』

妖精達は血まみれで倒れたノンファンのところへ行く。そして、魔法で緑色に包まれる体。妖精の治癒という奇跡に、叫びで満たされていた会場は凄い光景に感嘆して周りはホゥと息を吐く。

「忘れるな、この国はおれの番を傷つけたのだ」

水を指す言葉に会場の貴族達は原因となった、貴族の家の者達に敵意の視線を向ける。

「獣王殿!メーライ嬢は妖精の愛し子というのだな?」

興奮したこの国の王は確認を取る。舌を打ちそうな男は渋々、そうだと認めた。

「で、おれの番を虐げたもののことについてだが」

「ええ、ええ、当然ながら、処刑も視野に」

揉み手をし始める王に、蔑んだ瞳を向ける獣の王。

「勝手にされては困る。長年苦しませてきたのだ。こちらに引き渡してもらう」

妖精が処置したので血は止まったが、血がなくなったので顔色は悪い。閉じられた瞼が痛々しい。だが、それを心配するものはこの会場にいない。

実の両親でさえ。いや、事実露見をされなくないからと両親は亡くなればいいのに、と思っていたかもしれない。

助かったことに腹立たしかったかもしれないが、誰も気付くことなくまた、ずりずりと引き摺られていく。側近があまりの軽さに首を内心傾げたが、調査でノンファンの所在はグレー。

主人の番を虐げていたことは番本人からも聞いていたので、そのまま連れて行こうとした。しかし、それは叶わない。

「ぐぎゃあああ!!?」

側近の断末魔のような声音が会場を包む。一点を見ると男の腕が血まみれだ。傍に見慣れない男が居て冷たい眼で、男を見る。

ノンファンを大切そうに抱きしめ、髪に顔を埋めた。

「こんなところに居たなんて……遅くなって悪い」

ひたすら謝る美麗な男の登場に令嬢たちは、頬を桃色に染める。赤く染まる髪も気にせずギュッとしている男に、側近の怪我を知る獣王はグワっと叫ぶ。

「我が国の貴族に手を出してただでは済まないぞ!」

吠えた。ところが、男が顔を上げた時の殺意に、喉が締め付けられるように苦しくなる。

「なっ、くっ」

獣王はこの国でも名の知られた武人。場数も踏んでいるという実績もある。

それなのに、少し殺意を向けられて、それに本能が恐怖を感じるなど、ありえないこと。

「主、おれの唯一無二を殺そうと……これはもう、殺したも同然の行い」

妖精の愛し子たる姉のメーライが、慌てて妖精達に願いを叶えて貰おうと叫ぶ。

「妖精さんたち、私たちを守って」

嫌な予感がしたので、守って貰おうとしただけなのだ。それなのに。

「え……え……な、んで」

妖精たちが微動だにしない。

「どうした」

獣王が番に問いかけて、妖精たちが動かないことを教えたが事態が好転したわけではない。

「その妖精は平民のようなものだ。俺たちのような高位妖精からしたら、一振りで終わる。逆らうわけがないだろう」

獣王、獣人族の男はハッとなる。

「ま、さか……妹は……妖精の愛し子なのか?」

推理をし始める男に、側近を片付けた男がニヤッと笑う。

「愛し子なんて、所詮はファンの追っかけ程度の愛着。同等にするな」

バカにした声音が空間に響く。女優にのぼせた程度の好意。妖精の可能性が高い男に、周りは喉をゴクリとする。じわじわとやらかしてしまった、というミスがいくつも浮かぶ。

「まさか、そんなつもりは、なかった」

獣王は呆気なくやられた側近を見て、相手の力が格上なことを漸く咀嚼し始める。今更なのだと、暫定、妖精は鼻で笑う。

「ありとあらゆるものを司る主人を、森羅万象そのものを殺したお前らをおれは許さない。おれが許さなくとも、もう色々やらかしているから他の奴らも動くだろう」

男は恨むような鋭い瞳で周りを見回す。それに人間達は瞳をそぅ、と逸らしていく。