作品タイトル不明
ベヒモス
ベヒモスの脅威はその巨体にある。
でかくて硬い、それ以上でもそれ以下でもない。
要するに厄介な攻撃は一切してこないけど、歩くだけでも災害として成立するという事だ。
だからやる事は。
「出鼻をくじく!」
ワームホールから出現しつつあるベヒモス、その取り巻きであるワイバーンをクリスに押し付けて一直線にその首を狙い飛びかかった。
まだ実体化まで時間はあるとはいえ、余裕はない。
如何せんツクヨミ改の装備はスタンダードなバックパックを選んでいるからだ。
対大型用の物ならもうちょい余裕を持って動けたが、基本装備のビームサーベルとビームライフルだけ。
あとは推力の強化のみとなれば厳しい。
かといって近接装備のクリスから獲物を借りるわけにもいかないのだから、こりゃのこぎり式で行くしかないだろ。
何度も同じ場所を切って、死ぬまで切る!
「っかってぇ!」
切り付けた印象はマジで硬いの一言、それこそクルミを包丁で切りつけたような気分だ。
当たり所が良ければ傷はつけられるが、鱗と甲殻がそれぞれ攻撃を受け流すような流線形になっている。
まっすぐ刃を立てる事も難しい。
その上で傷をつけたけど、そもそもの強度が馬鹿みたいだ。
『ちょっと! 美味しいとこどりしてないで手伝いなさいよ!』
クリスの悲鳴交じりな通信が飛んでくる。
「そうしたいのはやまやまなんだがな……野郎、こっちを見てねえ。ここで注意引いておかねえと完全に実体化した時お偉方を狙うぞ」
『えっ!?』
「良平、クリスと引き続きワイバーンを狩り続けてくれ。余裕ができたらベヒモスの眼球をぶち抜いてくれると助かる」
『やるだけやってみるけど……ちょっと厳しい、かなっ』
既に100近いワイバーンが地面に転がっている。
その間も俺はベヒモスの首を切り続けたが、ようやく鱗が少しはがれ始めた程度だ。
相手からしたらささくれ程にも感じていないだろう。
さすが中型……いや、やっぱこのサイズを中型扱いはバグだろ。
そう思っていた所でアラートが鳴った。
『お兄ちゃん! おやっさんが専用バックパックでこっちに向かってるって!』
「はぁ!? 無茶しやがるな!」
俺用にチューンされた機体、バックパックそのものを学園に置いてきていたのだが実用段階にあった最高級品。
一方で俺以外が使うと自滅必須と太鼓判を押された機体をおやっさんが飛ばしてくれた。
相当な無茶ではあるが、バックパック単体での飛行が可能なツクヨミ改ならではの方法だな。
移動は長く見積もっても5分、電車だと2時間くらいかかる距離もあのバックパックなら人が潰れないレベルに抑えてもその程度で辿り着けるだろう。
となると、問題はもうすぐにでも顕現しそうなベヒモスの注意を如何に引くかだな……。