軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狂気です

「おやっさん、ぶっちゃけた話をしよう」

殴り合いの後、メカニックの皆さんに囲まれながら俺とおやっさんは向かい合って席につき、そして語り合っていた。

「ツクヨミ改はほとんど完成と言っていい。上に見せた後ジャイロとバランサーを外せば完成だ。だが決定的な問題がある」

「言ってみろ」

「本来自立が当たり前、動く際もバランスは勝手に取ってくれるギアだがその手の装置を外すとコックピット内での微調整が多くなる。加えてできる事も増える、普通ならできないような姿勢からの蹴りや拳法みたいな動き、投げ技なんかもだ。インプットさせるまでもなくできる」

「ふむ、その際の強度試験か?」

「いや、圧倒的に操作盤のスイッチやらが足りてねえ」

複数のスイッチを連動させることが必要になってくるギアだが、既存の物より操作系統が複雑になる事が予見されているツクヨミ改の操作盤は狭すぎた。

ついでに計器の方も強化をいれたいところだが、コストの面で今はお預けである。

と言っても結構いいの使ってるから困らないけどさ。

「なるほど、ならばどうする」

「まず操縦桿のレバーについている射撃用のスイッチあるだろ。あそこ増やす。そうだな……片手デバイスみたいに5つ以上のスイッチをつけたい。ゲーミングマウスとかみたいな付け方でもいい。とにかく数を増やして機体のシステムを弄る」

「ふむ、その程度なら学生でもできるだろうな。エース共も似たような事はしているだろう」

「それとペダルだ。ブースターとスラスターで使っている以外にも三つくらいほしい所だ。合わせて言うならいざという時その場でコードの書き換えとかできるようにキーボードを繋いでおきたい。できるか」

「可能だ。極論を言えばそのキーボードで操作をできるようにすることも可能だが」

「それは流石に俺の脳が処理落ちする」

戦闘用のコード一つ一つ手入力でとかなったら流石に死ぬわ。

間に合わないだけじゃなく指が追い付かない。

例えるなら……ゲームキャラを動かすためのシステムをボタン割り振りしている所に、1から前へ一歩とコードを書き続けて動かすようなものだ。

入力に対して既存の物から出力というのはとても優れた技術と言える。

「最悪の場合キーボードにもボタン割り振りはするとしてもそれだけだな。で、ここからは思い付きなんだが言ってもいいか? 多分メカニックの皆さんの仕事量が爆発的に増えるけど」

「言ってみろ、いや……言わねえと殴る」

おやっさんがホルスターからスパナを取り出す。

……それ、殴る専用か?

「手足頭部の関節をバックパックと同じ形式にして付け替えできるようにできねえかな」

「そのこころは」

「換装という形式にすることで整備性を上げつつ、いざという時はコックピット周りの胴体さえ無事なら即座に戦線復帰できる」

「……なるほど、あらかじめ手足と頭部を用意しておくことで付け外しだけでメンテナンスができるわけだ」

「それだけじゃない、パワーローダーとか使って近接戦に適したハイパワーの腕部とか、精密射撃向きのブレが少ない分パワーは控えめなのとか、あとは走るのに向いてる飛ぶのに向いてるみたいな脚部。センサー性能抜群だけどカメラが微妙とかその逆とかも用意できるとなれば機体のカスタム幅も広がるんじゃねえかなって」

「………………なら胴回りもいらないな。バックパックをコックピットとしてそのまま流用できるようにしてしまえばいい。普段は胴体に見えているがバックパックこそが本体、胴体に接合する形で変形させて機体が致命傷を受けたらバックパックだけで離脱。そうなれば胴体も作り込む必要がない。いや、何なら胴体部分をバックパックの変形で作ってしまうのもありだ」

「そこまで行くとバックパックの値段跳ねあがらねえ?」

「上がる。だがそれでも長期的なコストとしてみれば安上がりでパイロットの人命も助けやすくなる」

「例えば」

「パイロットが出撃している最中手持ち無沙汰になる整備士の仕事が増える。壊れたパーツの修繕だけじゃねえ、予備の腕や脚のメンテナンスに交換した部位の修繕。やる事は増えるが生存率は上がる。特にインベーダー相手となりゃ修理の時間短縮は欠かせねえ。対人となった時もそれは同じだが、生きている限り体力が切れなければ戦い続けられるギア、そんなの軍の理想形だろ」

言うは易しというが、俺の適当なアイデアがそれを可能にするかもしれないという事になってきた。

……ぶっちゃけちょっと怖い。

「図面を引く、接合やその後の動きに関するシステムを組めるか」

「やれと言われたらやるが……どうするんだ?」

「再来月、新型機のコンペが行われる。そこにツクヨミ改と並べてその新型を出す」

「……正気か?」

「当然だ! こんな面白そうなアイデア聞いて黙ってられる機械屋がいるか! そうだろてめえら!」

どっと、周囲のメカニックの皆さんが歓声を上げた。

各々メモ用紙を出して何かを書きなぐっている。

アイデア帳みたいなものだろうか。

……変な所に熱を放り込んでしまったかもしれん。

一方でメカニック科の学生たちも鼻息荒く新型機の可能性について語り合っている。

パイロット科も集まっての騒動だ。

「よし、わかった。そこまで言うなら俺はシステム周りを弄る。パイロット科の連中はクラス関係なくテスト手伝ってもらうからな。というかまずバックパックのシミュレーター用意するからそっちの練習が先か。おやっさん、軍にシミュレーターマシンの追加とか頼める?」

「任せろ、こちとらそれなりの階級だからな」

「……今更だけど、おやっさんって結構偉い?」

「技術士官で中佐だ、そこそこの無茶は通せるぞ」

想像より偉かった……いや、普段の口調とかから軍曹とかイメージしてたけどもっと、マジでもっと上だったわ。