軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シミュレーション

「ドッキング時の衝撃緩和のための逆噴射とギアへのダメージ緩和のための機構をリンクさせつつ飛行形態への移行時のダメージ緩和のために軌道のリンクもさせてスラスターとブースターを活用しての姿勢制御から安定した挙動への移行と最高速度の推力バランスにリミッターも付けて武装展開中の推力低下問題に対してのアプローチが右腕のドッキングバランサーに傷害が発生するから左腕のデータと照合して……」

「やってるね、佳境にはまだ遠いみたいだけど」

「良平か……」

「差し入れ、クリスが面白い物が見られるって言ってたけど……なるほど、これは面白いね」

「そうか、そこの棚にギアとバックパックの設計図、それから試験的に作ったシミュレーターと戦況観測シミュレーター、実地パイロット用シミュレーターが何種類か入ってるから好きに持って行っていいぞ」

「いいのかい? 軍事機密なんじゃ」

「俺が軍に売ってるって形になってる。設計図は何度も書き直した奴の初期版だから価値はないに等しいが、バックパックはそのままでも使えるから十分だろ」

実際ギアの方は何度書き直したかわからん。

ツクヨミという機体は高性能だが、その分弱点が浮き彫りになっているとも言えた。

まず純粋に火力不足が目立つ。

旧来の機体と比べても遜色ない火力と言えば聞こえはいいが、進歩していないのだ。

また俺がぶっ壊したように機体そのものの強度が低すぎた。

おかげで初期のすらりとしたフォルムから、今はがっちりとしたギアになっている。

これでもクリスの乗っている近接機に近いスタイルなのだから、弾幕を潜り抜けてという前提の硬さにはなっているのだ。

最後に推力だが、実はここだけ問題が残っている。

従来の倍の推力をうたっていたが、俺達の再設計とバックパックの追加で5倍にも達した。

だが問題としてパイロットが耐えられないという一点、ここが変わっていないのだ。

初期ツクヨミですらまともな操縦が不可能になるほどの速度と言われていたのに、今度は並のパイロットだと失神する。

まさに棺桶だ。

「ほほー、これ面白いね……けどその分値段が高い……いや、これだけの性能と利便性、それに数さえ揃えてしまえば整備性も上がるならむしろ安く済んでいる……シミュレーターはバックパックでのドッキング用と、以前言ってた指令通りじゃないミッションだったり不意打ち当たり前だったりの高難易度のだね。どのくらい使えると思う」

「クリスや良平でもクリアは困難、准将なら無傷でクリアできると思うけどかなりいやらしい設定にした。色々な意味でな」

「それは楽しみだ。早速公開しても?」

「かまわないが……注意事項だけ。この程度クリアできない奴は戦場で速攻死ぬ」

「……肝に銘じておくよ」

俺が作ったシミュレーションはそこまで難易度は高くない。

ただちょいちょい面倒なポイントや、上からの指示と違う事態、敵増援が嫌なタイミングで来るとか、存在を確認されてなかった伏兵が出てくるだけだ。

あとクリアしたと思ったら別の敵が出てくるとか、再起動するとかそういうの。

基本的に「絶対じゃないけど結構な割合で発生する状況」を落とし込んだ内容である。

ちなみに一本だけ俺でも無傷はきついレベルの超高難易度をぶち込んでおいた。

ストレス発散にいいんだよな……。

一応全部何回かトライして、ランダム性も組み込んで毎回違う内容になるようにも調節したので問題はないはず。

超高難易度も俺はクリアしたが、無傷クリアは最後の一回だけだった。

それまではどこかしらに被弾してたからな。

コックピットやブースターは避けた物の、足が動かなくて囲まれてタコ殴りにされそうになったりしたのは焦った。

意外と足回りも重要だよな、戦闘継続を考えるなら腕も残したいが最悪変形してヒットアンドアウェイで削り切るという方法もあるわけだし。

脚が壊れると足裏のブースターも吹っ飛ぶから機動力がガタ落ちするのが痛かった。

俺自身学びのある内容だったので文句なしだ。

ちなみにスコアも表示されるようになっていて、ランキング形式にもなっている。

今は俺しかプレイしてないから俺の名前とスコアだけ並んでいるな。

「じゃあこれ、学園側に協力体制求めてもいいかな」

「好きにしてくれ」

「軍はどうなってる?」

「今はオンラインでこのシミュレーションを無料公開して、高成績者を学校にスカウト中。つっても一般のクリアはまだ出てないし、軍内部でも実戦を何度か経験した人たちじゃないとクリアまではなかなかいけないみたいだ」

新兵とかがやらされて、想定外の事態に慌ててる間に撃墜されるのがお決まりだとかなんとか。

漫画とかだと初見クリアするチートみたいな戦闘力と状況判断能力持ちが出てくるパターンだが、残念なことにそんな奴はいないようだ。

ただ、将来的な事を考えると強い奴が出てくる可能性もあって俺も楽しみにしている。

家庭用ゲーム機やゲーセンで実際に体験できる疑似ゲームとしても売り出す方針で、軍の懐は温かいらしい。

……まぁ、誰かが損をするわけでもないからいいだろ。