作品タイトル不明
墜落した剣
「柴田と呼んでくれ、この学校に配属された軍属メカニックと言った所だ」
降下部隊の中で最初に名乗り出てきたのはいかにもといった感じのおっちゃんだった。
こう、スパナが似合うタイプのおっさん。
「雨傘です」
「かたいなぁ、もっと砕けていいぞ」
「じゃあよろしゃす、おやっさん」
「おう、それでいい」
周囲から「いいのかなあ」とか「軍人さん相手に……」という声が聞こえるが、向こうがそう言っているのだからいいのだ。
言うなればこれは上官命令で砕けて放せと言っているようなものだからな。
というか真田准将からしてフレンドリーだったし。
「で、荷物だが……聞いて驚け、お前さん専用機だ!」
「俺の?」
「うむ、借りていた機体を解析したが既存の機体じゃお前さんのスペックをフルに生かせん。ついでに機体そのものの回線だのなんだのが諸々死んでて直すよりも新造した方が早くて安かったというのもある」
「けど軍が専用機をただでよこすわけないですよね。おやっさんみたいなメカニック付きで」
「そりゃお前、唾つけよ。将来有望なパイロット候補にうちの軍の参加と周辺諸国に見せつけるのさ」
「ああ……なるほど」
今各国との連携で地球は一つの軍隊という形式をとっているが、それはあくまでもスタンダードを決めたというだけである。
インベーダーという未知の敵に対して一致団結しているだけで、実の所「うちの方が軍事力有りまーす」というマウント合戦も行われているのだ。
対インベーダーとしてパワーのある国が強いというのは不文律に近いものがあるので、利権争いもパワーイズジャスティスなのだ。
そういう意味では日本の有する機体はスペックこそ量産向けではないが高性能でエース専用機としての人気が高く、一方でアメリカや中国なんかは量産性に優れた機体を揃えている。
ただまぁ、不良品の数もそれなりに出回って、市場に流されているので粗悪なギアが反社組織に流れる事もそっちのルートだったりするけどな。
日本製はなかなかそういう連中に流れ着かないというか、そもそも数多くのエースが頼み込んで作ってもらっての順番待ちなので流出が少ない。
これらの要因から小国で軍拡しようにも限度がある日本はそれなりの地位を保てているのだ。
なにせ他国のエース御用達機体を抑えているからな。
またこれらの権利から海外から日本の軍に志願、あるいはそこに直通できる学校に通う奴もいる……というかクリスがそれだ。
要するに少数精鋭ができる部隊を持ちつつ、全体の練度も他国を上回れるように訓練するのだ。
あれだな、2000倍です曹長! だったら1人当たり2000人殺せや! という勢いで戦ってるスパルタ兵みたいなの。
「それで、専用機というからには俺の動きについて来られると?」
「もちろんだとも。見るがいい、お前さん専用機。その名もツクヨミだ!」
投下ポッドが開かれ、中から出てきたのはスタイリッシュというか、線の細い機体。
軽量機なのは見ればわかるが、色々削られ過ぎて装甲はあって無いような物。
ただスラスターだのなんだのが結構多いので無茶な挙動はできそうだ。
「ほほう……お、このバーニア最新モデルだ。それにこのライフル、重金属粒子の貫通力が高い奴。それにサーベルも、つばぜり合いできるな」
「いい着眼点だな。うちでも滅多に使わない最高級品だぞ」
「ちょっと乗ってみても?」
「もちろん」
その言葉を聞いてよじ登ってコックピットに入る。
おぉ、これ全方位観測型モニターだ。
頭部に積載されているメインカメラの向きに合わせてコックピットが動いて自動補正してくれる、背後も上下左右も見える奴。
めっちゃ高性能なんだけど、割と雑に扱ってもついてきてくれる凄い奴。
「うふょー! 武装もてんこ盛り! いいねいいね! ゲームじゃ高すぎて使えなかった奴ばっかりだ!」
コンソールから色々調べれば出るわ出るわ、そりゃもう垂涎ものの超高級武器。
おまけに脱出装置も超高級品で、脱出後テントのように展開されて耐衝撃とある程度のダメージは防いでくれるシールド付き。
酸素供給もばっちりで、大気圏内なら常に水を生成してくれる簡易キャンプキット機能もついている。
まぁ使わないんだけど。
「さて、じゃあテストフライトとしゃれこみますか!」
そうして飛んで数秒、ボンッという音と共に左半身が動かなくなった。
そのまま着陸するが……モニターが半分死んでる。
「おやっさん、コックピットからの通信が死んだ。左半分。それとバーニアとスラスターだが脆すぎてダメだわ」
うん、俺の操縦で大ダメージ受けてた。
そりゃまあ雑に使っても耐えてくれるのが軍用品、だけど雑どころかハイパワーでぶん回した結果動かなくなった。
「なにぃ!? 大抵の動きにゃついて来れる設定だぞ! なにしやがった!」
「いや、空中で最大加速の上昇してから変形して即座に解除、進行方向を地面に向けて垂直落下からのギリギリで方向転換してっていう耐G性能確かめようとしたら変形した瞬間ボンってね」
「そんなもん仕様外に決まってんだろ!」
「そうはいうけどさぁ、俺の操縦データで見たでしょ」
「アレを本気にする奴がいるか! というか本当だったのかよ……くそっ、1から練り直しだ! 野郎共! 今日は眠れると思うな!」
その言葉に整備員たちが不平を飲み込んで返事を返す。
「あ、俺も設計に関わっていいか? ちょっと加速のタイミングが遅れてたし、軽量機は好きだがいくら何でも脆すぎる。特に関節部と接合部、装甲は削ってもいいけどそこは妥協できないから」
「当然だ! おら、仕事に取り掛かるぞ! そこの学生共! このポンコツを運ぶの手伝え! 無駄な傷つけたらスパナでぶん殴るからな!」
おやっさんの怒号にギアに乗っていたパイロットたちがわたわたと動き始めた。
……いや、まあたぶん殴られないから大丈夫だよ。