軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第222話 野盗

カナレ城。

今日は定期的に家臣たちを集め、会議を行う日だった。

「そろそろ、新規人材の発掘を再開したいと思うが、問題ないか?」

私は早速そう提案する。

「はい、問題ないかと思います。新しい人材を雇うゆとりはまだありますし。カナレも人口が増え始めたことに比例し、仕事もどんどん増えています。人手は欲しいところでした」

リーツが早速賛同した。

「アタシんとこにも、新しい人材寄越してくんないか? 最近ランベルクも人が増えてきて、面倒が増えてきたんだ」

とミレーユが発言する。

「ミレーユは領地経営的なことは、ある程度人に任せてるんじゃなかったのか?」

「いやいや、それが最近は面倒が増えてアタシも色々やる羽目になってんだよ。だから、何でもぱっぱと片付けてくれる優秀な奴が一人欲しい」

そう言えば最近カナレ城に訪問するペースが減っていた気がするが、そういうことだったのか。

「……まあ、別に何人か派遣する分には問題ないが」

「駄目ですよアルス様。ミレーユは自分が楽したいだけです。ランベルクを任せた以上、ミレーユが色々やるのが当たり前なんですから。今までサボってたのがおかしい。ミレーユが働いたうえで、それでも経営が困難なら話が違いますがね」

完全な正論をリーツは言った。

「こ、このまま仕事が増えたら、きつくなるかもしれないから、その時に備えて新しい人材を……」

「厳しくなったら改めて会議で言ってください」

「そ、そういえばー……やっぱアタシがいても経営厳しいかも、至急人材が欲しいなー」

「苦しい嘘はつかないでください」

見苦しい粘りをするミレーユ。リーツはミレーユの要求を、バッサリと切り捨てる。

「た、頼むよ坊や! このままじゃ酒を気持ちよく飲めないんだよ!」

開き直ったのかミレーユは本音を口にした。

「……ミレーユへ人材を回すのは後回しで」

私がそう宣言すると、ショックを受けたような表情をミレーユは浮かべた。

「むう、こうなったら、今ランベルクにいる奴らを徹底的にしごいてやるしかないか……」

と不穏なことをミレーユは呟いていた。

「ほどほどにしておいてくれよ……それで、ほかに何か報告などはあるか?」

私は話題を変えるためそう言った。

「それでは僕から……」

リーツが報告を始める。

「最近カナレ郡内に、厄介な野盗が侵入してきまして、被害が数件報告されています。早急に対処する必要があります」

「厄介な野盗?」

「はい。元サイツ軍の兵士を中心に構成された野盗たちで、素人の野盗集団とは兵一人一人のレベルが違います。さらに数も多いです。なめてかかると痛い目に遭う可能性が高いので、きちんとした部隊を動かして討伐に当たる必要があるかと」

基本的に野盗が領内で問題を起こした場合は、すぐに部隊を派遣して対処する場合が多い。こういう会議でわざわざ議題にすることはないが、リーツが言い出したということは相当数が多い野盗なのだろう。

数が多いという事は、野盗を率いているリーダーも、只者でない可能性が高そうだ。確かになめてかかるのはまずそうだ。

そんな危険な連中を長い間放置しているわけにはいかない。

一刻も早く退治しなくては。

ミレーユやリーツなどの実力者に、それなりに大勢の兵を率いらせて対処するのが適切だろうな……

いや、待て……

私は会議の場にいた、ブラッハムの姿を確認する。

いつもなら、こういう時は誰よりも早く退治しに行くと名乗るのだが、神妙な顔で私たちの話を聞いていた。

ブラッハムはここ最近真面目に勉強をしたおかげでだいぶ成長した。

だが、まだ物足りない。知略は伸びたが、統率の伸びがいまいちである。やはり統率は知識だけでなく、実戦をこなしていかないと、伸びないのだろう。

今のブラッハムは成長期に入っているような気がするので、積極的に実戦経験を積ませた方が良さそうだ。

精鋭部隊もだいぶ人数が増えてきたので、どのくらいの実力があるか試してみたくもある。

「野盗たちの討伐はブラッハムに任せたいと思うのだが、どうだ?」

「「「え?」」」

私の言葉に家臣たちが驚いてそう言った。

ブラッハム本人も驚いている。

「えーと……アルス様、なぜブラッハムに?」

リーツが戸惑ったような表情でそう尋ねてきた。

「最近、ブラッハムはだいぶ成長したし、厄介な相手とはいえ、勝てるはずだ。精鋭部隊の実力も見てみたいしな」

「しかし……ここは僕かミレーユが部隊を率いた方が……」

「リーツは忙しいだろ? ミレーユも最近は仕事が多いみたいだし」

「そうだ! 余計な仕事を増やされちゃたまったもんじゃないよ!」

自分が討伐を任されそうになり、全力で拒否するミレーユ。

「別に良いんじゃないかい? 坊やが今のブラッハムならやれるって思ってるんでしょ? じゃあ、やれるよ」

「確かにそれはそうですね……」

私の能力に関して信用があるのか、リーツは反論はしなかった。

「ちょっと待ってください! 本当に俺でいいんですか!?」

決まりそうになりブラッハムが慌ててそう言った。

今まで荒っぽい言葉遣いだったが、少しだけ丁寧な口調に変わっている。

「やりたくないのか?」

「いや、そういうわけじゃないんですが……」

迷っているような表情を浮かべるブラッハム。

基本的に自分の力量に自信を持っていた男だっただけに、この反応はおかしい。

やはり、心境に大きな変化があったのだろう。

ブラッハムは数秒無言だったが、その後、覚悟を決めたような表情で、

「分かりました。野盗退治、任せて下さい!」

と宣言した。