軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

揺らがない想い sideデューク

馬車に乗り込み、しばらく無言で眉を寄せながら外を見ていたユリシーズが口を開いた。

できる限りフェリシアの救出に集中すべく、ユリシーズにはセラフィーナ嬢の救出を担当してもらうため同行を許可した。

「どこに向かっているの?」

「現在王都に勤務しているフェリシアの騎士の兄が、話していた建物のうちの一つだ。もう一か所はすでに回ってもらっている」

王都で窃盗事件が起こり、二件目に窃盗が入った宝飾店へと向かっていた。カーティスの先輩騎士の情報から、近々この建物を捜査しようと動いていたところだ。

最悪のケースを想定して念のためにテレンスに話を通すように言っていたが、実際にすぐに動くことになるとは思わずデュークとしては胸中複雑だ。

だが、あらゆる可能性を想定し、少しでも早く安全にフェリシアを助けなければいけない。

「騎士と連携を取っていると話していたけど、確証を得たんだね。さすがだ。今度こそ捕まえられるといい」

「聞いてもいいか? この件について協力的なのはどうしてだ?」

フェリシアがピンクローザを気にする理由の一つに、マッケランとの出来事があり彼女がピンクローザを気にしていたとの推測が起因している。

だが、フェリシアに好意的な行動ではあるが、それだけでなくユリシーズはこの件について情報提供といいやけに協力的だ。

嫉妬と余裕のなさで気がつかなかったが、このような状況になり、思いつめたようなユリシーズの表情を見てふと疑問が湧いた。

「フェリスちゃんが可愛いからではダメ?」

「フェリシアが言っていた。兄に見守られているような気になるときがあると」

しばらく見合っていたが、ユリシーズが降参だとでもいうようにひょいっと肩を竦め、自嘲的な笑みを浮かべた。

「……鋭いね。確かに、最初は亡くなった妹に似ていると思ったかな。それからは無意識のうちに重ねていたかもしれない。事情はわからなくとも一生懸命何かしようとしていたから放っておけなかったし、僕と目的の対象は一緒だったからね」

「……悪い。詮索しすぎた」

いつも軽い態度のユリシーズのとても個人的なものに触れ、デュークは表情を歪めた。

「いいよ。フェリスちゃんをサポートしてあれこれ考えるのは気が紛れたし、代わりに情報ももらっていたから。僕と連携を取ることでデュークたちがぎこちなくなっていたのは知っていたし、僕としても事情を話すべきか迷っていたんだ」

「そうか……。余裕のない対応して悪かった」

ずっと、本当に余裕がなかった。

ベリンダ・マッケランやコーディー・アドコックが、フェリシアにした仕打ち。未熟さから甘えすぎフェリシアを傷つけ、すれ違った日々。

一つ掛け違えていたら、気づかなければ、大事なものを失っていた。

そして、その可能性を示唆するように見せられる夢で蓄積され、失ってしまうことに恐怖を覚えた。

自分の至らなさは自分が一番わかっている。そのため、夢ではフェリシアを何度も死なせてしまった。

助けられたはずなのに。

気づいていればと、夢でも現実でも後悔は尽きない。夢は夢ではなく、己の心の鏡かのように不安を掻き立て、未熟さを何度も突きつける。

――今も、フェリシアが危険な目に遭っているかもしれなくて……。

きゅっと唇を引き結んでいると、ユリシーズが困ったように眉尻を下げながらも言葉を続けた。

「確かにデュークの態度は過保護すぎるとは思ったけれど、それぞれに事情はありそうだったし、他者が割り込むのも違うかなぁと僕も静観していたところがあるから気にしないで」

デュークはふっと息をついた。

確かにそれぞれの事情があり、事件は事件を起こした者が悪いのであって、ここで猛省していてもフェリシアは戻ってこない。

必ず、フェリシアを無事見つける。今度こそ見失わない。

反省も後悔も、フェリシアを無事に見つけてからだ。デュークは気を取り直し、話を続ける。

「ああ。それでユリシーズは何を探りたかったんだ?」

「僕の目的は窃盗団から妹の形見の宝石を取り戻すこと。いろいろあって、大事な宝石を窃盗団に盗まれてしまった。それで後を追っているうちに、次の潜伏先としてこの国が候補に上がったから、この機に探っていた」

「妹さんの形見を。それは取り返さないといけないな」

「ああ。つい先日話題に出て知ったんだが、フェリスちゃんが見た眉尻に傷跡のある男が、僕が追っている人物かもしれないんだよね。なんとしてでも男を捕まえて、宝石の行方を知りたい」

「フェリシアとセラフィーナ嬢を助け出し、宝石も、男も確保しよう」

そのような話をしている間に目的の場所に到着し、馬車を下りるとありふれた外観の建物を前にユリシーズの片眉が上がった。

「本当にここに二人がいる?」

「ああ。怪しい男が出入りしていたのは間違いない。着いて確信した。間違いなくフェリシアはここにいる」

もう一か所の可能性もあったが、絶対ここにフェリシアがいるはずだ。デュークは躊躇いなくドアを叩いた。

「商談しに来たんだが」

「今は取り込み中だ。また今度にしてくれ」

叩いてもしばらく出てこなかったがデュークがそう告げると、ドアが開かれ中から人が出てきた瞬間に、デュークは相手の腹に肘を入れて伸した。

「容赦ないね。これで間違っていたらどうするの?」

「もともと捜査する予定だったから問題ない。それにこれだけ武装していたら今更だ。騒がれる前にフェリシアたちのもとに行こう」

剣呑な気配がすでに物語っていたし、開かれたドアの先には、数人の男たちが臨戦態勢で待ち構えていた。

「確かにここは何かがありそうだね」

護衛といえども、いかにも荒くれ者といった風体の男たちが武器を持っている時点で怪しい。男たちを見たユリシーズや一緒に来た騎士たちは剣の柄に手をかけ、鞘から剣を抜き構えた。

そこからは剣の打ち合いだった。

ユリシーズとは何度も手合わせした。そのおかげで互いの間合いもわかるので、邪魔をせず敵を倒していく。

本来ならば騎士たちが率先していくべきだが、後処理は任せたと鬼気迫る様子で進むデュークに前を任せ、補助に入り、それぞれ縛って外に連れ出し制圧していく。

次から次へと出てくる男たちを、淡々と、それでいて近寄りがたい気迫を発しながら、一発で打ち取るデュークに容赦はない。

華麗に静かに、こんな時でなければ見惚れていたくらい美しい太刀筋で前へと進んでいく。

目の前の障害物がなくなると、デュークはすぐさま二階へと駆け上がった。