軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

過去も今も、これからも2

「ルー、っ……」

一瞬、唇が離れたかと思うと、再びまた塞がれる。

だんだんと深くなっていくそれに、私は戸惑いを隠せなかった。酔っているにしたって、目の前にはレイヴァン様だっているというのに。本当に今日のルークはおかしい。

もちろん嫌ではないけれど、恥ずかしすぎる。必死にルークの肩を押すけれど、びくともしない。

そうして暫くの間彼の思うがままにされ、ようやく解放された私は両手で口元を覆った。視界の端でレイヴァン様が見て見ぬふりをしてくれているのが見え、申し訳なくなる。

蕩けるような笑みを浮かべたルークは私の頬に、そっと触れた。酔っているせいか、その手のひらはひどく熱い。

「……俺が、いちばんサラとキスをした男です」

「ルーク?」

「俺がいちばん、サラのことがすきです」

突然そんなことを言い出した、ルークの甘い瞳から目を逸らせなくなる。そして彼が過去の話に対して嫉妬してくれているのだと、私はようやく理解した。

「ずっとずっと、サラだけがすきだったんです」

そんなまっすぐな言葉に、視界が揺れる。

私だってルークが何よりも好きだ。過去なんて忘れてしまうくらい、全てがルークに塗り替えられている。

少しでもそれを彼に伝えたくて「私も、」と再び口を開いた途端、ルークはこてんと私の肩に顔を埋めて。

「……ルーク?」

「…………」

いつの間にか、彼はすやすやと寝息を立てていた。

あどけない寝顔は、子供の頃と変わらない。今日は本当にルークらしくないと思いながら、柔らかな髪を撫でる。

「年の瀬に、すごいもの見せてもらったよ」

「……す、すみません」

「本当に愛されてるね、サラちゃん」

時計を確認すれば、ちょうどルークにキスをされている間に年を越してしまったらしい。

もう少しだけ飲んだら帰ろうか、というレイヴァン様の言葉に頷き、私はルークの重みを感じながら片手でグラスを持ち、彼と乾杯をした。

「ルークって、すごいよ」

「えっ?」

「違う世界にいる、もう二度と会えないかもしれない人をずっと想い続けるなんて、俺には絶対にできない」

「……はい」

「毎日あの町に行ってさ、本当健気だよね」

彼の言う通りだ。きっとそんなことが出来るのは、ルークくらいだろう。15年という時間は、間違いなく私が思っている以上に長いものに違いない。

そう思うと、再び視界がぼやけていく。本当にルークのことが、愛しくてたまらない。

「家まで送るから、起きたら甘やかしてあげなよ」

「はい。ありがとうございます」

そうして私達はグラスを空にした後、店を出たのだった。

◇◇◇

「おはよう、ルーク。具合は大丈夫?」

レイヴァン様に送り届けてもらいベットまで運んでもらった後、彼が心配だった私はそのまま隣で寝ることにした。

そして翌朝、彼よりも早く目が覚めた私は、その綺麗な寝顔をじっと見つめていたのだけれど。やがて目が覚めたらしい彼は、ぼんやりとした瞳で私を見つめた。

「……サラがいる」

「うん。昨日はルークが心配で、一緒に寝たの」

「起きて一番にサラの顔が見れるの、しあわせ」

そう言って子供みたいに嬉しそうに笑うから、朝から心臓が大きく跳ねた。そんなことを言われては、毎日彼と一緒に眠りたいと思ってしまう。

レイヴァン様がルークをここまで運んでくれたことを話せば、彼は頭を抱えた。途中から記憶が途切れているらしい。

「もしかして俺、何かしましたか?」

「それはもう」

「っすみません、何かサラの嫌なことを……?」

そうして慌て始めた彼の唇に、軽く自身の唇を押し当ててみる。すると、彼の太陽みたいな瞳が大きく見開かれた。

「ルーク、大好き」

「……サラ?」

「本当に本当に、好きだよ。ルークの全部が好き」

「…………っ」

昨日は彼ばかりに言わせてしまったのだ。だからこそルークが起きたら、私も気持ちを沢山伝えようと決めていた。それこそ、過去なんて気にならないくらいに。

「私が世界で一番、ルークのことが好き。ずっと大好き」

そう言い切ると、みるみるうちにルークの顔は赤くなっていって。やがて彼は両手で顔を覆うと、深く息を吐いた。

「……朝から俺を、殺す気ですか」

そう呟いた彼は耳まで真っ赤で、思わず笑みが溢れた。とても愛されていると、今日も実感する。

「昨日、ルークにたくさん言ってもらったから」

「よく分からないけど、昨日の俺を褒めてあげたいです」

「ちょっとだけ、文句もあるけどね」

流石にあんな場所で、ひたすらにキスされ続けたのは恥ずかしすぎた。それも私しか記憶がないなんて、あんまりだ。

そのことを彼に話したところ、ルークはひどく後悔したような表情を浮かべた。

「それだけは覚えていたかったです」

「もう」

「今から再現しても?」

「……1回だけね」

そう答えれば、ぱあっと表情が明るくなった彼が今日も愛しくてたまらない。

今も昔もこれからもずっと、ルークのことが大好きだと実感しながら、私はその唇を受け入れた。