軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第37話 大団円1

「おかしゃまあーっ!」

「ジェレミー、いい子で待っていてくれてありがとう」

部屋に入るなり飛びついてきたジェレミーを抱き上げて、ついでに頬ずりする。ああ、可愛い可愛い可愛い可愛い……。頭の匂いも嗅ぐ。お日さまの匂いがするわ。可愛い可愛い可愛い可愛い……。

ふうっ、堪能したわ。

「おかしゃまとおとしゃまのおそうじは、まもののおそうじだとききました」

「ええ、その通りよ。セイバート辺境伯家の者として、人の害となる恐ろしい魔物を放っておくわけにはいきませんからね」

「わあ、しゅごいの! おかしゃまとおとしゃまは、とてもかっこいいのね」

ジェレミーはキラキラ輝く尊敬の眼差しでわたしとダリル様を見てから、小首を傾げて「でも、おとしゃまはおようふくをわすれてきたのね? それとも、おおきなへびにたべられてしまったのかしら?」と不思議そうに言った。

半裸のダリル様は「身支度を整えて来る」と言って、お風呂と着替えをするために、王宮の使用人と共に姿を消した。

わたしはジェレミーをおろすとドナに 魔法の杖(マジックワンド) を渡した。お嫁入りの時にお母様から頂いたこの杖が、まさか天敵であるアルテラ王妃を倒すのに役立つなんて思わなかったわ……。

「よろしければ、シャロン様も身を清めてお着替えくださいませ。ドレスの用意がございます」

そうね、水が跳ねたり蛇が焦げた匂いがついたりしたドレスを着替えたいわね。

ミミルカに勧められたので、ジェレミーのお世話をまたドナに任せると、わたしも入浴して、王家が手配してくれたドレスに着替えた。

国王陛下から遣わされた側仕えの方から、なんとか時間の都合をつけてわたしたちとの面会時間を作るので、少し待ってくれないか、もしくは王宮に泊まってくれないだろうかと相談をされたので、わたしたちは泊まらせていただくことにした。さすがに疲労を感じているし、まだ幼いジェレミーがそろそろおねむの時間になるからだ。

「今夜は遅くまで起こしてごめんなさいね。お父様とお母様と一緒に、ゆっくり休みましょう」

ドナにお風呂に入れてもらい、パジャマを着たジェレミー(なぜ、ひよこ色のふわふわしたパジャマが用意されていたのかしら。背中に羽のアップリケが付いていて、めちゃくちゃ可愛いんですけど! ひよこジェレミー、爆誕!)を間に挟んで、キングサイズのベッドにダリル様も加えて三人で横になる。

いえね、王宮の人たちは当然のことながら、ダリル様とわたしのことを仲の良い夫婦だと思っているわけ。

まさかの形式だけの『白い結婚』だなんてこれっぽっちも気がついていないわけ。

そのため、三人でゆったりと眠れる巨大なベッドが置かれた、この寝室を用意してくださったのよ。

いろいろな後始末でお忙しい皆様の手を煩わせたくなかったし、本気で眠かったし、というわけで、本日は川の字で寝ることにしましたの。

ダリル様が、なぜかものすごく嬉しそうな顔をして、ご褒美をもらった子犬のように見えない尻尾を振っていたけれど、わたしは深く考えずにスルーした。

もちろん、彼が悪さをするなんて考えていないわ。

ジェレミーが一緒にいるんですもの。

もしも、万一、不埒なことを考えたら……わたしの可愛い魔法がお仕置きしちゃうしね?

そう話したら、ちょっぴり怯えていたけれど……。

「わたしはシャロンの信用を勝ち取り、本当の夫として末長く過ごしていきたいからな。そのためには努力を惜しまないし、シャロンの愛を勝ち取ったその先までずっと、誠意ある人間であることを誓う!」

「まあ、ダリル様ったら、なんて可愛らしいお方。可愛いジェレミーの父親だけあるわね」

くすっと笑ってそんなことを言ったら、彼は真っ赤な顔になり「シャロン……頼むからわたしの心を…… 弄(もてあそ) ばないでくれ……嫁が好きすぎて破裂してしまう……」と両手で身体を抱えこんで身悶えていた。

なんだか面白くなってしまったので、ジェレミーにおやすみのキスをしてからダリル様にも「おやすみなさい、あなた」とほっぺにキスをして差し上げた。

イケメン辺境伯は布団をかぶってミノムシみたいになって身悶えて、ジェレミーが喜んで真似をしていた。

そしてふたりとも、一分も持たずに爆睡状態になった。

そして翌朝。

わたしとジェレミーがゆっくり起きて朝食をいただき、部屋に待機していると、側仕えの方が「大変お待たせいたしました」と呼びに来てくれた。

「おかしゃま、どうしたの?」

水色と白を基調にした、ちびっ子騎士風の子ども服(無茶苦茶ジェレミーに似合うので、これは絶対にジェレミーのためにあつらえた物だと思うわ)を着たうちの天使ちゃんが、同じ色合いのドレスを着たわたしに尋ねた。

ちなみに、ジェレミーに「きょうのおかしゃまは、とってもおひめさまなの。せかいいちかわいいおかしゃまね」と言われて手の甲への騎士のキスをもらったので、わたしもご機嫌である。

「ダリル・セイバート辺境伯様も、お先に向かわれていらっしゃいます」

昨日、毒々しい紫色の蛇を討ち倒したダリル様は、朝早くから報告だか会議だかに出ていて忙しくしているのだ。

「ジェレミー、これからあなたの伯父様にあたる、国王陛下にお目にかかるのですよ」

「おいしゃま? おとしゃまのおにしゃまのおいしゃま?」

「ええ、そうよ。よく覚えていましたね」

ジェレミーはうふふと笑うと「だってぼく、おいしゃまにおあいするのをとてもたのしみにしていたの」とわたしにしがみついた。

「きのうは、とおくからちょっとだけ、おかおをみたのよ。きょうはおはなしもできるかしら」

「ええ、できますよ」

「うわあ、おいしゃまとおはなしできる! すてきね!」

わたしは喜んで飛び跳ねるジェレミーに微笑みかけた。

今朝もとびきり可愛らしい天使ちゃんだわ。あら、側仕えの方が胸を押さえて壁にもたれかかっていらっしゃるわね、大丈夫かしら?

「こっ、これは、治癒魔法の使い手を部屋に待機させなければ……陛下の身が 危(あや) う過ぎる……」

ジェレミーを抱っこしたわたしと、ドナとミミルカを連れて、ぶつぶつとなにか呟く側仕えの方は謁見室に向かった。