軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

89 ヤマノ家 日本邸

「ここが、うちの日本邸だよ」

というか、私の自宅である。

「「…………」」

サビーネちゃんとコレットちゃんは、異世界勢でふたりだけ、日本語の勉強をしている。

サビーネちゃんは、言うまでもなく、DVDを私の同時翻訳無しで自由に観たいから。そしてコレットちゃんは、私の補佐として、また、将来的には私が不在時にヤマノ領の代官役をこなして貰うため、近代的な政治や領地運営の方法を色々と学んで貰えるようにと、私が勉強するよう指示したからである。

勿論、餌として、色々なアニメのDVDを見せて、どハマリさせた。効果は抜群だ!

まだ若く、知識の吸収が早いこと。そして、私がいなくても好きな時に好きなだけDVDが観られるようになるという魅力の前に、ふたりの勉強意欲には恐ろしい程のものがあった。今では既に、片言の日本語が 操(あやつ) れるまでになっている。

喋るのは、まだ少々つっかえるが、聞く方は、あまり早く喋られなければ、大体の意味は理解できるまでになっていた。

さすがサビーネちゃんとコレットちゃんである。明らかに、あの世界の同年代の子供達の水準を遥かに 凌駕(りょうが) している。これ程の子供は、そうそう……、

と思ったが、脳裏に、あの孤児院の謀略少女や、屋台を作ったロイク少年と、その助手を務めたマノンちゃん達の顔が浮かんだ。

……どうなっている、あの世界の子供達の能力は!

いや、まぁ、文明は遅れているものの、地球人と較べて、知的能力はそれ程変わらないのだろう、多分。ただ、情報量が少ないというだけで……。

もしあの世界の子供達を日本に連れてきて勉強させれば、多分、日本人と変わらない能力を身に付けられるのだろう。

いや、もしかすると、体力や死生観、『人生というものに対する心構え』等から、日本人を遥かに凌ぐ人間となるのではないか。

将来、ヤマノ領の子供達を、留学生として地球の学校に……。

いやいやいやいや、それは、まだまだ先の話だ。

今はまだ、目先のことで精一杯。まずは、足下からだ。

そして、とりあえず、このふたりのお相手、と。

「私の、緊急用のセーフハウスだよ。そしてここが、ふたりがいつも観ている『でーぶいでー』の主要生産国だね。だから、ふたりが勉強している『にほんご』が通じるよ」

「「おおおおおおお!」」

そして家の中を案内したが、それぞれうちの領都邸や王都邸で浴室もテレビもエアコンも知っているふたりは、別段驚くこともない。そして、サビーネちゃんが呟いた。

「小さい家だねぇ……」

う、うるさいわ!

そりゃ、王宮に住んでいて、訪問先は貴族の邸宅か私のヤマノ家王都邸兼雑貨屋ミツハくらいしかないから、こういう庶民の家は初めてかも知れないけどさ……。

謝れ! やっとの思いで建てて、頑張ってローンを返済していたお父さんに謝れ!!

「せ、セーフハウスだからね……」

ぷるぷると震える私の声に、やべっ、と思ったらしいサビーネちゃんが、焦った様子でフォローしてきた。

「い、いや、異国情緒があって、なかなかいい家だよ、うん!」

いいよ、もう!

宿をチェックアウトしたのが結構遅かったから、もう10時前だ。そろそろ行くか。

「じゃ、出掛けるから、ふたりともこれに着替えて!」

そう言って、事前に買っておいた服をタンスから出して、ふたりに渡した。

「これは?」

「このせか……、この国の一般的な服だよ。その服は、ちょっと目立つからね」

そう、サビーネちゃんの服もコレットちゃんの服も、それぞれ違った意味で、日本ではちょっと浮きそうだ。だから、前もって用意しておいたのである。

「着替えたら、ご近所に挨拶して、その後、デパートに行くからね」

「「で、ででで、デパート!!」」

そう、あの、でぃぶいでーの『あにめ』に出てくる、デパートである!

超速で着替える、サビーネちゃんとコレットちゃん。

そして、着替え終わったふたりを連れて、ご近所さんに挨拶回り。

「外国人と結婚した親戚の子供です。旦那さんの転勤で日本に戻ってきたので、時々遊びに来ますので、よろしくお願いします」

「「よろしくおねがいしマ~ス!」」

教えた通り、話を合わせるふたり。

そして、交番のお巡りさんにも挨拶してから、軽自動車に乗って、デパートへ。

キャンピングカーで街中を走ったりしないよ。何せ、免許を取ったばかりの初心者なんだから、あんなデカいクルマで、混んだ道や狭い駐車スペースに駐めるのは全く自信がない。ここは、小さくて、少しは運転に慣れた軽、一択!

ご近所さんやお巡りさんにふたりを紹介したのは、今後の万一に備えてだ。

今まで、汚水処理やクルマを戻すためとかの瞬間的な転移は普通にしていたけれど、それ以外は、ずっとサビーネちゃんとコレットちゃんのふたりと一緒だった。でも、これからは、ふたりと別行動を取らなければならない時もあるだろう。その時、治安の悪い向こうに、ふたりだけにしておくわけには行かない。

だから、その時には、ふたりをこちらに連れてきて、自宅で待機させておくのだ。お菓子とゲーム機を与えておけば、多分ふたりは文句も言わずに待っていてくれるだろう。

しかし、もし万一のことがあれば。

泥棒や強盗の侵入、火事、その他色々、ふたりだけの時にアクシデントが起きた場合。

そして、何かの事情で私が戻ってこなかった場合。

その時に助けを求められるようにとの、挨拶回りである。

そしてふたりには、もし私が戻らなかった場合にはここを掘るように、と、室内の床下のある場所を教えるつもりである。そう、色々な書類を入れた密封容器を1メートルくらいの深さに埋めた、その場所を。

その容器に収められた指示書には、傭兵団『ウルフファング』の隊長さんへの連絡方法が書いてあり、地下の貯金穴のこと、スイス銀行の預金のこと等、全てを隊長さんに依頼してそれらを密かに回収し、それをふたりの財産として不自由なく生活するよう書いてある。隊長さんへの手紙も、必要な書類等も、出来得る限り揃えてある。

それの出番が来る確率は低く、そしてそうならないよう最大限の努力はするけれど、万一に備えての用意だけはしておく。そう、私は、このふたりのためならば、どんな小さな可能性も見落とさない。

デパートの駐車場にクルマを駐めて、みんなでデパート見物。

絶対に商品には触らないよう言い含めておいたため、特に問題はなかった。

ただ、可愛い外国人の少女ふたりが大はしゃぎで見て廻るため、目立った。とんでもなく目立った。平日の昼間だし、このデパートに就職した知り合いはいないから、まぁ、今だけ我慢すれば……。

「あら、光波ちゃんじゃないの! お久し振りねぇ」

ぎゃああああぁ!

元クラスメイトの母親達、ママ友グループに遭遇したああぁ!

サビーネちゃんとコレットちゃんのことや今の生活について根掘り葉掘り聞かれまくり、ようやく解放されたのは30分以上経ってからであった。

おばちゃん達は早口でのマシンガントークだったため、サビーネちゃんとコレットちゃんにはあまり聞き取れなかった模様。

疲れ果てたので、少し予定を繰り上げて、昼食のためデパート内のレストランへGO!

うん、今日のメインイベントだ。