軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74 決戦の日

昨日の今日で、孤児院へ。

用件は、大会の日の手伝いの依頼。

「う~ん、大会の日は稼ぎ時だから、総員態勢で雷コーンを売りまくろうと思ってるんだよね……」

謀略少女が言うには、鍋を御近所さんから借りて流れ作業で大量生産、孤児院総出で売り歩こうと考えているらしい。独占体制が崩れる前の、最後の荒稼ぎ、とか。

もう、本当に、この子は!

さっさとペッツさんのところへ行っちゃいなよ!!

それでも私がどうしてもと頼めば受けてくれただろうけど、必死で考えたであろう作戦を邪魔したくなかったので、頑張るようにと言って引き揚げた。

「「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」」

うん、次に来たのは、ここだ。

ボーゼス伯爵一家が王都に来ない今、ここの使用人はそう忙しくないはず!

「助けて、ルーファスさぁん!!」

……助けてくれた。さすが、伯爵家王都邸の執事!

2日間に渡る大会当日、最低限の警備の者を残し、使用人総出で手伝ってくれるとのこと。

更に、メイド繋がりか楽園亭からマルセルさん経由か、アデレートちゃんのおうち、ライナー子爵家からも使用人が来てくれるとか。

あれだね、主人公のピンチに、昔の戦友が各地から駆けつけてくれる、ってやつだよね!

よぉし、やるぞぉ!

大会の日は、王宮の予定や他のイベント、その他諸々の支障がないことを確認し、各部の了承や根回しも終え、2週間後に決定した。遠くから来る人もいるかも知れないから、日数には余裕を見ておかないとね。

すぐに告知の張り紙をし、他の町にも正確に伝わるようにチラシも作って配布した。

単色の写し絵、フルカラーの姿絵共に原版は完成済み。いつでも印刷できる。

あとは……、あれ、あんまり無いぞ?

大変なのは、当日の受付や写し絵の交換作業とかだよね。警備は王様の兵士に丸投げだし、蠱毒…げふんげふん、勝ち抜き戦は、初日は各自で相手を探して勝手に勝ち進んで貰うので、手間はかからない。

2日目は、生き残りも少なくなるし、さすがに管理が必要だろうから、ちゃんとトーナメント表を作る。

この蠱毒で最後まで生き残った者が、私と美味しい料理を食べることが出来る。まさに、蠱毒のグル……、いえ、何でもありません。

大会は、2日間に渡り開催する。

オセロは初日8回戦、2日目7回戦の、計15回戦となる予定。これで、最大32768名まで対処できる。実際にはこれより減るだろうけど、たとえ半分になったとしても1回戦減るだけなので、時間的には大して変わらない。

ただ、第1回戦の時に街中で16000組以上の試合が同時に行われるのが怖すぎるので、その数をなるべく減らしたい、というのが写し絵計画の目的だ。人数が中途半端になった場合には、臨機応変に対応。

何か、試合時間より相手を探すのに時間がかかりそうな気がするなぁ…。

2日目は人数が激減しているからこっちで管理できるけど、初日は無理だ、絶対。なんとか自分達で頑張って貰おう。

一応、広場には夜通し灯りを灯す予定だけどね。

将棋は、まだ競技人口が少ないから、初日4回戦、2日目が3回戦。

試合回数は少ないけど、オセロより時間がかかるからね。

こっちは、スムーズに行くと思う。長考という習慣が無いからね、ここには。

あ、賞品は、オセロと将棋、それぞれ別に授与される。1位から8位までが2組あるということね。

つまり私は、ディナーを2回、散歩と買い物、ランチをそれぞれ4回、ほっぺぷにぷにを8回、そして撫で撫でを16回されるわけです。

……頭、禿げるんじゃなかろうか。

そしてボーゼス邸とライナー邸に行って当日の手順や注意事項を説明したり、各部の予定に変更がないか等を確認したりしているうちに、日はどんどん進んで行った。

「みんな~! ミツハ姉様を撫で撫でしたいかぁ~~!!」

「「「「「おおおおお~~!!」」」」」

……いかん、司会の人選を誤ったか。

広場で一番大きな木の上に取り付けられたスピーカーから流れるサビーネちゃんの声に、頭を抱えた。

いや、最初は私がやるつもりだったんだよ。そうしたら、サビーネちゃんが『賞品である姉様がそんな雑事をやってはダメ! 賞品は賞品らしく、ひな壇の上でどっしり構えていないと!』って言って、自分がやるから、って……。

その後は、ちゃんと注意事項の原稿を読んで真面目にやってくれたサビーネちゃんは、最後に大きな声で宣言した。

『第1回遊戯盤大会、始めぇ~~!!』

いや、第2回をやる予定は無いよ、言っとくけど。

大会参加者は、一斉に対戦相手を求めて動き始めた。

近くにいる者に挑む者もいれば、なるべく弱そうな相手を求めて子供がいる方へと駆けて行く者もいる。……サビーネちゃんのような子に当たるが良い!

受付は、考え直して、5日前から開始した。

参加チケットである単色の写し絵を渡して、代わりに遊戯盤に付いている子爵家の焼き印の特定部分を削る。

こんなの、当日の朝にやってたらこなせるわけがないよ、考えたら。

メイド軍団30人でやっても、ひとりあたり1000人分。

何時間かかるんだよ………。

それで、考え直して事前にやっておく事にした。まぁ、正解だろう。

試合が始まると、一時的に暇になった。

私が見て廻ると混乱が起きるし参加者が勝負に専念できないから、見て廻るの禁止、とサビーネちゃんに言い渡され、他の人もそれに賛同していたから、主催者席と言うかひな壇と言うか、ここから動けない。

暇だから、考え事でもしていよう。

この世界に初めて来てから、そろそろ1年近くになる。

何度か死にそうになったり、お世話になった人、お世話してあげた人たちが段々と増えて、今ではこっちの世界が私の居場所になっちゃってる。

地球には、家の維持管理と私の健在証明、物資の買い込みくらいしか行ってないよ。友人達も、進学や就職で都会に行っちゃってるし。

もう、地球の各国への説明通り、私はこっちの人になっちゃっていいんじゃないかな?

でも、両親が残してくれた家を無くすのも何だしなぁ……。

それと、もし私が本当に歳を取らないなら、そのうち日本では暮らせなくなる。あと10年も経てば、老け顔メイクでも誤魔化せなくなるだろう。

その時には、自宅を処分して、国外に移住したことにするか……。

友人達とはメールで連絡できるし、20年くらい経ったら私の娘の振りをしてみんなの様子を見て廻るのも良いかも知れないな。

『うわぁ、ミツハそっくり~!』とか言われたりして……。

そのうち隊長さんに頼んで、いくつかの国の国籍を用意して貰おう。そういうのに緩い国はたくさんあるだろう。お金さえ払えば市民権だろうが博士号だろうが買えるのだから。

そして、世界各地にセーフハウスをいくつも用意して、何があっても良いようにたくさんの身分と住処を準備しておこう。

ある時はエルフの血を引いた長命の異世界の王女。

ある時はスイスの田舎町で武器のコレクションを手入れしながらのんびり暮らす平凡な少女。

またある時は南国の無人島を私有して秘密基地で世界を見守るレスキュー少女。

しかして、その実体はッッ!!

「姉様、妄想タイム、まだしばらく続きそう?」

う、うるさいわ!!