軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

501 ヤマノ領の開発 5

まあ、そういうわけで、石鹸の製造販売に手を出すことにしたのだ。

小規模なものから始められるし、衛生概念を広めることによって平均寿命を延ばすことに貢献できるからね。

……そして、儲かりそうだから。

地球じゃ、紀元前から5世紀頃の古代ローマ時代には既に石鹸があったらしいけれど、主に薬用や整髪用、入浴時とかに使われるものであり、日常的な洗浄用としてはあまり使われていなかったみたいだ。

……そして、柔らかいからすぐに減るし、作るときに成形しにくいし、輸送時に変形しやすいしで、色々と欠点が多かった。

中世にはある程度固い石鹸が出回り始めたけれど、庶民の間に本格的に普及したのは18~19世紀頃で、今のような固さ、高純度で均一な形状、長期保存可能な完全なものが普及したのは、19世紀の後半になってかららしい。

発明から本格的な普及まで、2000年以上かかっとるんかい……。

まあ、そういうわけで、この世界にも当然あるわけだけど、まだ柔らかくてすぐに減るし、貴族や金持ちしか使っていないわけだ。日常的な手洗いとかには使っていないし……。

それも、使うのは貴族や金持ち本人とその家族だけなので、使用人達は使っていない。

ということは、食中毒や感染性の病気の蔓延防止には、あまり役には立っていないというわけだ……。

なので、地球の知識を使い高品質の石鹸をこっちの世界で作り、安価で流通させるのだ。

国内だけでなく、他国にも広く行き渡らせて……。

広まって困るものじゃないし、パクリ業者が現れても構わない。

不良品による詐欺でさえなきゃね。

どうせ、この大陸中で使われる石鹸を全てヤマノ領で作ることなんか不可能なんだ。

だから、自然破壊に繋がるようなやり方は極力抑え、 阿漕(あこぎ) な真似さえしないなら、模倣は黙認するよ。

どうせ、秘匿しても製法はすぐに漏れるだろうからね、こういう『コンプライアンス? 何ソレ、美味しいの?』というような世界では……。

それなら、いっそのこと最初から模倣自由にして太っ腹なところを見せて、『女神様から戴いた知識によるものである。なので女神様の意を汲んで、あまり高値にすることなく普及に努め、人々の命を守るよう尽力しなさい』と告知すれば、あまり酷い商売をする者はそう多くはないだろう。

……というか、安く売る者が一定数いれば、高値で売れるはずがないだろう。

よし、固い石鹸の作り方を調べて、ヤマノ領で入手できる原材料で安く大量に、そして安全で高品質なものが作れるよう、研究と試行錯誤の開始だだだ!!

* *

石鹸の固さは、使う油の種類によって変わる?

乳酸ナトリウムを入れるといい?

機械練りはここじゃ難しいから、枠練りか……。

香料や保湿成分を混ぜて良い感じにしたいけれど、あまり色々入れると手間とお金が掛かる。

よし、面倒で色々入れなきゃならないのは、金持ち用にして少し価格を高く設定しよう。

貴族や裕福な商人とかは、普通の平民と同じものは使いたがらないだろうから、少し香りを良くするだけで高級品だと言い張ればいいや。殺菌・洗浄効果は大差ないけれどね。

領地に目立たない建物を用意して、秘密の石鹸工房を造ろう。

当分の間は、研究と試作の繰り返しになるだろうけど……。

まずは、研究家肌の領民をスカウトして、石鹸作りに関する基本的なことを叩き込むか。

色々と面倒だけど、私が急にいなくなっても困らない産業をヤマノ領に複数根付かせておきたいんだよねえ。

特産品があれば、不作の年でも現金収入が途絶えないし、農作物に掛けられる税率も少し抑えてもらえるかもしれないからね。そっちでの税収が充分取れれば。

まあ、それも新しい領主が『領民は 雑巾(ぞうきん) と同じで、絞れるだけ絞るものである』なんて言い出すような馬鹿でなければ、の話だけどね。

日本にもあったなあ、似たような慣用句が……。

『百姓と 胡麻(ごま) の油は、絞れば絞るほど出る』だっけ?

そこは、運次第だ。

私は、ただ現時点における最善を尽くすのみ……。

早く本格生産に入りたいなあ。

石鹸は、熟成とか乾燥とかで、割と時間が必要らしいから。

お酒といい石鹸といい、カネになりそうなものは、全部長期間寝かせておかなきゃならないものばかりかい!

味噌、醤油、カツオ節とかも、全部そうだ。

どんどん作り続けられて、作る端から出荷できる高額商品はないんかい!

ここの技術力で作れて、原材料が自給できて、何度でも繰り返し買われるもので、この世界の技術進歩を歪めないもので、既存の産業や業者の邪魔をしないものとか……。

それには、食べ物とか消耗品がいいんだけど、なかなか楽に稼げるものがない。

クソッ!

……まあ、ヴィンテージ物のワインやブランデーとかよりはマシか。

アイツら、数十年単位だからなぁ、熟成期間……。

十年以上お金にならないなんて、どんな嫌がらせだよっ!

ハァハァ……。

とにかく、ここでも石鹸は作られているのだ。ブヨブヨのヤツだけど……。

だから、そこに地球の叡智を加えれば、失敗することはないだろう。

ゼロから始めるのではなく、成分や作り方を改良し、グレードアップするだけなんだから。

よし、早速石鹸工房を作る準備と、必要な人員の募集、そして基礎的なことの研究と、器材の発注を……。

「何か、お酒造りの時と同じようなコト言ってるよね……」

「うんうん!」

「じゃあ、これもまた保留になって、別の案を考える、と……。

そしてそれもまた同じような結果になって……」

「「「永遠に計画と保留が繰り返されて、いつまで経っても何も進まない、と……」」」

「うるさいわっ!」

サビコレベアーが、言いたい放題で勝手なことを……。

し、しかし、万一ということもある。一応、安全策を取っておくか……。

「サビーネちゃん、一応、次の案もいくつか考えておいてね!」

「……」

「「…………」」

「「「………………」」」

「何よ、その沈黙は!」

「「「……………………」」」