軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

491 観光旅行 3

「……そして、『 関東煮(かんとだき) 』というのは、おでんとは違い、鍋の中央に生姜醤油を入れた壺が置いてあり……」

「……ミツハ、まだ続くの? その 蘊蓄(うんちく) ……」

「さっさと食べに行こうよ!」

「お腹すいた……」

ベアトリスちゃん、サビーネちゃん、そしてコレットちゃんにまで、冷たくあしらわれてしまった……。

まあ、お好み焼きや 関東煮(かんとだき) について熱く語るのは、食べながらでいいか……。

「あ、生姜醤油につける 関東煮(かんとだき) は、播磨辺りによく見られるもので、姫路とか 宍粟市(しそうし) とかで食べられるんだけど、広島でも……」

「ミツハ、それはもういいから! 早く食べに行こうよ!」

「……あ、うん……」

* *

広島と言っても、市の中心部ではなく、かなり田舎の方へ来ている。

観光客相手の店ではなく、地元の子供やら爺ちゃん婆ちゃんが来るようなところだ。

40~50年前くらいは、暇を持て余した年金暮らしのお婆さんが、儲けとかはあまり考えずに趣味でやっていたりして、安くてボリュームがあって美味しい、という店が多かったらしいんだよね。キャベツとかは裏の畑で採れたヤツで……。

そんなの、お店の稼ぎで暮らしていこうとする若手が新規参入できないじゃん!

婆ちゃんの世代が滅びたら、お好み焼き屋がなくなるじゃん!!

……と、まあ、今ではそういうお店は殆どなくなって、大半が普通の価格帯、普通のボリュームのお好み焼き屋になっているのだけど、まあ、味は引き継がれている。

焼くのには大した技術は必要ないけれど、唯一、ひっくり返す時にだけは注意しないと……。

大阪風(・・・) だと、サルでもひっくり返せるんだけどね。

「……でも、自分でひっくり返すわけじゃないんだ……」

サビーネちゃんに、突っ込まれた。

「そりゃあ、そういうのはプロに任せるのが一番でしょ。素人が口出しするような世界じゃないよ、うん!」

私達の話を聞きながら、おばちゃんが苦笑しつつ焼いてくれている。

こういう場合のマナーとして、私達は日本語で話しているからね。今回の旅行は、ベアトリスちゃんの語学研修も兼ねているし……。

注文は、私の好みに合わせて、肉は牛肉、麺はうどん玉。2枚目は、麺なしで行く予定だ。

おばちゃんは、キャベツをてんこ盛りにしたやつをヘラで上手くひっくり返して、ギュウギュウと力いっぱい押し付けている。

これは、ただ押し潰しているんじゃなくて、水分を飛ばす、熱が均等に伝わってキャベツが上手く蒸し焼きになるようにしている、そして形を整えるとか、色々な理由があるのだとか……。

あまり強く押し付けると空気の層が失われてふんわり感がなくなるけれど、おばちゃんの腕力ならかなり力を入れても……、って、毎日何十枚も焼いていたら、腕の筋肉モリモリになってるんじゃないか?

テニスプレイヤーは、スマートに見えても利き手の握力がすごく強いっていうし……。

でも、毎日こんなに力を入れて押し続けていたら、腱鞘炎とかになるんじゃあ……。

いやいや、そんなの、どうでもいいよ!

「はいよ、お待たせ!」

鉄板席に並んで座っている私達の前に、ヘラで一斉に寄せられた、お好み焼き。

そう、お皿ではなく鉄板で。そしてお箸ではなく、ヘラ(コテ)で食べる。

ヘラで切って、スッと乗せて、形を崩すことなく綺麗に……。

「鉄板に手をつかないように。……火傷するからね。

食べる時も、熱いから気を付けるように。いきなり頬張ると、口の中を火傷するよ。

そして、ヘラで上手に切って、すくって、こぼさないように綺麗に食べる! 鉄板も、綺麗に保ってね。ソースが足りなければ、好みに合わせて追加。あんまりドボドボかけないように!

私がやってみせるから、同じようにしてね」

「「「は~い!」」」

よし、おばさんが使っている大きなのじゃなく、食事用の小さなヘラでお好み焼きの端の方を切り、それを更に横方向に切って適度な大きさにして、ヘラでさっとすくい上げ……。

ぱくり。

……うん、これだ!

端の方だから、最初に食べた部分にはうどんが入っていないけど、キャベツの食感とソースの味が……。

んんんんん~……。

「「「美味しい!!」」」

あ、私が久し振りの本場の味に感動している間に、3人が猛然と食べ始めていた。

うむ、美味しかろう!

これが、真の『お好み焼き』だだだ!!

* *

お好み焼きは、2枚食べて、満腹になった。

……1枚目はうどん入りだったからねえ……。

お腹が 空(す) くまで、あちこちを観光。

宮島で鹿に取り囲まれたり(みんなが、ポケットにお菓子を入れているから……。鹿は、そういうのをしっかり見てるんだよ。今は鹿せんべいは売っていないし、餌やりは禁止されているから、お腹を空かせているのかな)、てつのくじら館や大和ミュージアム、そして江田島で教育参考館を見学したり……。

転移で簡単に移動できるから、フェリーの時間とかを気にする必要はない。

教育参考館では、みんな展示物の説明文をすらすら読める程の語学力はないから、私が翻訳してあげた。

……みんな泣くかな、と思っていたけど、結構平気な様子だった。

聞いてみたら、『え? 兵士が国を護るために戦うのは当たり前でしょ?』と言われた。

あ~、確かに、向こうの世界じゃそれが当然か……。

ゼグレイウス王国では15歳で成人、立派な大人だしねえ……。

……そして、見学が終わった頃にはお腹が空いてきたから、夕食は 関東煮(かんとだき) で!

* *

関東煮(かんとだき) も、広島の都市部を離れたところで食べた。

割と良い値段だなぁ……。

昔は、タネの種類に関わらず、全品100円とかのお店もあったらしいけれど、今はそんなお店はないよねえ……。

お会計が面倒だから、串の本数で代金を決めるためだったらしいけれど……。

サビーネちゃん達は、はふはふと熱いのに耐えながら食べている。

そんなに焦って食べなくていいのに……。

平天、ゴボ天、チクワにコンニャク、大根、ジャガイモ、たまご、厚揚げ、焼き豆腐、牛スジ、もち入り巾着。

勿論、はんぺんやちくわぶなんかは入っていない。

みんな、もうこれでお腹いっぱいかな。

続きは、明日だな……。