軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

464 色々と…… 1

「……え? 『ソロリティ』が潰れた?」

レフィリアから、そんな情報が……。

いや、勿論、うちの国でアデレートちゃんが率いている方じゃなくて、新大陸のヴァネル王国で、私の『ソサエティー』を真似て作られた、とある侯爵家令嬢が主宰している方のやつだ。

……実際には、その父親が指示して作らせた、親のいいなりになる組織なのだろうけどね。

それが、潰れた、と……。

いや、予想はしていたけれど、早かったねぇ……。

まあ、『 ソサエティー(うち) 』のように、日本製のスイーツが食べ放題というわけではなく、レフィリア貿易でも売っていない日本の製品が買えるわけでもなく、余所では手に入らない豊富な種類の化粧品が手に入るわけでもなく、化粧技術を教え合えるわけでもない。

そして、親の爵位や力関係がバリバリで、上位者の言うことには逆らえない。

下級者は、上の者の使用人も同然。

……そんな組織に居たがる者はいないよねぇ……。

そりゃ、親の命令というのはあるだろうけど、物事、限度というものがある。

最初に使用人扱いされていた下層の令嬢達が抜ければ、次に使用人扱いされるのは、それまで中層であった令嬢達だ。

仮にも伯爵家とかで令嬢扱いされている者達が、そんな扱いをされて、我慢できるはずがないよねぇ……。

メリットは殆どなく、デメリットてんこ盛りの、楽しくも何ともない、上位者の機嫌を取るだけの、苦行の時間。

……そんなの、家ではお姫様扱いされている御令嬢に、我慢できるはずがないよね。

いくら父親の命令でも、癇癪起こして拒否するだろう、そりゃ……。

そして父親も、思ったようなメリットがなく、娘が上位者の下僕扱い。

このままでは、その上下関係が社交界でもずっと続くとなれば、親同士の関係にまで悪影響が及びかねない。

……そりゃ、娘が『ソロリティ』を辞めるのを認めるだろう。

そして、次に奴隷役になった者も、その次の者も、次々と……。

当たり前だよね。

「よし、これでうちの国の『ソロリティ』と紛らわしくなくなって、ラッキー!」

「……え?」

「あ、いや、何でもないよ! パチモン組織が減って、よかったな、と……。

でも、『 ソサエティー(うち) 』以外の令嬢の親睦会があり、上級貴族達にその存在が認められていたという事実は消えないから、『 ソサエティー(うち) 』のことを危険な政治的組織だなんて攻撃することはできなくなったのは、助かるなぁ……」

私の説明に、納得したような顔の、レフィリア。

あ、そうだ……。

「『 勇敢(ゆうかん) 倶楽部(くらぶ) 』とかいうのは、どうなってるの?」

「ああ、上級貴族の御婦人方の集まりですね。

そちらの方は、割と上手くいっているみたいですよ。

まあ、社交に慣れた年配の方々が多いですから、社交辞令での 上辺(うわべ) だけのお付き合いでしょうけど……。

ですから、『ソサエティー』のような友好的な関係や団結力なんかはなく、普通のサロンと大差ないんじゃないかと思いますよ」

「あ、やっぱり……」

「そして、『ソロリティ』に止めを刺したのは、先日の『ソサエティー』のお茶会だという噂ですよ。

何でも、それに招待された御令嬢の方々が『ソサエティー』の活動の様子をご覧になり、その話が広まって、『ソロリティ』を見限った方が多いそうで……」

「あ~……」

そんなつもりは全くなかったけれど、あれが『ソロリティ』の致命傷になったのか……。

普通なら、『 ソサエティー(うち) 』に怒りのクレームが来たり、復讐やら嫌がらせやらをされるパターンだよねぇ、これって……。

まあ、『 ソサエティー(わたしたち) 』にそんなことをする人は、いないだろうけどね。

もしそんなことをして、『ソサエティー』への敵対行為が露見したら、身の破滅だものねぇ。社会的にも、宗教的にも……。

そもそも、女神の存在が信じられている世界で、聖女達の集団に喧嘩を売る者はいないよ、うん。

ゴロツキだって、運頼みの生活をしているんだ。女神を敵に回したがる者なんかいないから、人を雇って嫌がらせ、なんてこともできないと思うよ。

……いや、油断はしないけどね、勿論……。

* *

「姉様、お願いがあるの……」

「え?」

何か、サビーネちゃんが真剣な顔でそんなことを言ってきた。

滅多にないんだよね、こういう言い方での、サビーネちゃんからの頼み事って……。

これは、きちんと真面目に聞いてあげなきゃ駄目なやつだ。

なので、姿勢を正して、正面から向き合って、尋ねた。

「どういうお願いかな?」

そして、サビーネちゃんからの返事は……。

「上姉様に、にほんのお化粧品全てと、お化粧の技術を解禁してもらいたいの……」

……え?

「えええええええ〜〜っっっ!!」

何じゃ、そりゃあああああ〜〜っ!

私の驚きが収まるのを待ってから、サビーネちゃんが詳しく説明してくれた。

上姉様……第一王女殿下は、大好きだった婚約者を病で亡くしてから、長い間ふさぎ込んだままだった。

しかし、帝国相手の王都絶対防衛戦における若き英雄のひとり、その功績で爵位を賜った、新たなる貴族家の始祖である青年を見て、ようやく元気を取り戻した様子……。

……いや、わざわざ名前をボカさなくてもいいよ。

そんなの、該当するの、ひとりしかいないじゃん!

いったい、何に対する配慮だよ……。

まあ、とにかく、そういう感じらしいのだけど……。

「……それで、そろそろ次の婚約者を、という話になっている、と?

でも、サビーネちゃん、前に言ってなかった? 上姉様、『努力の姫君』って呼ばれていて、凡人なのに努力で一流の能力を身につけた、って。

そして、婚約者が亡くなった途端、国内外から婚約の申し込みが殺到して、王様が傷心の上姉様を護るために全部断った、って……。

その気になれば、入れ食い状態になるんじゃないの?」

そうなのだ。

ちい姉様は、すごく可愛いけれど、そんなに優れた能力があるわけではないのだ。ふわふわしていて優しくて良い子だけど、能力としては、ごく普通の人。凡人。

すごく可愛いけど……。

すごく可愛くて性格が良くて王女様なら、普通の人や凡人であるもんかっ!

それだけで、勝ち組だろうがっっ!!

……はぁはぁはぁ……。

そしてサビーネちゃんは、可愛くて天才で、……これでナイスバディになったりすれば、どうしてくれようか……。

よし、胸に栄養が行きにくいものばかり食べさせて……。

「やめて! ……本当に、やめてっっ!!」

「……あ、声に出てた?」

何か、本気でドン引きしてるな、サビーネちゃん……。

とにかく、サビーネちゃんは断トツの超優良株だけど、結婚適齢期は、まだまだ先だ。

念の為に早めに跡取りを作っておきたい貴族や王族は、正妻を娶るのをそんなに待ってはいられない。

正妻より先に第二夫人とかを娶って男児が生まれたりすれば、後継者争いの原因になりかねないし……。

だから、ある程度の年齢になっている者は、サビーネちゃんの成長は待てないんだよね……。

なので、今、結婚適齢期である男性が狙うとなると、上姉様一択、というわけらしいのだ。

上姉様より先にちい姉様が結婚、というのも、アレだしねぇ……。

貴族や王族らしい、鋭利で鋭い顔付き。

皆が認める、努力の人。

亡くなった婚約者を想う、一途でひたむきな性格。

……そして、見た目とは違い、実は優しく穏やかな性格。

うん、王女様三姉妹のうち、今現在、すぐに結婚できる相手となると、上姉様最強なんだよ。

だから、これ以上武装を強化する必要なんかないはずなんだよね。

これ以上やると、オーバースペック、そしてオーバーキルだ。

ヤマノ産……日本の化粧品と化粧技術なんか与えたら、たいへんなことになるんじゃないのかな、それって……。