軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

439 『ソロリティ』の危機 7

……結局、『それらは神様専用の強力な魔導具だから、人間の身体では耐えられない』と説明して、残念そうなアルシャちゃんに、選定のやり直しを指示した。

いや、本当に、ドリルの重さや回転力の反動、動力源とかで、人間には耐えられないだろう。

ロケットパンチも、発射の反動とか噴射炎とかで、自爆武器になっちゃうよ。

まぁ、作れないから関係ないけどね。

……しかし、世の中、やっていいことと、駄目なことがある。

こんな重要なことで、悪ふざけを許すわけにはいかないよ。

なのでサビーネちゃんとコレットちゃんには、みっちりとお説教をしておいた。

私がかなり本気で怒ったから、さすがにふたりともビビって、反省していた。

コレットちゃんは、多分サビーネちゃんの巻き添えを喰らっただけだろうけどね。

サビーネちゃんは、あまり悪質な悪戯はやらない子なんだけどねぇ……。

だから、もしかするとあれも、何らかの思惑があったのかもしれないな。

アルシャちゃんに、最初は私が却下するのが確実なやつを選ばせて、選定のやり直しの時には、肩に力の入らない、楽な気持ちで選べるように、とか……。

そして、そんな気遣いをしたことは誰にも言わず、自分が悪者になる、とかね。

如何にも、サビーネちゃんがやりそうなことだ。

……いや、本当にただの悪ふざけだったという可能性もあるか……。

待てよ? まさか、サビーネちゃんもコレットちゃんも、ドリルやロケットパンチの義手が普通に存在していて、選択可能だと思っていた、ということは……。

ふたりに見せているアニメには、日常物もあれば、異世界冒険物、SFっぽいのとかもある。

その中で、ふたりにとっての日常物は、私にとっての異世界冒険物なんだよねぇ。

私にとっての日常物は、ふたりにとっては『科学が発達した、架空の国での創作物語』であって、私から見てのSF物に相当する。

そして、日本を始めとする世界各国を見物したふたりは、『あ、あれって、実在する国の物語だったんだ!』とか思っていたりして。荒唐無稽な物語や、SF物とかも含めて……。

ならば、ドリルの左腕やロケットパンチもアリだと、本当にそう思っていた可能性が?

……この件には、もうあまり触れないことにしよう……。

しかし、サビーネちゃんが『極道兵器』とか『片腕マシンガール』とかを知らなくて、本当に良かったよ……。

* *

アルシャちゃんは、まだ傷が完全に塞がって治るまでは通院が必要だけど、ある程度は治り、感染症とかの心配はなくなった。

なので、退院させて、いったんヴィボルト侯爵家の王都邸へ戻した。

雑貨屋ミツハへ転移し、そこから私とコレットちゃんが付き添って……。

コレットちゃんは、私の予想通り、年の差なんか関係なく、アルシャちゃんとすごく仲が良くなっていた。

……まぁ、『主のためなら命も惜しまない仲間』だもんねぇ、そりゃ話が合うか……。

共鳴して、増幅し合ったりはしてないよね?

これからも、交流を続けそうな感じだなぁ……。

いや、別に構わないんだけどね。

王都でも、コレットちゃんが私とサビーネちゃん、ベアトリスちゃん以外のお友達を作るのは、いいことだ。

……というか、まだアルシャちゃんの通院は続くし、義手の訓練が始まれば、最初のうちは 地球(むこう) で色々と教わりながら、ということになるから、まだまだコレットちゃんには通訳をお願いしなきゃなんないけどね。

但し、義手の構造や取り扱い、その他技術的なことは、コレットちゃんには通訳できないだろう。

そこは、私がやるしかない。

モーターのことや、バッテリーのこと。充電ということの意味。そして、電気というものについて。

モーター部分やバッテリーを水洗いされたりしちゃ、堪らないからね。

まあ、とにかく、そういうわけでアルシャちゃんを送り届けたわけだけど……。

……凄い歓迎ぶりだったよ、うん。

ヴィボルト侯爵御一家全員と、使用人達。そしてクルバディ伯爵御一家と使用人達。

まるで、国王陛下の行幸をお迎えするみたいだったよ……。

そして何と、領地からアルシャちゃんの御家族がやって来ていて、一族の誉れだとか何とか、アルシャちゃんのことを絶賛していた。

……大事な娘が大怪我をしたというのに、喜ぶんかいっ!!

『腕はまだもう一本あるから、もう一度お嬢様をお助けできるな』って、真顔で言ったら本気か冗談か分からないだろうが、このクソジジイ! それでも父親かよっ!!

あ。アルシャちゃんは笑っているけれど、ティーテリーザちゃんが真っ青になってるじゃん!

これだから、人の心を思い遣ることのできない奴は嫌いなんだよ……。

* *

パーティーというわけじゃないけれど、アルシャちゃんの退院祝いの食事会ということで、帰ろうとした私とコレットちゃんも引き留められて、参加することになった。

両家の使用人も、全員参加。

……いや、誰が料理を作ったり運んだりするねん!

あ、臨時に人を雇ったり、他家に協力をお願いしたと?

頼まれた貴族家の御当主様は、『両家の使用人達も全員参加するから』という理由を面白がって、快諾?

そしてお手伝いに来てくれた料理人や給仕のメイド達は、『使用人を参加させる、貴族家の食事会』ということにいたく感動して、やる気満々だったらしい。

……確かに、料理は気合が入っていて美味しいし、給仕も頑張っている。

そして、なぜいるのかな、サビーネちゃん……。

貴族家の、一介の使用人の退院祝い如きに王女様が来ちゃ……。

あ。料理人や給仕が頑張ってるの、これも理由のひとつかな。

王女殿下が参加するパーティーで料理を作ったり給仕をしたりできる機会なんて、王宮で働く者以外には、まずないよねぇ。

しかも、貴族からも国民からも人気絶大の、サビーネ第三王女殿下サマだ。

だから……。

「姉様、それよりも、『救国の大英雄、御使いの雷の姫巫女様』の存在の方が大きいと思うよ?」

……あ、ソウデスカ……。

そして食事会の後、私とコレットちゃん、そして勝手についてきたサビーネちゃんの3人と、ヴィボルト侯爵御一家で、話し合いを行った。……勿論、アルシャちゃんに関することを。

……アルシャちゃん本人は、抜きで……。

ひとつ。アルシャちゃんには、その勇気と功績を讃えて、女神から初級神具である『動く腕』を賜ることとなった。

ふたつ。その腕に神力を補充するための設備も賜るので、小さな物置程度の部屋を用意すること。

みっつ。お日様の光を集めて神力に変換する下級神具を設置する。

よっつ。アルシャちゃんを特別扱いすることなく、片腕が不自由でも務まる配置に就けて、普通に雇い続けてあげてほしい。

当然のことながら、侯爵家の人達に異存はなく、私からの提案というか、お願いというか、……『要望』は、全て満場一致で受け入れられた。