軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

413 招 待 2

「え……」

一瞬言葉に詰まった王様と、口を半開きにした宰相様。

……そして、にっこりと微笑むサビーネちゃん……。

うん、サビーネちゃんは分かってるな。

私が、何を考えてこの質問をしたのか、ってことを。

この国の下級貴族として呼ばれたなら、一応、王様の顔を立てなきゃならない。

……一応、ね。

王様の部下というような立場であり、公僕としての身分で行くわけだからね。

でも、『雷の姫巫女』として呼ばれたならば、今現在 たまたま住んでいる(・・・・・・・・・) というだけの 場所(くに) とは関係なく、最初から最後まで『御使い様』として行動してあげる。

……そうだよ。

売られた喧嘩は買う。それが、我が山野家のポリシーだ。

だから、山野家の最後の生き残りである私は、それを守り、次代に伝えねばならないのだ。

相手に、畏怖に満ちた口調で『あのミツハが、最後の一匹だとは思えない……』と言わせるために。

「この前帝国へ行った時に、良い感じの岩山を見つけておいたんですよ……」

王様、宰相様、そしてサビーネちゃんも、私の言葉の意味が分からず、ぽかんとしてる。

うん、いくらサビーネちゃんでも、ノーヒントじゃ分からないよね。

私の本気の攻撃……転移爆撃や 隕石落とし(メテオ・ストライク) とかは敵側の人しか見ていないし、見た人達も、 何をされたか(・・・・・・) ということは理解していないだろう。

その、 隕石落とし(メテオ・ストライク) に使う岩塊や、上空から降ってくる巨大な円柱状というか両端が尖った棒状の岩というか、そういうものを転移で切り出すのに丁度良い感じの岩山があったから、記憶に留めておいたのだ。

岩山くらいヤマノ子爵領にもあるけれど、岩も資源のひとつだ。何かいい成分が含まれていないとも限らないし、岩山が転移で削られてガタガタになるのも嫌だしね。

だから、帝国の広大な山岳地帯にある、いい感じの岩山に目を付けておいたわけだ。

……先見の明があるよね、私!

かなり上空に転移しても、短時間であれば 宇宙服(スペーススーツ) なしで 船外活動(E V A) (Extravehicular Activity)をやっても、どうということはない。

気圧が低くて体液が沸騰することも、急に水面近くまで上がってきたため眼が飛び出した深海魚みたいになることも、全身が凍り付くこともないはずだ。

……ごく短時間であれば、ね。

「王様、先程の質問のお答えは?」

「あ、ああ……。

向こうが 名指(なざ) ししてきたのは、『雷の姫巫女』としてのミツハだ。

まぁ、一国の王が他国の女子爵を、それも未婚の少女を呼び付けたなどという話が広まるのは、あまり歓迎すべきことではないであろうからな。

なので、特別な立場の者として招くしかあるまい」

うん、納得!

それに、向こうは私のことを 玩具(オモチャ) 扱いしているのだろう、多分。

もし私のことを本当に『女神の御寵愛を受けし愛し子』とか『御使い様』、『姫巫女様』とか思っていたら、こんな無礼な真似はしないよね。

だから、私のことは『士気高揚のために神輿として担ぎ上げられただけの、ただの下級貴族の娘』だと思っており、茶化して、笑いものにでもする気なのかな?

そして、我が国に恥を掻かせてマウントを取る、と……。

我が国が同盟の議長国になったり、拿捕した超巨大戦艦を保有したり、自国での軍艦建造や新兵器……銃や大砲……の開発の中心となったりしているのが面白くないのかな。

格下国(のび太) のくせに、とか……。

あは。

あはは。

あはははははは……。

「ミ、ミツハ……、怖いから、笑うのをやめてくれ……」

あ、声に出てた?

「じゃあ、私はこの国の貴族としてではなく、『雷の姫巫女』として行動すればいいんですよね?

私が何をしても、それは『女神の御寵愛を受けし愛し子』としての行動であり、この国には一切関係がなく、御迷惑をおかけすることはない、と……。

そして、向こうが要求することは全て拒否し、この国に不利益をもたらすぞ、とかいって脅されても気にする必要はなく、何らかの束縛や強要が行われそうになった場合は、全力で反撃……抵抗しても問題はない、と……」

「問題、大ありだ!!」

「え? それじゃあ、黙って捕らえられろ、と?」

「……いや、そういうわけでは……」

「じゃあ、どうしろと?」

「「…………」」

王様も宰相様も、黙り込んじゃったよ……。

うん、どうしても無理が出るよねぇ、王様の要望を全て満たすという条件では……。

この事態を招いた一因は、私のことが他国に正確に伝わった場合、私の身柄や私から得られるメリットをこの国が独占するのは許せないと言って各国から色々な要求が来るのを防ぐために、私についてはあまり情報を出していないからだ。

帝国との戦いについては、国からの公式発表においては私の関与は大幅にカットされて、兵士の士気高揚のための神輿、旗振り役程度として説明されている。

でも、王都にいた大勢の人達……他国の者を含む……が直接目撃していたわけだから、当然、本当のことも伝わっている。

だから私の評価は、国によって、そして人によって大きく異なるわけだ。

なので、こういった、面白半分での『化けの皮を剥がしてやる!』とかいう連中が現れるわけだよねぇ……。

「行くのは、私単独で、ですよね? まさか国の正規軍を護衛に引き連れて、とかいうわけには行かないし、ヤマノ子爵領にはまともな兵士はいないし……。

まあ、そもそも『ビッグ・ローリー』に随伴できる騎士も歩兵もいないだろうけど」

実際には転移を多用して移動するけれど、表向きは 子爵家(うち) のキャンピングカー、『ビッグ・ローリー』で行くことになる。

いや、それは『この国においての、表向き』であって、向こうの国に対する表向きは、出番の少ない 子爵家(うち) の特製馬車(地球製)で行くことになるのだけどね。

目的地の手前で乗り換えればいいだけのことだ。

街道を 驀進(ばくしん) する『ビッグ・ローリー』を見られたところで、大した問題はないだろう。

既に条約根回しの旅で他国の者達にも見られているし、今回の往路で見られても、その話が向こうの王都に伝わる頃には、私達は既に訪問を終えて帰路に就いているからね。

……うん、問題ないない!

「あ、王様。今回の御招待が、全く悪意のない、本当に御好意からのものだという可能性はありますか?」

「も、勿論あるとも! だから、最初から喧嘩腰で行く必要は……」

「どれくらい?」

「え?」

「その確率は、どれくらいなのですか? 御好意での招待であるという確率は……」

「うむむむむ……」

王様は、顎に手を当ててしばらく考えた後、答えてくれた。

「……まぁ、1割弱、くらいかな……」

「「駄目じゃん!!」」

私とサビーネちゃんの声が揃った。