軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

405 ソロリティ 10

「……よし、次のお茶会で、私が直接話をするよ!」

「え……」

アデレートちゃんの顔色が、少し悪くなった。

いや、そうすればアデレートちゃんとしては助かるのだろうけど、私がそこで何を言うつもりなのか、……そして私が 怒っているのでは(・・・・・・・・) ないか(・・・) 、というのが心配なのだろう。

私は、声を荒らげるようなことは、滅多にない。

そんなことをするのは、せいぜいが、子供達が危険なことをした時か、敵に相対した時くらいだ。

……でも、当然のことながら、アデレートちゃんは知っている。

必要に迫られた時には、ヤマノ子爵家当主として、そして『雷の姫巫女』としての私は、結構厳しく、容赦がないということを。

そう、『わたし、残酷ですわよ』ってヤツだ。

旧大陸(ここ) での私は、新大陸での私とは違って、ただの貴族じゃない。

ここでは、私は貴族家の当主であり、……そして 雷の姫巫女様(・・・・・・) なんだ。

だから、上流階級の少女達の親睦サークルである『ソロリティ』においては、対等の関係であるお友達として和気あいあいとやるのはいいのだけど、『ヤマノ子爵家当主としての私』、『雷の姫巫女としての私』が舐められるわけにはいかないのだ。

これ、逆なんだよねぇ。

ただの、小国の貴族の娘だという触れ込みの 新大陸(むこう) で舐められて、貴族家当主であり雷の姫巫女である 旧大陸(こっち) では丁重に扱われる、っていうなら分かるのだけど、なぜか現状じゃあ、逆なんだよねぇ……。

まあ、お友達との心温まる触れ合いは、 新大陸(むこう) の『ソサエティー』で堪能できる。

だから、肩書きが重い上にメンバーに舐められるなら、 旧大陸(こっち) の『ソロリティ』では、別にそういう関係になれなくても構わないや。

仲良しグループではなく、互いに相手を利用し合うだけの関係。

メンバー達自身が、それを望み、そうなる道を選ぼうとするならば……。

まぁ、私にはサビーネちゃん、コレットちゃん、ベアトリスちゃんがいるし、アデレートちゃんもいる。新大陸には、みっちゃんや『ソサエティー』のメンバー、そして女性事業主国際ネットワークの仲間達も……。

うん、こっちの世界にも、お友達は大勢いるんだ。……決して、ボッチじゃない!

だから、私や、私のお友達と仲良くしたいとは思わない人達とは、利害関係だけのビジネスライクなお付き合いでもいいや。

「…………」

アデレートちゃんは、私の不穏な考えを察知したのか、先程より更に顔色が悪くなっている。

「……いえ、さっきから口に出して喋っているじゃないの!」

あ、ソウデスカ……。

「じゃ、とりあえず、クレームを付けた子、アデレートちゃんへの態度が悪い子達のリストを作ろうか!」

「え……」

うん、まずは対象の分析からだ。

そして、もう少し餌をちらつかせるとするか……。

* *

「サビーネちゃん、ベアトリスちゃん、調子はどう?」

「「…………」」

まだ、駄目か……。

いや、日本式の化粧技術を身に付けてもらうために、サビーネちゃん、ベアトリスちゃん、コレットちゃんの3人に、色々と勉強をしてもらったんだよ。

みんな、まだお肌のことを心配するような 年齢(とし) じゃないし、サビーネちゃんとコレットちゃんは、お化粧で美しく見せかけるというようなことには全く興味を示していなかった。

ふたりとも、日本式の化粧そのものについては、知識としてはある程度知ってはいたんだけどね。

コミックスやアニメとかに出てきたり、日本に行った時に見たりして……。

……でも、これからの都合上、サビーネちゃん、コレットちゃん、そしてベアトリスちゃんの3人には、美容関係の雑誌やらネットの画像、動画やらで、本格的に化粧に関する知識と技術を身に付けてもらおうと思ったわけだ。

アデレートちゃんには日本のことは秘密だし、雑誌や動画を見せるわけにはいかないから、残念ながら 運営側(ゴッドサイダー) ではなく、 普通の参加者(プレイヤー) 側だ。

……そして、ベアトリスちゃんの食い付きようが、凄かった……。

何か、『……勝った……』とか呟いてたよ……。

いったい、何に勝ったのかな? 人生に、とかかな?

そしてその後、サビーネちゃんと共に、うちのベッドに潜り込んで、毛布を被ったまま、ガタガタと震えているのである。

ベアトリスちゃんはともかく、サビーネちゃんまでこうなったのは、ちょっと予想外だったなぁ。

平気なのは、コレットちゃんだけだったよ。

……いや、アレを見せただけなんだよ。

凄い美少女が、化粧を落とす動画。

そして、その状態から、再び化粧をして美少女に戻るやつ。

それを、何本か……。

そうしたら、ベアトリスちゃんが『嘘よ……嘘よ……、あり得ない……』、サビーネちゃんが『おのれ、 化(ば) け 物(もの) ! 姿を変えて、人間の世界に侵入していたのね!!』とか言い出しちゃったんだよ……。

……動画の投稿主さん達、ごめんなさい……。

コレットちゃんは、アニメで観た、妖怪が人間に化けているやつとかと同じだとでも思ったのか、割と平気な様子だった。

でも、ベアトリスちゃんとサビーネちゃんは真っ青になってガタガタと震え、私のベッドに潜り込んじゃってそのまま、ってわけだ。

……うん、まあ、あれはクるものがあるよねぇ。

現代日本の人間である私でさえ、『おのれ化け物!!』って叫びそうになるくらいだもの。

旧大陸(ここ) の文明レベルの者には、ちょっと衝撃が強すぎるよねぇ……。

どうやらふたりが立ち直るのにはしばらく時間がかかりそうだから、孤児の子を呼んで、王宮とボーゼス家王都邸に使いに行ってもらうか。

いや、勿論中に入ったりせず、門番に手紙を渡すだけだから、使いの者が孤児であっても問題はない。

受け取った者はすぐに手紙の差出人の名を確認するだろうから、私からだと分かった時点で、孤児が届けたということについては納得してもらえる。

そして、運が良ければ、使いに行った子はお菓子を貰えたりする。

気の良い門番は、そういう時に備えて、安物のお菓子を何個かポケットに入れていたりするのだ。

この国では、なるべく孤児に小遣い稼ぎの半端仕事を与えたり、その報酬にイロをつけてやろうとする者が多いのだ。

……良い国だよねぇ。それだけでも、この国を護る価値があるよ。

今日はもう、サビーネちゃんとベアトリスちゃんは使い物にならないかな。

よし、じゃあ、コレットちゃんと一緒にアニメでも見るか。

最近色々と忙しかったから、コレットちゃんとふたりだけで、特に何もせずに一緒にぼ~っとしている時間とかがなかったからなぁ。

時には、何も話さずに一緒にいるだけの時間とかも必要なんだよね。

それはサビーネちゃんやベアトリスちゃんも同じなんだけど、まぁ、今日はコレットちゃんと一緒に過ごそう。

家庭サービスは必要だからね。