軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

395 パーティーの開催 3

「いよいよ、今日がミツハの、……いや、ヤマノ子爵家初のパーティーの日か……。

レセプションパーティー、とかいう、よく分からないことを言っていたが、ただ言い方が違うだけであり、普通の社交パーティーのようであるから、そのあたりは問題あるまい。

場所を王宮のホールにしたのは驚かされたが、ミツハとしては上出来だ。

開催場所に困るようであれば 王都邸(うち) のホールを提供するつもりであったが、上手く立ち回ったようだな。

しかし、それにしても、ベアトリスは……」

「ええ。今回はミツハのスタッフとして働く、とか言い出して……。

準備状況や内容は内緒、とか言って教えてくれないし、昨日からミツハのところへ泊まり込んで……」

「まあ、デビュタント・ボールも終えて、一人前の大人、 淑女(レディ) になったのだ。それくらいは好きにさせてやろう。

……しかし、幼い頃は病弱で、色々と心配していた、あのベアトリスがなぁ……。

大きくなったものだな……」

「ええ。大きくなったわね……」

ボーゼス夫妻と、次男のテオドールを乗せて、馬車は進む。

ちなみに、長男のアレクシスは別行動である。

経費節約のため、自分の王都邸は構えずに実家の邸に間借りしているのであるが、貴族家当主としてヤマノ子爵家から正式に招待されているため、実家の馬車に同乗して、というのは面子が立たないと、ひとりで別の馬車を仕立てて、パーティー会場である王宮へと向かったのである。

その気持ちは、よく分かる。

何しろ、招待者がミツハなのであるから。

そして自分の王都邸を構えていないため予算には余裕があり、馬車代くらいはどうということはない。

なので、そんな長男の行動を温かく見守る、ボーゼス夫妻と弟であった。

* *

有名であるボーゼス家の紋章を付けた馬車は、フリーパスで城門を通過した。

衛兵も、別に仕事をしていないわけではない。

救国の大英雄である姫巫女と懇意にし、娘が大聖女(未公認であるが、神殿側が自らそう吹聴している)であり、国防の要衝として大発展を遂げつつあるボーゼス侯爵領の領主。

その顔を覚えていない衛兵などいないし、……それよりも更に有名である、イリス夫人が同乗しているのである。

この馬車を止めて中を検めるというような勇気、いや、自殺願望を持つ者はいない。

そしてボーゼス家の馬車は進み、ホールの入り口前で停止。ドアマンが馬車の扉を開け、ホールへと誘導し案内係に引き継ぐ。

その先には……。

「なっ、何だ、これは……」

王宮の、広いホールに広がった、混沌の世界。

ホールのあちこちにある、人の塊。

上位貴族は、あまり早く会場入りしたりはしない。

大物は、少し遅れて、後から入場するものである。

……勿論、国王陛下より後、というようなことは決してないが。

なので、ボーゼス侯爵家一同が来た時には、同じ侯爵家や、公爵家、王族を除く殆どの貴族が既に来ており、そこへ堂々と入るはずであったのだが……、ボーゼス侯爵だけでなく、 あの(・・) 、イリス夫人が同行しているというのに、ボーゼス家の入室は全く注目を集めることなく、皆にスルーされた。

そして、誰ひとりとして、ボーゼス侯爵達を迎えようとする者がいない。

通常であれば、ボーゼス侯爵達の姿を目にすれば、多くの者達が挨拶のために寄ってくるというのに……。

あの、軍港と軍艦の建造地、そして大聖女ベアトリス様の生家として名高い、ボーゼス侯爵家が、完全無視。

……しかしそれは、別に悪意があってのことではなかった。

ただ単に、入室に気付かれなかっただけ。

しかし、そのようなことがあるだろうか。

かなり目立つ、ボーゼス夫妻と次男の、3人。

そして、案内の者が程々の声量でボーゼス一家の入室を告げている。

なのに、このような催しで、しかも主催者がボーゼス家と懇意にしているヤマノ子爵であるというのに、ボーゼス侯爵家の者が無視されるということなど……。

「……むぅ……」

しかし、侯爵夫妻も次男のテオドールも、すぐにその理由に気付いた。

「皆、別に当家に隔意があるというわけではなく……」

「皆、何かに夢中で、私達の入室に気付いていないか、気付いてはいてもそれどころではない、といった様子ですわね……」

侯爵夫妻が呆れたような顔で呟いた通り、どうやらホール内の者達は皆、 招待者(ホスト) 側の使用人達を除き、何かに夢中になっているようであった。

「招待状には、子供達もお連れください、と書かれていたが……、こういうことか……」

そう。

王宮の、大ホール。

通常であれば、その中央部分はダンス用のスペースとなり、その周囲に並べられたテーブルに様々な飲食物が並べられ、というレイアウトになるはずであった。

しかし今、その広大なホールは、あちこちに謎の物体が配置されており、飲食物が並べられたテーブルは、その間にランダムに配置されていた。

「飲食しながらあれらを見ろ、というわけか……」

「そのようですわね……」

「何なのかな、アレ……」

ボーゼス夫妻と次男のテオドールが、不思議そうに眺める、それらは……。

幼い子供達が、笑いながら転げ回っている、ボールプール。

大きな膜を膨らませた山形のトランポリン、ふわふわドーム。

その他の、エア遊具の数々。

スーパーボールすくい。

ヨーヨー釣り。

射的。

その他諸々……。

「何よ、これ……」

「なっ! あそこで使われているのは、ミツハの国の御神器、『雷の杖』ではないか!

部外者に、あのように無防備に触らせるなど……」

……それは、ただの、射的用のコルク銃である。

見た目はライフル銃そのものであるため、ボーゼス侯爵がそう思うのも無理はない。

しかし、もしこのコルク銃が盗まれて研究されたとしても、殺傷力がある武器に発展させることは不可能であるし、それどころか、確実に間違った方向へとミスリードされるため、ミツハはそれが招待客の手に握られることには、全くの無頓着であった。

その他にも、ボードゲームコーナーがある。

半生ゲーム……『はんなま』ではない。『はんせい』である。

さすがに、そのままの名前にするのは気が引けたらしい。

戦略ゲームは、補給と後詰め戦力の重要性を思い知らせるものがチョイスされている。

花火も用意されているが、それは最後に外に出てやることになっている。

手持ちのものが主であり、勿論、日本の情緒、線香花火も用意されている。

ベアトリスのデビュタント・ボールの時の花火に較べると、ただ同然である。

カード(トランプ)の席も用意されており、その横には遊び方の説明が貼り出されている。

まだ紙があまり丈夫ではないが、一目で分かるような不均一性はないし、何度か使えば交換、という方式にすれば問題ない。

……その方が、たくさん売れるので、ミツハとしては無問題である。

まあ、2組買って、ヨレたり傷付いたりしたカードはもう一組のものと交換、というような方法もあるであろう。

遊具には、購入したものもあれば、レンタル品もある。

しかし、総じて言えることは、……貴族家のパーティーにかかる経費としては、どれも『かなり安上がりである』ということであった。

ダンスのために楽団を用意する必要もなければ、高名な 歌姫(DIVA) を招く必要もない。

……しかし、おそらく来客達は、これらを用意するには莫大な金額が必要であっただろうと勘違いしてくれるに違いなかった。