作品タイトル不明
379 樫の木 6
サビ・コレコンビが散弾銃を肩に掛けたのを確認してから、次の銃……ランチャーを投げる、ミツハ。
ミツハが手にしているのと同じ、FN303Mk2。低致死性セミオートランチャーである。
勿論、サビ・コレコンビもウルフファングの 本拠地(ホームベース) でこれの射撃訓練を行っている。
あまりふたりに人を殺させたくないミツハとしては、こういう武器を使わせたいと考えるのは当然のことであろう。
……いや、本当は、ふたりには武器を使うという機会そのものがないに越したことはないのであるが……。
これで、ミツハの肩に掛かる重量は、自分の予備武器である散弾銃1挺分だけとなった。
肩をぐるぐる回して、ほっとしたような顔をするミツハ。
かなり重くて、キツかったようである。
「……そ、それは、鉄砲……」
「魔砲少女の 杖(ステッキ) です」
先生(シスター) の言葉に、そう返すミツハ。
「いえ、てっぽ……」
「「「魔砲少女の 杖(ステッキ) です!!」」」
声が揃った、ミツハ、サビーネ、コレットの3人。
そして更に、ミツハが駄目押しのひと言を。
「バード・撃ちングに行く時とかに持っていく、魔砲の 杖(ステッキ) です……」
「あ、ハイ……」
そして、『魔法』と『魔砲』の発音の違いに気付かないまま、納得の返事をしてしまった 先生(シスター) 。
((((((撃つのかウォッチングなのか、どっちなのよっっ!!))))))
そしてそう心の中で叫ぶ、クラスメイト達。
「あ、ソイツらが復活する前に、これで縛って!」
そう言って、弾帯に付けているポウチから釣り糸を取り出したミツハ。
そして、サビーネが一旦ランチャーと散弾銃を置いて、それを受け取って男達の方へ。
コレットも、それに続いた。
更にクラスメイト達もそれに続き、それぞれ半分ずつに分かれて、男達を縛り上げる。
いくら女子小学生とはいえ、男達ひとりにつき6人である。もし男達が復活して暴れても、多勢に無勢、押さえ込まれるであろう。
何しろ、それぞれにコレットと忍がついているのである。
コレットプラス、6年生5人。
忍プラス、6年生5人。
……振りほどけそうにない……。
そして忍の指示により、後ろに回した両手の親指を釣り糸で縛ろうとしているが、……糸を切るためのハサミがなくて、困っている様子。
「あ、ちょっと待って!」
そう言って、スカートの中に手を入れて何やらごそごそしていたサビーネが、 折り畳み(フォールディング) ナイフを取り出して、忍に手渡した。
「これ、使って」
「……分かった」
少し躊躇ったあと、ナイフを受け取る忍。
「そ、それは……? それって、銃刀法に違反するんじゃあ……」
クラスメイトのひとりが、恐る恐るそう尋ねると……。
「エンピツ削り用のナイフだよ。にほんの学生はエンピツを使っていると思っていたから、用意していたの。みんなシャープペンシルを使っているとは思わなかったわ……。
私は学生として常にエンピツを削る必要があるから、『社会生活上の地位に基づき、反復継続して刃物を使用することがその人にとって仕事であり、刃物を使うことが業務にあたる場合』という銃砲刀剣類所持等取締法の定義に該当するから、問題ないよ」
((((((嘘だああああぁ〜〜ッッ!!))))))
今、クラスメイト全員の心が、ひとつになった。
そして更に男達の手首と両足も釣り糸で縛った上、他のクラスメイトがどこからか持ってきたガムテープでぐるぐる巻きに……。
絶対に、ほどけそうになかった。
おまけに、口に布切れを詰め込んで、その上からガムテープを……。
口を塞いだガムテープは後頭部を回って何重にも巻かれているため、剥がす時には大量の髪の毛を犠牲にしそうであった……。
更に、状況が分からないようにして反撃を防ぐため、目もガムテープで塞いだ。
剥がす時に、 眉毛(まゆげ) や 睫毛(まつげ) がどうなるのかは、誰も気にしていなかった。
勿論、耳にも詰め物をして、情報を遮断。
鼻も塞いでは、という過激な意見が出たが、さすがにそれは却下された。
「じゃ、みんなはここにいて。私達は職員室に行くから」
サビ・コレコンビも、再び散弾銃を肩に掛け、ランチャーを手にしている。
ふたりもついていくのが当然。それに何の疑問も抱いていない、ミツハとサビ・コレコンビ。
「あ、私がサビーネちゃんとコレットちゃんの関係者だってことは秘密にしてね!
ふたりは、今日はお休みだった。そして私は、突然現れた謎の正義の味方、美少女戦士、コマンドー仮面、ってことで……」
「「「「「「…………」」」」」」
みんなからの返事がないのは、事態の推移についていけないからか、それとも、自分で『美少女戦士』と名乗るという、あまりにも図々しい発言に呆れ果てたからなのか……。
「あ、綾子ちゃん、コマンドー仮面の似顔絵を描かされたら、わざと似ていないように描いてね、思いっ切り美少女にして……」
サビーネが、どうやらこの中で凄く絵が上手いらしきクラスメイトに、そんなことを頼んだ。
「……え? あ、うん、分かった!」
さすがサビーネ、見落としがない。
「……じゃ、行くよ。 特別奇襲隊員(コマンドー) 、出撃!」
「「おおっ!!」」
* *
転移で一瞬のうちに行くこともできたが、普通に階段を使って職員室へと向かう、3人。
異常事態においては、電源が落ちたり制御室で操作されたりして閉じ込められる可能性があるエレベーターを使用するのは、愚策である。
時間が切迫しているならばともかく、教室での異変を悟られている確率は非常に低い今、そう急ぐ必要はない。連中は、犠牲者が選ばれ、連れてこられるのをのんびり待っているはずである。
……それに、3人が打ち合わせする時間も必要であった。
先程撃った6発分のサボット弾をドラムマガジンに補弾しつつ、これからの作戦をサビ・コレコンビに説明するミツハ。
「職員室の前に着いたら、私は連続転移でマンションに戻って、段ボールに入って職員室の隅っこに出る。そしてコンマ数秒で敵の位置と状況を確認して、弾丸と刃物、薬品、その他危険物と共に雑貨屋ミツハに転移して、それらを置いてここに戻る。それから、カチ込み。
部屋の隅に段ボールが無音で現れてコンマ数秒で消えても気付く者はいないと思うし、もし気付かれたとしても、どうということはないしね。
何も反応できないうちに消えるし、そのことを仲間に知らせる前に事態が推移するから。
今回は、危険回避のため、銃に装着されている弾倉、薬室内の弾丸、予備の弾倉とかも全部転移させるから、その瞬間に異常に気付かれるよ。
だから、私が戻ったらすぐに3人一緒にドアから突入。後ろの者もすぐ射撃が開始できるように、先頭の私と2番手のサビーネちゃんは中に入ってすぐに立ち止まらず、少し先まで駆け抜ける。
ふたりに中の様子を教える時間はないから、私が撃つのに続いて自分の判断で敵を捕捉、ランチャーで撃つこと。
こっちの 弾(たま) は、15発かける3挺で、45発。敵は6人。敵ひとりあたり7発半。
超至近距離での奇襲。撃ち返される心配はなし。落ち着いて撃てば、半分くらいは当たると思う。
注意するのは、 味方撃ち(フレンドリーファイア) をしないことと、敵の頭部、首、喉にはなるべく当てないようにすること。OK?」
「「 了解(コピー) !!」」
勿論、サビーネとコレットを護るだけなら、このままふたりを連れて転移すれば済むことである。
余計な危険を冒す必要などない。
……しかし、職員室で人質になっているのは、ふたりの友人達と先生である。
名も知らぬ異国からの、ほんの一時的な留学生サビーネとコレットの友達になってくれた、心優しき、可愛い少女達。
彼女達を見捨てて、……いや、サビーネとコレットに 彼女達を見捨てさせて(・・・・・・・・・・) 、ここから立ち去ることなど、できようはずがない。
ならば……。
「あとは、敵を殲滅するのみ!」
「「 了解(ラジャー) !」」
サビーネとコレットは、『普通の留学生』を一時休止し、『戦う王女様』と『ヤマノ子爵家家臣候補』に戻った。
罪無き平民達を護るためなら危険をも 厭(いと) わない。
『 高貴なる(ノブレス・) 者の義務(オブリージュ) 』を果たすために……。