軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

334 婚 約 3

……何とか、逃げ切った……。

いや、ボーゼス家の応接の間で侯爵様とふたりきりで話していたんだけど、お出掛けしていたイリス様とベアトリスちゃんが帰ってきたため、話が打ち切られたのだ。

ふたりきりだとああいう話を振ってきた侯爵様も、さすがにイリス様とベアトリスちゃんの前で、他家の女性に無理矢理年齢を言わせようとすることは不可能だ。

……助かった……。

しかし、私が成人しているということは、私が帰ると同時にイリス様に伝えられるだろう。

そうなると、パーティーの件が現実となってしまう。

そして、主催者が侯爵様だということは、招待客の選定をするのもまた、侯爵様だということだ。

……どんな 恣意(しい) 的な人選が行われるのか、怖いわっ!

でも、本当に、どういう目的のパーティーにするつもりなのだろうか……。

婚約相手を選ぶためのパーティー、という可能性は、ないよね。

今のこの国の政情から考えて、ボーゼス侯爵様が、私をさっさと他家に 嫁(とつ) がせるつもりだとは思えない。勿論、国外へ嫁ぐことなど、論外だ。

大型艦の建造、ライフル砲と榴弾、ミニエー銃か後装式ライフル銃、船具や工具、その他諸々の研究開発には、私と、 私が連れて来た人達(造船三銃士等) が必要だ。

通訳だって、新大陸語がペラペラで造船関係の専門用語も知っている私がいないと、込み入った問題が発生した時には困るしね。

だから、侯爵様としては、他国は勿論、他の派閥、そして同派閥の者達でさえ、私には若い男性を近付けたくないはずなんだよねぇ。

いや、そもそも、いくら侯爵様が私の後見人だと言っても、私は独立した貴族家の当主なんだから、ボーゼス侯爵様に勝手に結婚相手を決められたり、婚約を強要されたりする筋合いはないよね?

そんなの、他の貴族家への干渉であって、越権行為だ。

私が成人していると分かったなら、後見人の必要はないよね?

そして、いざとなれば王様に、『ヤマノ子爵家に対して勝手な事を強要されて困っている。後見人から外してくれ』ってお願いすれば、なんとかなるだろう。

それに、私が助けを求めれば、他の派閥の貴族からボーゼス家に対する非難の声が出て、私を擁護する動きが出るはずだ。以前、ボーゼス侯爵が危惧していたパターンだね。

いや、別にボーゼス侯爵と喧嘩したいわけじゃない。

でも、意に染まぬ結婚を強要されるなら、話は別だ。

貴族の娘は、自分の意志ではなく、お家の為に結婚する?

いや、それは『家長の判断に従う』ということだ。

……そして、ヤマノ家の家長は私であって、ボーゼス侯爵様じゃない。

うん、私の婚約や結婚は、家長である私が決める。この国の慣習としても、それがあるべき姿だろう。

……そもそも、ボーゼス侯爵様は、何のためにパーティーを開こうとしている?

その一。

私にはまだ、結婚どころか婚約の意志すらない、と広く周知させるため。

あ、勿論、実は私が既に成人年齢を迎えていることを公表したりはしないだろうけどね、侯爵様……。

その二。

誰か、 当て馬(ダミー) を立てて、私には既にお相手がいると思わせて、 諦(あきら) めさせる。

……但し、これには侯爵様が言われていたように、後で婚約を破棄や解消した場合、本人や家名に傷が付く可能性があることだ。

これには、特に女性である私の方に大きなダメージがあるそうな……。

その三。

何らかの方法により、みんなに、私とは結婚したくないと思わせる。

その二とその三の欠点は、何年か経って、私がそろそろ結婚してもいいかな、と思った時に、結婚してくれる相手がいない、という危険を伴うことだ。

……マズいよねぇ、それって……。

いや、この世界ではなく、地球で結婚するなら関係ないか?

うむむむむ……。

* *

「何ソレ!」

サビーネちゃん、激おこ。

「ミツハ姉様は、お兄様かルーヘンと結婚することになっているでしょうが!!」

「いや、初耳だよ、そんなの! そもそも 王太子殿下(お兄様) とは碌に話したこともないよ!」

「……じゃあ、ルーヘンと! そうなると、私の方がお姉さんで、ミツハ姉様が妹か……」

「オイ! オイオイオイオイオイ!!」

サビーネちゃんに、私の年齢のことは伏せて、ボーゼス侯爵様から私の婚約絡みで何やら強要されそうだということをチクった結果、おかしな方向へと飛び火した。

いや、サビーネちゃんなら、私の婚約とか結婚とかいう話になれば、絶対に猛反対してくれると思ったんだよ……。

ボーゼス侯爵様は王様に弱く、王様はサビーネちゃんに弱い。

ここで、ゲームであれば『サビーネちゃんはボーゼス侯爵様に弱い』となるところだけど、現実では、サビーネちゃんはボーゼス侯爵様より強い。

……つまり、サビーネちゃんが無敵カードだということだ。

なので当然、サビーネちゃんを味方にしようとしたところ、これである。

「いや、とりあえず 生(ナマ) 、じゃない、とりあえず今は、ただ今回の婚約関連の話を潰して欲しいだけだから!」

そう。今、私がサビーネちゃんに期待しているのは、それだけだ。

「ところで……」

あ、サビーネちゃんのこの表情と喋り方……。

これ、アカンやつや!

「ミツハ姉様、今、何歳だっけ?」

「げえっ!」

貴様、知っているな!

……そう、頭のいいサビーネちゃんが、ボーゼス侯爵でも気付いたことに、気付いていないわけがない!

「初めて会った時、私の方が身長が低かったよね、15~16センチくらい……。そして今……」

サビーネちゃんが、自分の頭と私の頭に手をかざして比較している。

サビーネちゃんは、その年齢の平均身長よりは少し小柄なのだけど……。

「今は、もうすぐ追いつくくらいに……。

ということは、つまり……」

あああああああああ!!

「ミツハ姉さまは、あれから全然成長していない。……ということは、初めて会った時も、見た目通りの年齢じゃなかった、って可能性が……」

「ギブ! ギブギブ!! 女性なんだから、歳の話はやめよう! NGワード指定!!」

バタバタと手を振って、無理矢理サビーネちゃんの言葉を遮った。

しかし……。

「……実は、既に300歳くらいで……」

「魔女かエルフかっ! そして、しつけーぞ、サビーネちゃん!!」