作品タイトル不明
323 アイドル大作戦 4
馬鹿受け!!
いや、もう、大盛り上がり!
それも当然、可愛い6~10歳の女の子達が、フリフリ衣装で綺麗に揃ったダンスをしているのだ。……しかも、ネコミミとシッポ付き。
おまけに、衣装も音楽もダンスも、この世界の常識を超越したシロモノ、日本で大人気の某アニメ作品から丸パク……、『オマージュとリスペクト、引用と参考、左右反転』したものである!
一応、『演奏会』なので、子供達にはタンバリン のようなもの(・・・・・・) 、トライアングル のようなもの(・・・・・・) ……但し、菱形……、マラカスもどき、カスタネット……と言うとスペイン人が助走つけて殴りかかって来そうなやつ……とかを持たせている。
メインの音楽は、ステージの後方で本体組が 奏(かな) でているので、あくまでも『演奏している』という言い訳、こじつけのためだ。これは『演奏会』であって、ダンス大会じゃないからね。
……でも、そんなの関係ない!
別に、入賞を目指しているってわけじゃないんだ。
子供達(みんな) が楽しめて、幼年組のお披露目ができれば、それでいい。
この催し自体も、パトロン確保を目指しているガチ勢も交じってはいるものの、演奏参加者の大半は『みんなで楽しもうよ!』という主旨のものだから、文句が出ることもないだろう。
さっき終わった本体組の演奏はともかく、 幼年組(こっち) のが演奏として入選することはないだろうし……。
このあたりの風習では、女性が人前で 膝(ひざ) より上を出した服を着てもいいのは、娼婦と踊り子と10歳以下の子供だけだ。
……背中や胸の谷間は、思い切り露出しても構わないくせに……。
なので幼年組の子供達の衣装は、日本のアニメの少女アイドルユニットや魔法少女物のような、膝を出して、元気いっぱいでヒラヒラしたやつだ。
それが、この世界の常識を超えたパフォーマンスを見せている。
……よし、そろそろ最後の締めだな。
最後は、幼年組みんなで短い歌を歌わせる。
勿論、アニメソングの曲に、こっちの言葉で歌詞を付けたやつだ。
ふはは、著作権も、著作者人格権も、そしてJ〇SR〇Cの魔の手も、ここまでは届くまい!
* *
……終わった。
完璧の母!!
「我が生涯に一片の悔いなし!!」
「ミツハ、死んじゃ駄目だよ!!」
コレットちゃんに、そう言って肩を掴まれ、身体を揺すられた。
「ギブ、ギブ!!」
コレットちゃんの攻撃は、私には効きすぎる!
「え、もっとやれって? ミツハ姉さま、そういう趣味?」
「違うわ~い! 『ギブミー』と違うわ、『ギブアップ』の方じゃ~い!!」
サビーネちゃんに、そう言って突っ込んだ。
いや、ふたりとも、英語はまだ完璧じゃないから……。
コレットちゃんとサビーネちゃんは、演奏会の撮影要員として連れてきている。
うん、幼年組の晴れ舞台、記録せずにいられるわけがないよね!
後で、貴腐人店長に編集をお願いしよう。
なぜだか、そういうのが得意なんだよね、店長……。
幼年組はさっさとステージからハケて、それに続いて本体組が楽器を担いでハケる。
次の番の人を待たせたり、時間が食い込んだりすると迷惑をかけちゃうからね。急がなきゃ。
但し、高価な楽器を傷めないよう、細心の注意を払って……。
楽器は地球でも高いけれど、この世界じゃ、それどころじゃない価格だ。
これもまた、平民が音楽家になりづらい理由のひとつらしい。
日本ですら、楽器ひとつが数十万とか、百万超えとか、普通にある。それが、この国だと……。
ブルブル、恐ろしや……。
そして気の毒だったのは、 ソサエティー(うち) の後に演奏した、3チーム。
本体組と幼年組の大盛り上がりの余波が収まりきらないうちに演奏する羽目になったものだから、観客は碌に聴いちゃいなかった。
次の演奏が始まっても、観客同士で先程の演奏……というか、何というか……についてあまり声量を抑えることなく喋っており……、ホント、申し訳ない!!
……まぁ、その枠は既に有力貴族や大商家の商会主とかがパトロンに付いている連中であり、本当にパトロンやスポンサーを求めている貧しい音楽家の卵達の演奏はソサエティーより前に終わっていたから、問題ないない!
ソサエティーのパトロンに、なんてことにはならないから、支援を求める音楽家の邪魔をすることもないだろうし……。
本体組の曲を聴いて、創作意欲が刺激されればいいね、うん!
……でも、アニメの主題歌や劇中歌をヒントにしてクラシックを作曲するんじゃないぞ!!
……そして、曲は素晴らしかったものの演奏技術は稚拙であった本体組も、人気は抜群だったけれど『演奏』としては邪道であった幼年組も、正規の入賞は果たせなかった。
いや、当然のことなので、別に誰もガッカリしたりはしていない。楽しかったから、みんな充分満足していた。
メンバーの御家族なんか、涙ぐんでたよ。引っ込み思案でおとなしく、覇気がないと心配していた娘の、元気で楽しそうな姿が見られた、って……。
あと、何か、特別賞を貰った。
本体組が『作曲家新人賞』、幼年組が『天使賞』。
どちらも、用意されていたやつじゃないらしい。
正規の賞を与えるには演奏技術が稚拙すぎるけれど、あれだけの人気と、そしてこれからの音楽界に多大な影響を与えそうな斬新な曲とダンスに何も賞を与えなければ、後にこの演奏会の審査員達の眼が節穴……というか、耳が通気口だと非難されそうだと、大慌てで特別賞をでっち上げたらしいのだ。その場で……。
そして、本体組と幼年組の人気と知名度にあやかるべく、スポンサーもその場でそれを了承したとか……。
うん、さすが、 金持ち(スポンサー) は、しっかりしてるなぁ……。
* *
「ミツハ様、私達も幼年組のようなことができませんかしら?」
「あ、それ、私も思っておりましたわ!」
「私も!」
「私もですわ!」
「……え?」
演奏会が終わった後の最初のソサエティー本体お茶会で、メンバーの間からそんな要望が湧き上がってきた。
「え、いや、私達の年齢だと、膝を出したり派手に動き回ったりするのはマズいんじゃあ……。
特に、貴族の御令嬢とかだと……」
「「「「うっ……」」」」
本当に、何を言い出すのやら……。
「……いえ、別に膝を出した衣装でないと駄目だというわけではありませんわ! ちゃんと品位を保った衣装で、ひらひらとして可愛いものにすれば……。
そしてあんなに跳ね回らなくても、もっとお 淑(しと) やかに、楽しくすれば……」
「そうですわよ! いけますわよ!!」
……どうしてみんな、そんなに乗り気なんだ?
「あの~、何かありました?」
「「「「「「…………」」」」」」
ありゃ。これは、何かあったな、絶対に。
「ミツハさん……。本当にご存じないのですね……」
おお、困った時の、みっちゃん頼み!
「あの演奏会の後、幼年組の子達が大人気で、パーティーの 演(だ) し物として是非来て欲しい、とかいう類いの申し込みが殺到しておりますのよ……。
うちに来た申し込みは私がお断りの返事を出しておりますが、中には幼年組の子達の御両親宛に依頼する方達もおられまして、お家同士の力関係とか人脈とか派閥とかで、断りづらいところもあるらしく、困っておられるとか……」
「え? だって、あれは大勢が揃ってこそ見栄えがするものだし、現時点では伴奏……と言い張っているメインの音楽が演奏できるの、 本体組(うち) だけじゃないの。個人に頼んでどうするのよ?」
そう、明らかに無理があるだろう。
「御両親や本人が困って、 本体組(上層部) に泣き付いて頼み込む、というのを狙ってでもおられるのではないでしょうか……」
「あ~……」
納得……、って、いや、待てよ?
「それは分かったけど、それが 本体組(わたしたち) が幼年組の真似をすることと、どういう関係が?」
「「「「「「…………」」」」」」
「それはですね……」
みんなが黙り込んでいるため、再びみっちゃんが説明してくれた。
「皆様、御自分達ももっと幼年組の子達のように持てはやされて、ちやほやされたいだけですわ!」
なんじゃ、そりゃ~!!
「聖女とか呼ばれて絶大な人気があるのに、年少者に嫉妬して、もっとモテたいんか~い!
面倒事に巻き込まれて困るだけだということを見聞きして知っていながら、その道を選ぶんか~~いっっ!!」
私からの、あまりにもストレートな指摘に、黙って俯くメンバー達。
「いえ、その、そういう面が皆無とは申しませんけど、本当のところ、幼年組の子達、とても楽しそうでしたので……」
少し顔を赤らめながらそう言ったのは、幼年組 計画(プロジェクト) を提案した、ダラツ伯爵家次女のセルミアちゃん。
う~ん、確かに、ここは地球に較べて娯楽が少ない。
そして更に、男子ならばともかく、貴族の御令嬢がごく僅かでも危険を伴うようなことをさせてもらえるわけがない。怪我をしたり、顔に傷が付いたりすれば、 貴族の娘(政治の道具) としての価値が激減してしまうのだから……。
つまり、スポーツ競技、狩り、武術とかは、余程寛容で変わり者の当主でない限り、息子には積極的に鍛錬させても、娘にはまず許されることはないらしいのだ。
御令嬢は、邸から殆ど出ず、 家庭教師(ガヴァネス) から勉強、行儀作法、音楽、絵画、縫い物……将来自分が縫い物をすることなどあり得そうにないのに、なぜか貴族の娘の必須履修項目。何か、 謂(い) われがあるのだろう……等を叩き込まれる。
ちなみに、 家庭教師(ガヴァネス) には教え子を叩く、おやつや食事を抜く等の罰を与える権限があるそうで、かなり恐れられている模様。
みっちゃんでさえ、その話題になった時には顔を引き攣らせていたよ、うん。
爵位が高いほど、教育は厳しく、及第点のラインが高いそうだ。
……ま、そりゃそうか。
そして領地邸にいる時は勿論、王都邸に滞在している時でも、歳が近くて気が合って、派閥的にも親の爵位的にも問題がない、利害関係を気にせず自由に話せるお友達なんか、そうそういるはずがない。
……その目の前にぶら下げられたのが、『ソサエティー』なんだよねぇ……。
仲間達と一緒に、目標に向かって活動する楽しさ。
そして、それをやり遂げる喜び。
我がソサエティーのデビュー戦である、シーレバート伯爵令嬢、カーレアちゃん支援作戦。
ウェンナール男爵領(チェリリアちゃんのところ) 救援大作戦。
演奏会を目指しての、幼年組の世話をしながらの慌ただしい日々。
……その他諸々、楽しかったのだろうなぁ……。
「いや、それ、ただみんながアイドルごっこをしたいだけじゃん!!」