軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

284 報 復 1

……わたし、残酷ですわよ。

うん、私は別に殺人や犯罪が好きなわけじゃない。

でも、私や仲間がその犠牲になるのを指を 咥(くわ) えて見ているつもりはない。

人の命は皆、平等?

いやいや、凶悪な殺人鬼と可愛い幼女、どちらか片方しか助けられないときに、悩む者がいるの?

ナイフを構えて突っ込んでくる者の命を尊重して、無抵抗で自分や家族を殺させてあげる?

ないない!

……命を尊重してもらえるのは、自分も命を尊重する者だけだ。

なので、商売というものを尊重せずに理不尽な手段を使う者には、こちらも同じく、理不尽な手段で対抗してあげよう。

いや、相手と同じ土俵で戦うつもりはないし、その必要もない。

暴力は使わず、粛々と事を進める。

その中に、一部、 理不尽なこと(・・・・・・) が含まれるだけだ。

さあ、今夜はみんなで、パーリナイッ!!

* *

深夜にやってきました、お馴染み、エノバ商会。

売り場に灯りがないのを確認して、店内へ連続転移。

そして全ての商品を陳列棚ごと引き連れて地球、店内へと連続転移。

但し、戻ってくる時には、元の位置より数メートル高い位置、天井ぎりぎりに……。

どんがらがっしゃ~~ん!

よし、脱出!

そういうのを、その後5回繰り返した。エノバ商会と繋がりがある商店の内、タチの悪いところ5店を選んで。

かなりの音がしたから、あの後、大騒ぎになっただろうと思う。

私はさっさと日本の家に帰って寝たから、知らないけどね。

* *

「ラルシア、反撃開始だよ! 敵が確定したから、潰す!」

翌朝、ラルシア貿易を訪問。そして、ラルシアに戦闘開始を告げた。

「え? それって、どういう……。

あ、いえ、ミツハ様がそう言われるのでしたら、調べはついているのでしょう。

でも、この街では奴らに刃向かっても、官憲は……」

ラルシアは 諦(あきら) め顔だけど、そんなの関係ない!

「ん? 官憲なんか関係ないよ? 潰すのは、お 上(かみ) に訴えて、っていうのじゃなくて、商売的に潰す、ってことだよ。信用できないところ、相手側の息がかかっているところを当てにするんじゃなくて、自分と、自分が信用している仲間達の手によって……。

ラルシア、あなたいつから『女性事業主国際ネットワーク』がただの親睦団体だなどと錯覚していたの?」

「……」

「…………」

「………………、はいっ!」

「よぉし、いい返事だ! それじゃ早速、各部へ連絡するよ。『女性事業主国際ネットワーク』への連絡は、私から。国内の商店や取引先には、ラルシア貿易から連絡するよ。告知文の案は、これ」

そう言って、事前に作成しておいた案文をラルシアに渡す。

そして素早くその内容に目を通したラルシアが、にやりと笑った。今回の件でここへ来てから、初めて見るラルシアの笑顔。

……勿論、飛び切り 邪悪なやつ(・・・・・) ね。

* *

午前中のうちに、街中に噂が広まった。

……そう、『六つの商店で謎の怪奇現象が起こり、売り場が滅茶苦茶になった』という噂が……。

そして、なぜその六つの店に異変が起きたのか。

その店には何か共通点があるのか。

人間の仕業なのか、悪魔や魔物の仕業なのか、……それとも、神罰なのか……。

一般の者達にはそれらの店の共通点は分からないが、商業関係者には一目瞭然であった。

……タチの悪いことで有名な大店と、その取り巻き的な中規模商家。

しかし、多くの恨みを買っているであろうことは予想できても、とても人間の手で短時間に行えるとは思えない破壊行為を、ほぼ同時刻に六カ所で行えるとは思えなかった。それも、目撃者がひとりもいないという神出鬼没、かつ人間業とは思えない一瞬での破壊行為を……。

そしてその翌日、王都中の商店に手紙が届いた。ラルシア貿易の従業員達が直接配って回っての配達である。

前日に従業員が総出で宛先書きをしたり配達先の割り振りをしたりして準備したものである。

手紙は、ミツハ原案のものをラルシアと検討して修正、そしてラルシアが清書したものをミツハが地球に持ち帰りコピーしたものである。

その手紙を受け取った商店主達は、驚愕に目を剥いた。

そこに書かれていたのは……。

ラルシア貿易が襲われて被害を受けたこと。

なぜか(・・・) 、襲った者達はお金や高額の商品を奪おうとはせず、ただ商品を破壊し、商会主と一部の店員を殺傷しただけで引き揚げたこと。

ラルシア貿易は自己防衛のため、次に示す商店及びそこと取り引きをしている商店と個人に対し、一切の商取引を行わないこと。

そしてそれに続き、六つの商店の名が挙げられていた。

昨夜から何度も耳にした、六つの商店の名が……。

* *

「何だ、それは!!」

いらいらしながらぐちゃぐちゃになった売り場の修復作業を指揮していたエノバ商会の商会主は、報告してきた番頭を怒鳴りつけた。

「いえ、ただ向こうがそう知らせてきただけですので……」

商会主に反論することなど許されないが、報告は正確にしなければならない。いくら優れた商売センスを持つ商会主であっても、入力された情報が誤っていては正しい判断はできない。コンピュータと同じである。

なので番頭は、ここは怒鳴りつけられるのを承知で、ゴマすりのために報告内容を勝手にマイルドに改変することなく、そのまま伝えたのである。

そして商会主は、悪党ではあるが、そういう部下を左遷させたり無下に扱うことはなかった。

その、番頭からの報告の内容は……。

「一方的に、うちとの取り引きを中止するだと! しかも、同様の通告が王都中の商店から次々と届いているだと!

なぜだ! どうしてそんなことになっておる!

確かに今回の謎の事件で多少の被害が出たが、たかが本店の売り場が破損し、展示商品が少々駄目になっただけだ。そんなもの、 商会(うち) にとってはかすり傷にすらならん。

この程度のことでうちの屋台骨が揺らぐことなどないということは、誰にでも分かることだろうが!!」

「そ、そう言われましても……」

確かに商会主の言う通りであるが、通知が来てしまっているものはどうしようもない。

比較的若手の番頭のひとりに過ぎないその男に、その理由が分かるはずがなかった。

ラルシア貿易からの手紙は、問題の6つの商店には届けられていない。なので、彼らはまだ他の商店がなぜそのような行動に出たのかを知らなかった。

あの手紙は、受け取った者が、明らかに『ラルシア貿易は、自分達を襲ったのが何者であるかを知っている』と考えるであろう文面であることも。

……そして手紙を受け取った全ての商店が、ラルシア貿易が全力で反撃に出たのだな、と考えたことも……。

火中の栗には手を出さない。

そして、わざわざ 今の売れ筋(ヤマノ領産の) 商品を仕入れるルートを断ち切る必要もない。

普通の商品の仕入れ先は、エノバ商会の他にもある。表立って敵対するのであればともかく、しばらく取り引きを中止するだけである。

また、それが自分の店だけであればともかく、王都の、いや、国内の商店の大半が同じ対応をすることはほぼ確実であるため、自分達の店だけが報復的な何かをされる心配もない。

ならば、何の遠慮をすることもない。

これは商売の一環であり、自分達は商人なのだから……。

そして数日後、エノバ商会の者達は知ることとなる。

周辺諸国の商店からも、同じような通告が次々と届き始めるということを……。