軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

277 戦後処理 3

そういうわけで、レミア王女の思惑通りにイベントは進み、傭兵さん達も大満足。貴族や軍のお偉いさん達も、私達と、私達に強力なコネがあるらしいと認識されているレミア王女に文句を言うつもりはないらしい。

ま、ただでさえ大同盟の盟主役を務めているうちの国の王族に強い影響力を持っていると思われている私が、 天(あめ) の 浮舟(うきふね) を始めとする謎の神具と神兵様を手下に従えているとなれば、喧嘩売るヤツはいないよね。

じゃ、最後の仕上げだ。

あ、祝賀パーティー?

出ないよ、勿論。

腹に 一物(いちもつ) がある貴族や軍人達に囲まれてのパーティーとか、何の懲罰やねん!

そして、ここの言葉が喋れない傭兵のみんなも食べる以外のことはできないし、殺到する貴族や軍人からの言葉を全部私が翻訳するのも無理がある。

そういうわけで、 儀式(イベント) をこなした後は、さっさと引き揚げだ。

勿論、レミア王女とは調整済み。

祝賀パーティーでは、レミア王女の 独り舞台(ワンマンショー) だ。

そこで、色々と吹きまくって政治的な点数を稼ぐらしい。

ま、それには私達がいると邪魔だよね。

「では、皆様、ごきげんよう!」

腰の辺りに腕をくっつけて、手首から先だけを軽く振って、と。

多分、私達が消えた後、謁見の間が少し騒がしくなると思うけれど、それを見られないのはちょっと残念だ。

勿論、この国の首脳陣の前で転移するのは、姫巫女様と神兵様の奇跡の力の駄目押し。

そして、私達に敵対したりおかしな真似をしたりすると、いつでもどこにでも神兵様が現れる、ということのデモンストレーションだ。

いくら護衛の兵士で身を護ろうとしても。

寝室で。浴室で。食卓で。トイレで。

いつでもその背後に現れ、すっと首筋に走るナイフの刃。

皆さん、色々と楽しい想像をしてくれることだろう。

……よし、転移!

* *

「これで、この件は一段落か……」

今回帝国が侵攻に踏み切った理由は、まあ、前回のうちの国への侵略失敗の失点を挽回したかった軍部とか、財政難でアップアップの財務官僚とか、王族の面子とか、貴族の思惑とか、色々とあったのだろう。

前回のうちの国の時は、今回と違い、帝国側の兵士と軍人貴族に大きな被害が出たからねえ。

王都前での戦いではそう酷い被害は出ていないけれど、撤退時の各領主軍による追撃と、帝国軍を『自分達を騙した敵』と判断した魔物達による被害が大きかったらしいし、貴族は身代金目当てで狙われて捕虜になった者が多かったし。

酷いのになると、自分達が雇っていた傭兵に捕らえられて、とかいうのもあったらしい。

多くの貴族家が、捕虜となった当主や息子達の身代金で大打撃を受けたはずだ。

そして、帝国は独裁制だ。

いや、王国も、そりゃ王様が権力のトップだけど、それでも貴族達を無視してあまり無茶なことができるわけじゃない。

帝国は、うちの国やレミア王女のところとかに較べて、明らかに皇帝の権力が強すぎる。独裁者の強行を誰も止められないのだ。下手に諫言やら忠言やらをすると、粛清されるから。

……そりゃ、誰も皇帝に反対できんわ……。

そして、レミア王女の国は政情が混乱していると思われた。

国王の病気、小娘が国王代行、政変による軍部と貴族の大量粛清……。

そりゃ、狙い目だと思うわなぁ……。

そして帝国は、私とレミア王女との約束のことを知らなかった。

雷の姫巫女様(わたし) は、うちの国、ゼグレイウス王国の時ですら、帝国軍が王都に来るまで何もしなかった。

そう、国境から王都までの侵攻経路上の村や町が襲われ略奪され、そして各地の領主軍が時間稼ぎのため大被害を出しながら奮戦していた時、何もしなかった。

だから、 姫巫女(わたし) は 自国の王都(自分がいるところ) しか守護しない、いくら強力ではあってもそれだけの小規模な戦力しか有していないと思われたのかもしれない。

……いや、確かにメチャ小規模だけどね、人数的には。

それに、姫巫女というのは対外的な宣伝用に作られた虚像であり、虚構の存在だと思われていたのかも。

帝国軍の最前縁で直接私やウルフファングを見た者は、兵士全体からすればそう多いわけじゃない。

しかも、そのうちの指揮官や上級士官の多くは死んだり捕虜になったりしているし、逃げ帰った敗残者が言う『敵は常軌を逸した強さだった』、『敵には女神の御加護があった』などという 戯(ざ) れ 言(ごと) を信じる者はいないだろう。

……特に、自国の行動の正当性と勝利を疑ってもいなかった独裁者とかは。

とにかく、うちの国の時でさえそうだったのだから、相互軍事協定を結んでいるわけでもない他国の戦争に虎の子の部隊を即座に出すなどということは、政治的にもあり得ないことと判断されて当然だ。

もし救援の兵を出すとしても、有力貴族達を呼集し、会議をして、もし派兵賛成となれば派出する兵力を決め、指揮官を選び、兵を呼集し、装備や物資を集め、荷馬車より遅い速度で他国へと向かう。

……電撃戦を旨とする帝国軍が王都に到達するまでに、間に合うわけがない。

事実、他国は全て、軍を動かすところまではいっていなかった。 神軍(わたしたち) というイレギュラーさえいなければ、帝国の思惑通りになっていた確率は高かっただろう。

でも、どうして 不確定要素(わたしたち) のことをもっときちんと調査しなかったのかなぁ。間諜とかを使って……。

ま、追い詰められた者が理解に苦しむ選択肢を選ぶことは珍しくない。部外者が憶測で考えても仕方ないか……。

ヘリチームもウルフファングの6人も、充分満足してくれた様子だし、レミア王女の方も、あれだけサービスしたのだから、貴族や軍人、一般国民達の不満も何とかできるだろう。

……というか、私達が関与しなかった場合のことを考えれば、それくらいやって当然だろう。

不満を言う奴らなんか、次に何かあった時に、竹槍持たせて最前線の戦闘部隊の一番前に立たせてやりゃいいんだよ。はっきりそう言ってやれば、少しは好戦的な言動もマシになるんじゃないかなぁ……。

一部の立派な軍人を除いて、貴族の大半は、他人が自分の利益のために死ぬのは何とも思わなくても、自分が他者のために死ぬのは容認できないだろうからね。

一度、立場を入れ替えてやればいいんだ。

さて、予定外の仕事も終わったし、 通常業務(ルーティン・ワーク) を片付けるか……。

* *

「軍人君との顔繋ぎも終わったし、次はレフィリアのところへ顔を出すか……。

しかし、軍人君、出会った時に較べて、随分凜々しくなったよねえ……。アレかな、実戦を経て精強な男の 貌(カオ) になった、ってやつかな。

男の子は、何かの切っ掛けで一気に大人になるからなぁ……」

よし、転移!

「あ、ミツハさん!

大変です、ヴォフテレス王国のラルシア貿易が襲われました! 商品が多数破損し、店員と警備員に死傷者が出たそうです。そして、ラルシアさんも怪我を……」

ぷっつん!

私がレフィリア貿易の提携店とすべく周辺諸国で設立の協力をした、一国につきひとつのヤマノ子爵領特約店。そしてそれらの商会を経営する、若き女性商会主達。

みんな、この辺りの経済に食い込み、収益と情報収集に役立つ、 逞(たくま) しき仲間達だ。

商家に生まれ、才覚があるにも拘わらず、女性だというだけの理由で冷遇され、政略結婚の道具とされるのを待つだけであった女性達。

そして私から与えられたチャンスに全力で食らい付き、耀かんばかりの笑顔で生き馬の目を抜く商業界へと突入していった、勇者達。

その仲間が、理不尽な暴力、犯罪行為により傷付けられた。

年若い女性の肌に、傷が付けられた。

そして、大事な従業員に死傷者が出た。

「……あは」

「……み、ミツハさん?」

「あはは……」

「あ、あの、ミツハさん……」

「コノウラミハラサデオクベキカ……」

「ぎゃあああああ~!!」

「……で、詳しく聞かせてもらおうかな……」

「は、はいぃ!」

そして、笑顔の私に怯えきったレフィリアが話してくれたのは……。

* *

「ふむ、ぽっと出の小娘が周辺諸国で評判のヤマノ子爵領の商品を独占しているのが気に入らない連中の仕業らしい、と?」

「はい。以前から仕入れルートを寄越せ、としつこかったらしいのですが……」

レフィリア貿易も、以前一度襲われたことがある。

しかしこの国は私の滞在国だし、今回とは話が違う。

あの時は、一応手加減した。

警備員が少し怪我をしただけで、一応向こうも最低限のところは踏み越えなかったからね。

私が直接手を下したのは、奪われた商品プラスアルファを回収したことだけだ。あとは、ヤマノ子爵家に 忖度(そんたく) した各部が勝手に調査して、然るべき対処をしてくれただけ。

……でも、今回はそういうわけにはいかない。

大店(おおだな) が生意気な弱小の新米商家を懲らしめて、その儲け口を掻っ攫おうとした。

その点ではレフィリア貿易の時と同じだけど、今回は、あの時とは条件が大きく異なる。

今回はヤマノ子爵家に忖度してくれる警備隊も他の商家もなく、他の商家もひとくち噛ませてもらいたいとばかりに犯人である大店に擦り寄るのが関の山だろう。

ラルシア貿易の味方になるものは皆無。

他の商会も、……そして賄賂でズブズブの官憲も。

「そうかぁ……。

そおぅかぁ……。

そおおぅかあぁ……」

「ひいっ!」

レフィリアが何やら引いているけど、そんなのどうでもいい。

復讐の弾道。

野獣死すべし。

全開(フル・スロットル) で飛ばせ。

裁くのは俺だ。

お兄ちゃんご推薦の、基礎教養のための教本の数々が脳裏に 蘇(よみがえ) る。

見敵必殺。

女性の敵は、許さない。

私の仲間の敵も。

……そして勿論、私の敵も……。