軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

213 輸 入 3

そういうわけで、伯爵様、イリス様と、色々と相談。

「貴族や金持ちのお客さんにたくさんお金を落としてもらうために、高級な宿屋、スーパー銭湯、高価な飲食店等を完備。勿論、平民のお客さんのために、リーズナブルな方も用意します。

そして、海軍関係の観光だけでなく、遊楽地としてリピーターを確保すべく、旅行客にとって魅力的な施設を……」

「すーぱー銭湯、とは?」

私の説明を 遮(さえぎ) って、イリス様から質問が。

「温泉の有無に関わらず、お風呂を楽しめる施設です。まぁ、温泉が湧いているに越したことはないですけど……。

お風呂を、単なる身体の汚れを落とすだけの施設ではなく、健康になるための、そして楽しむためのものとする、私の母国では大人気の施設でして……」

「ミツハの母国で大人気?」

イリス様の眼が、ギラリと光ったよ……。

「は、はい、美容にも良いとされ、女性客が……」

「美容に良い?」

ひえぇ!

いかん、これは、後で催促されそうだ……。

他には、何かないかな……。

日本で、軍港の街がやっている金儲けの方法は……。

軍港巡りの観光船。

いや、そもそもそんな船がないし、動力のない帆船で港内を巡るのは危険だし、そもそも桟橋が2~3個と船が4隻じゃ、見物のために船で巡る必要がない。

カレー?

いや、この辺りじゃ香辛料が手に入らないから、私が地球から運ぶのをやめたら関係業種が一瞬で壊滅だ。却下!

肉じゃが?

うん、それならこの辺りで手に入る調味料だけで何とかなるかも。全く同じでなくても、何となく似た感じのものになればいい。……『 煮(に) た』料理だけに。

芋煮みたいになってもいいか。

ジャガイモ里芋戦争や、豚肉牛肉戦争が起こらないように気を付けなくちゃ……。

あれは、キノコタケノコ戦争のような、洒落で済ませられるようなものじゃないからなぁ……。下手をすると、血の雨が降って、人死にが出るよ。

あ!

「それと、船乗りが航海中に食べる食事を出しましょう!」

「航海中に? そんなに旨いのかね、船乗りの食事というのは?」

「ゲロマズです……」

顔を 顰(しか) めての私の返事に、呆れた顔の伯爵様。

「マズければ、売れないだろう?」

「いえ、問題ありません!」

そう、コクゾウ虫がわいた堅焼きパン、薄い塩味だけの豆スープ、半分腐った塩漬けの豚肉。

とても、他の食べ物がない空腹の者以外が食べようとするものではないだろう。

……しかし、絶対に当たる!

いや、食中毒の、『 中(あた) る』じゃないよ!

人間、珍しいものは食べてみたいものである。『宇宙飛行士が食べる、宇宙食』とか、『南極越冬隊の隊員が食べる食事』とか言われれば、少し高くても食べてみたくなるのが、人間というものなのである。

そして、高いお金を払って出てきたものが、ほんのちょっぴりで、マズくても、みんな『ほほぅ、ああいうところでは、こういうものを食べているのか。ご苦労さんなことだなぁ。まぁ、輸送や保存も大変だろうしなぁ……』と言って、満足してくれるのである。その場所では、別に苦労して運んだわけではなくとも。

軍用の、 戦闘(コンバット・) 糧食(レーション) とか、かなり高いのに買いたがる民間人が結構いるじゃん。ミリオタとか呼ばれる人達だけでなく、ごく普通のおじさんや女性でも……。

そう、それは、『そういうもの』なのである!

海水浴場で食べる、高くてマズい焼きそば。

祭りの屋台で買う、普段であれば絶対に買うはずのない、バカ高いタコ焼きやイカ焼き。そして最後まで食べる者は殆どいない、リンゴ飴。

あの 類(たぐ) いのやつである。

そして最大の利点は、廃棄寸前の豆や、腐りかけた豚肉が商品として甦るということである!

ふは。ふはは……。

「また、何かろくでもないことを考えているな……」

うるさいわ!

そうだ、船乗りの飲食物と来れば、あれを忘れちゃいけない!

そう、ラム酒だっちゃ。

帆船(ふな) 乗(の) りのお酒と言えば、ラム酒しかないよねぇ……。

ラム酒を造るためには、サトウキビを栽培して、廃糖蜜を取り出して……、って、違う!

廃糖蜜は、砂糖を作る時の副産物だ。決して、廃糖蜜を作るためにサトウキビを栽培するわけじゃない! ……多分。

いや、もしかすると、ラム酒目当てで栽培する時もあるかもしれないけどさ、そりゃ……。

とにかく、ラム酒をここで生産するためには、サトウキビが必要だ。

日本でのサトウキビの北限は、確か静岡県あたりだったはず。ヤマノ子爵領での栽培品目検討の時に、そのあたりは調べたことがある。気温も気候も、ギリ、セーフか?

……いや、 ヤマノ子爵領(うち) もボーゼス伯爵領も海に面しているから、潮風が……。

ボーゼス伯爵領は南北にも縦深が深いから、南寄りの場所なら……、って、馬鹿か、私は!

日本のサトウキビ産地って、沖縄、南西諸島、奄美諸島、そして四国の一部とかが有名じゃない! 潮風に弱い作物が、そんなとこで名産になるはずないじゃん!

よし、北限の気温や降水量を調べて……。

「……そろそろ戻ってきなさい」

あ……。

「い、いえ、ちょっと、新製品のお酒の製造について考え込んでいただけですよ! 別に、妄想の世界に入り込んでたわけじゃ……」

「何、新しいお酒だと!!」

……墓穴掘った!

ひ~~ん……。

* *

「そういうわけで、サトウキビです!」

「何が、『そういうわけで』なんですか……」

私の、内政に関することの参謀役であるミリアムさんが何やら言っているが、スルー。

ここには、うちの家臣クラスの人達と、うちの領地にある3つの農村の村長達が集まっている。

漁村と、ふたつある山村の村長は呼んでいない。今回の話は、農村だけにしか関係ないからね。

農村は、3つ合わせれば、町(一応、名目は『領都』。恥ずかしすぎて、そう呼ぶ人は誰もいないけど。……勿論、私を含めて)の人口を上回るという、うちの領地の基幹産業である農業を 担(にな) う、最も重要なもの……だった。

うん、『だった』。過去形だ。

漁業の発展と製塩、山村でのゲーム盤やシイタケ造り、そして町での養蚕・製糸・機織りを飛ばしていきなり始まった被服生産その他の新規産業が収益をもたらし始めるまでは……。

被服生産だけは、私が地球から布地を運ぶのをやめたら壊滅だから、早く養蚕・製糸・機織りを根付かせたいけど、それらは年単位の話だからねぇ。最悪、これがポシャっても大丈夫なように、他の産業を発展させて、町での雇用枠を広げておかなくちゃ……。

ともかく、野菜では既に改革の効果が出始めているものの、小麦の収穫はまだ先だし、いくら改革の効果が出ても、農作物の収穫量が多少増えたところで、いきなり収益が何倍にもなるわけじゃない。

いや、まぁ、収穫トン数だけで言えば、芋の栽培に切り替えたところは『数倍』と言えるかもしれないけれど、それらを換金した収入がそれに比例するというわけじゃない。

それに対して、漁獲高激増、魚介類の加工による商品価値上昇、日保ちが良くなって販路拡大と、絶好調の漁港。遊戯盤の売れ行きは落ち着いてきたとはいえ、シイタケが爆売れで原木の無茶な増加を企む村人達を私が必死で抑えている山村、そして新規産業で沸き立つ領都……町。

そしてそれらを見て、心穏やかではなかったであろう3つの農村の村長達の前に示された、この新規事業計画。それも、高級品である砂糖と、新しいお酒の製造である。

……で、どうなるかというと……。

「その『サトウキビ』とやらの試験栽培は、うちの村がお引き受けしますじゃ!」

「いや、それはうちの村が!」

「何を言っておるか! 成功するかどうか分からない危険なことを引き受けるのは、この領地で一番初めにできた村であり指導的立場にある、我が村の役目じゃ!

安心せよ、お前達の村に危険を冒させるようなことはせぬ。全て、儂らに任せるがよい……」

「「ふざけんな、くそじじぃ!!」」

あ、やっぱり……。