軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209 忙しい…… 1

これで、新大陸の方は、当分いいや。

パーティーは、あの、ふざけた国王親子のおかげで全然出ていないし、レフィリア貿易も『ソサエティー』も、差し当たっては、安泰だ。どちらも、発注されたものだけ届ければいいから、大した手間じゃない。地球での買い付けは、ウルフファングにやってもらっているし。

当初の目的であった、情報収集と『何かあった時に 攪乱(かくらん) 作戦を行えるだけの影響力を得る』ということは、ほぼ達成できたと思う。

私が望めば、軍事機密とかじゃない普通の情報、つまり新天地を求めての探検船団の派遣計画とかの情報は、早期に入手できるだろう。そして、その気になれば、レフィリア貿易と、周辺国に設立させた提携商会、更にヤマノ子爵家の総力を挙げれば、ある程度のロビー活動は可能だろう。

また、そろそろ我が国の艦隊、つまり3隻の 鹵獲船(ろかくせん) による艦隊が稼働状態となるはずだ。

艦名を変え、訓練を積んだ我が国の水兵達によって運航される、艦隊。

3隻しかないのに『艦隊』か、って? 2隻以上あれば、立派な 艦隊(Fleet) だよ!

イーラスが戦線に加わるのは、ずっと先の話だろうなぁ……。

鹵獲時に搭載されていた分しか弾薬がないし、替えの大砲もないから、現状では1回しか戦闘できないけれど、大砲は早急に後装式 旋条(ライフル) 砲を開発して、それに合わせた砲弾や装薬、炸薬等も開発するから、それはいい。少なくとも、まだ数年間は探検船団なんか出さないだろうから、時間的余裕はあるはずだ。

何せ、現在行動中(であるはず)の探検船団が、まだ戻ってもいないのだから。

そして、最終的に戻らなかった場合、金銭的損失と人的損失から、しばらくは次の船団を出そうとはしないだろう。

万一、妨害活動にも拘らず、予想外に早く探検船団が出てしまった場合。

うん、まぁ、あの3隻で迎撃はできるだろう。

私が転移で、常に有利な位置に移動させれば……。

弾薬が少ないから実弾演習ができないのは痛いけれど、まぁ、何とかなるだろう。それに、いざとなれば、少し手の内がバレちゃうけど、私が転移能力で何とかすれば済むことだ。

そう、私が健在であるうちは、そう心配することはない。問題は、私がいなくなった後だ。

だから、造船や大砲の製造とか、新大陸の調査とか、色々と面倒なことをやっているんだ。

私が死ねば、後のことはどうでもいい、というのなら、こんな面倒なことはやらないよ。

……まぁ、コレットちゃんやサビーネちゃん、そして私が関わった大勢の人達のためだから、仕方ないよねぇ。

それに、今では、私の生活拠点はこっちの世界が中心になっちゃっている。

地球には、『用事を片付けに行く』という感じであり、そして、こちらの世界に『戻ってくる』。

……うん、もう、ここが『私の国』なんだ。国王陛下から預かった領地と領民があるけれど、たとえそれがなくたって……。

そういうわけで、しばらく放置していた領地と、王都の『雑貨屋ミツハ』の方を何とかしなきゃ……。

* *

「戻ったよ~!」

チェリリアちゃんのところ、ウェンナール男爵領への輸送作戦の間は新大陸から離れられなかったから、久し振りの領地帰還。

今までは、旅の途中だろうが新大陸や地球での活動中だろうが、適宜、領地邸やら王都の『雑貨屋ミツハ』やらに顔を出していたけれど、今回は完全に新大陸、ヴァネル王国に張り付きっ放しだったから、本当に久し振りの帰還になる。

まぁ、コレットちゃんは連れていってたし、私の領地には、領主の不在を狙って、なんていう命知らずがいようはずもない。

家臣のみならず、領民、領地の左右を挟むボーゼス伯爵領とアレクシス様の子爵領、その他の領地の領主さん達、そして王様や王子殿下、王女殿下達がみんな私の味方なのに、クーデターとか簒奪だとか、成功するわけがない。

盗賊も、うちの領地に向かう荷馬車を襲ったりはしないだろう。

うん、既にここが『雷の姫巫女』の領地であり、私が盗賊や敵には容赦しないという噂が充分に広まっているからね。

そもそも、うちや、うちに向かう商隊に被害が出た時点で、ボーゼス伯爵領やらその他の近隣領地、そして王都から討伐隊が緊急出動するのは間違いない。……それも、おそらくは大幅なオーバーキルとなる戦力で。

既に、元帝国軍の兵士であった盗賊達は、ほぼ一掃されているし……。

そしてうちは、他国と国境を接することもなく、資源があるわけでもない、海で行き止まりになっている辺境の小さな領地。今は子爵領だけど、実際には、男爵領相当の領地だ。……それもかなり収益が悪い部類の……。

うん、まず、狙われる心配はないね。

リスクに対して、あまりにもメリットが少なすぎる。

……まぁ、今から発展させるんだけどね!

既に、仕込みも進んでいる。

「あ、お、お帰りなさいませ!」

転移した自室からコレットちゃんと一緒に出てきた私に気付き、慌ててみんなに知らせに行くノエルちゃん。確か、もう11歳になっているはずだ。最初は無口でおとなしい子だったけど、元気になったなぁ……。

あの、20年分の給金を先払いで親に渡しての、年季奉公という名の、殆ど人身売買に近い契約を強制されそうになっていた、ノエルちゃん。

9歳のコレットちゃんより小柄に見えるのは、やはり、食生活や運動量の差なんだろうなぁ……。

一応、ノエルちゃんの両親は監視対象になっている。

跡取りである長男と、その予備である次男はちゃんと育てているみたいだけど、ノエルちゃんの妹達は、食事も仕事も、息子達とはあからさまに差が付けられているらしい。

……でも、それはこの世界では当たり前のことらしく、いくら領主であっても、そこまで口出しはできない。

まぁ、また人身売買モドキのことをやろうとしたら、その時は、容赦しない。ノエルちゃんの件で、充分に警告はした。二度目の温情はない。

それと、ノエルちゃんに余計なちょっかいを掛けようとした場合。

あの子が貯めて、うちの投資信託に預けている給金を狙ったり。

うちとの関係を持ちたがっている他領の商人の養女にしようとしたり、勝手に婚約させようとしたり。

その場合には、私のベレッタ93Rが火を噴くぜ!

* *

さて、領地の方は……。

漁業は、好調。

農業は、肥料やら植え方やら、様々なことを少しずつの畑で試している実験農場が、そこそこの成果を出している。本格的な導入は来年からだけど、絶対に失敗のない方法は今年もいくつか取り入れているから、今年の収穫もかなりの増収が見込めるだろう。

成長の早い野菜は、既に農法改良後のものが収穫されており、ようやく実際の収穫に繋がり始めたため、農村の鼻息は荒い。

……そして、山村は……。

ゲーム盤関連の売れ行きが落ち着き始め、好調なのは、シイタケ栽培のみ。

そういえば、一時、農村の連中が『シイタケは植物の栽培だから、農村が担当すべきである』とか言い出して、大変なことになったんだよねぇ……。

菌類だとか何だとかは、みんなに言っても理解して貰えないし、以前は農村もまだ目に見える成果が出ていなかったから、即日で収益が激増した漁村を見て、『即時収入となるシイタケ栽培を、自分達の手に!』とか考えちゃった、その気持ちは分かるけど……。

まぁ、それも、私の指示と、作物の生育状況を見て、農村側が 退(ひ) いたから、事なきを得たんだけど……。

とにかく、第一次産業は、漁業以外は改革に時間がかかる。そして、器材に投資するお金も、人材も。

お金はともかく、総人口が700人弱のこの領地では、人材が足りない。

かといって、王都や他領から人を集めるつもりはないよ。

他領の領民を勝手に引き抜いたら、それは違法行為だ。

それに、そもそも、私には領民を増やす気は全くない。

領地の開発は、預かった領地と領民のためにやってるんだ。だから、領地関連での予算は、いくら儲けようが、私の個人資産とは関係ない。全て、『領民のため』という義務感でやってるんだ。

……誰が、 好(す) き 好(この) んで、わざわざ背負う荷物を増やしたがると言うんだ。

しかも、『最初から領地にくっついていた人達』ではなく、うちが発展するのを見てから 集(たか) ってくるような連中を……。

うん、うちは、移民は受け容れない。

私が選んだ、うちの役に立つ技能を持った人以外はね。

そう、第一次産業は、従事しているみんなが幸せに暮らせるだけ儲かればいいや。規模を大きくして、とかは考えていない。

領地としての稼ぎは、第二次産業のうちの、製造業で行うのだ。

できれば鉱業もやりたかったけれど、未だ、価値の高い鉱物資源は発見できていない。

まぁ、こんな小さな領地にそんな資源がある確率なんて、宝くじに当たるようなもんか……。

くそ!

……あ、貿易と転売は、第三次産業か……。

戦争は?

消費するだけで、産み出す 業(わざ) 、『産業』じゃありませんか、そうですか……。

……儲かるのに……。