軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

172 内 政

農業。

このあたりは砂質土壌であることから、他の地方に較べて生産力が低かったが、ノーフォーク農法を導入するには都合が良かった。なので、四圃輪栽式農法ではなく、大麦栽培とクローバーをもう1回追加した、六圃輪栽式農法を導入。

……但し、成果が出るのは、ずっと先。

暫くは、腐葉土とか廃棄物となった魚介類を粉砕したものとかを肥料にするくらいしかない。

でも、爆裂種のトウモロコシとか、換金性の高い作物の生産と、水飴作りは順調。

もうすぐ、試作小型帆船の、ボーゼス港との運航も始まる。そうなれば、高値で作物が売れる。

よし、順風満帆、問題なし!

林業。

植樹の成果なんて、何年先になることか……。まだまだ、自然林がたくさんあるというのに。

しかし、遊戯盤の製作と、シイタケ栽培は順調。製紙も、改良の研究をしつつ、王都への売り込みを開始。順調だ。あと、 楓汁(メイプル・シロップ) が採れる楓の木がないか、探させよう。

製鉄は環境破壊が心配だけど、とりあえず、鉄鉱石を見つけないことには始まらない。予算を組んで、本格的に探鉱事業を立ち上げるか……。

でも、狭い領地だから、そんなに都合良く領内に鉱山があるかどうか……。

無けりゃ、ボーゼス伯爵領で探査させて貰って、鉱石の輸入かぁ。輸送費とか考えると、キツいなぁ。鉄鉱石は重いし、半分くらいはただの石だからなぁ……。やっぱり、砂鉄かなぁ。

漁業。

絶好調。

新たな漁船の投入、日本製の漁網、釣り具で、漁獲高激増。

塩の増産で、塩を使った加工製品も大量に作れ、道路整備と相まって、内陸方面の近隣他領への出荷が激増、王都へも運ばれている。漁網や釣り具は現地生産も始まっており、もし私がいなくなっても安泰だろう。

町。

領主直営店の品物目当てに、他領からの来訪者が増え、宿屋、食堂、商店共に売り上げ増加。

特産品である遊戯盤、水飴、そして姫巫女様人形の売れ行きも好調……、って、何だよ、最後のやつ! 聞いてないよ!

「町の発展が、村に較べてショボいです。一部の店以外は、以前とあまり変わりません。何とかテコ入れをして下さい。村の好調さに較べて、あまりにも差が大きすぎますよ!」

……あ、やっぱり?

内政に関する参謀役のミリアムさんに怒られた。

でも、村は同じ業種の一次産業か二次産業だから生産面でテコ入れができたけど、町は色々な職種があるし、サービス業は画期的な増収は望めないよねぇ。地元の人口が限られるから。

何か、町でやってる二次産業と三次産業に大きな影響が出るようなものは……。

駄目だ、人口が少ない田舎町じゃ、他領から来訪する者が落とすお金くらいしか収入源がない。そして来訪する者達は、うちの特産品目当てで来るわけだから、仕入れや買い物にはお金を使っても、その他のことにお金を使ったりはしない。もっと、こう、買い物目当ての客頼りじゃない収入の 途(みち) がないと……。

う~ん、う~ん、う~~ん……。

「ミツハ、我慢せずに行ってくれば?」

お手洗い我慢してるのと違うわ!

しかも、大きい方我慢してるみたいじゃん、 唸(うな) ってる時にそんな言い方されたら!

いったい、何を言い出すかな、コレットちゃんは……。

しかし、町を発展させるといっても、ボーゼス伯爵領のように、荒くれ者が大挙して押し掛け治安が悪化するとか、人口が急激に増加する、とかいうのは嫌だ。

私の義務は、この領地の人々を守ることだ。それに、金儲けのために他所から流れ込んできた人達は含まれるのか? この領地が災厄に見舞われたり、儲けの旨味がなくなれば、またすぐにここを捨てて去っていくような連中のために、危険を冒し、領の予算を注ぎ込んで守り、生活を向上させてやる必要があるのか?

……ないよね、そんな必要。

私が守り、生活の向上のために頑張るのは、元々からこの領地に住む者達と、この領地の者と結婚してやってきた人達だけでいいだろう。だから、領地の人口が流入者によって急激に膨れあがるのは避けたい。

それに、無許可で他領から流れ込まれたりすると、出奔元の領主からクレームが来るだろう。ルールを破った者達のせいで私が怒られたり、賠償金や交換条件を求められたりするのは、真っ平だ。

じゃあ、どうすればいいかと言うと……。

うん、商売だ!

いや、今やっている、地球から転送で持ち込んだ少量の品物を売るってやつじゃない。

それだと、儲かるのは私と商店関係者だけだ。そして、私がいなくなれば、終わる。

だから、もっと規模を大きくする。

そして、一番大事なことは、商品の出元が地球じゃない、ってことだ。

地球から品物を持ち込むのは、とっても簡単だ。でも、簡単だからこそ、私が自分で課した制約がある。

この世界の発展を阻害しないように。

既存の業種を圧迫し過ぎないように。

不幸な人を生み出さないように。……但し、悪党は除く。

私が急にいなくなっても、困る人があまりいないように。

スカートのプリーツは乱さないように。

白いセーラーカラーは翻さないように。

……って、うるさいわ!

とにかく、必要なのは、『輸出元が、この世界の国』だってことだ。

それならば、異世界から持ち込んだ物や技術によってこの世界が、とかいう心配をしなくて済む。元々、この世界にあった物資と技術なんだから。それを、ちょっと斬新な輸送手段で運んだだけ。

オーケーオーケー、充分許容範囲だ!

そして私がいなくなっても、別に問題はないだろう。その頃までには、工具や技術をパクって、うちの領地で似たようなものを作れるようになっているだろうから。

なので、品物は、小麦とか肉とかの一次産業的なものじゃなく、軽工業的なやつを狙おう。重工業、つまり造船やら、たたら製鉄じゃない本格的な製鉄とかは、国に任せなきゃ駄目だろう。石炭とかも。こんな小さな領地で重工業なんか企んだら、一瞬で自然が破壊されてしまう。そもそも、資源も人間も全然足りないから、お話にもならないけど。

そして、必要なのは、技術者の 招聘(しょうへい) だ。

資源のない小さな領地が栄えるためには、技術力しかない。そして私には、『技術者』にアテがある上、輸送のための費用や時間を気にすることなく、必要な加工済みの原材料を簡単に輸入することができる。そして勿論、すぐにそれらの加工を自前でできるように技術をパクるのである。

よし、これだ! これで行こう!

「……終わった?」

「え? 何が?」

コレットちゃんが突然尋ねてきたけど、何を……。

「妄想タイム」

うるさいわ! 前に、隊長さんにも言われたわ!!

いや、急に黙り込んで、ひとりで考え込んだものだから、みんながじっと待ってくれていたのは、申し訳なかった。でも、別に居眠りしていたとかじゃなくて、ミリアムさんに指摘された件について考え込んでただけじゃない!

よし、今から、それを証明しよう!

「町の人達には、他国との貿易、そしてそれで入手したものを加工して販売して貰います。そのうち、うちの領地で採れたものを使って輸入品に代えられるようにして、純領地産として作れるようにして貰います」

そう、家内制手工業というか、そういったものから、少し前に進んだやつを目指すのだ。

そして更に、昔、技術力に劣る日本が外貨獲得の切り札として頼った、アレである。

…… 養蚕(ようさん) 。

蚕の繭から生糸を作り、そして絹を織る。

ここの気候なら、桑の生育には問題ないはず。そして養蚕は、知識と蚕への尊敬の念と愛情さえあれば、技術的に劣っていても、何とかなるはず。

桑は、葉は蚕の餌、実は人間の食用、根皮は生薬、そして木材としてや、製紙の材料としても使える。……って、捨てるとこ、無いんじゃね?

よし、いける!

養蚕だけに、ようさん作りまっせ!

……って、誰が関西人やねん!