軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

171 制 裁 3

「かなりの騒ぎになっているようですね。……水面下では、ですが」

「水面下では、ね……」

レフィリアからの報告に、思わず笑みが溢れる。

そう、私は、舐めた真似をしてくれた奴らは許さない。

特にここのような世界では、舐められれば、カモにできると思った連中が一斉に寄ってくる。だから、たとえ多少の危険や損害が出ようとも、ふざけた真似をしてくれた相手は叩き潰す。その同類が次々と現れるのを防ぐために。

そのためには、アレだ、アレ。『わたし、残酷ですわよ』ってやつ。

ゴージャス☆ミツハ、ってわけだ。……地球儀を回したりはしない。

物産店にも姿がない、ということにしているけれど、レフィリアからレフィリア貿易の倉庫の合い鍵を借りて、深夜にこっそり転移して物資を補充している。でないと、レフィリア貿易が品切れを起こしてしまう。

レフィリアには、『見つかると、またおかしなのが押しかけてくるかも知れないから』と言って、深夜に行動していることにしてある。そのために、合い鍵を借りているわけだ。

倉庫の近くに転移して、鍵を使って倉庫に入り、誰もいないことを確認。そして、転移で物資を搬入し、外へ出て、鍵を掛けて去る。……簡単なお仕事だ。

勿論、いきなり倉庫内へ転移しないのは、誰かと鉢合わせするのを避けるため。当然だよね。深夜でも、働いている人はいるだろうからね。

それに、別に毎日というわけじゃない。普通、帆船で運んでいる商品が毎日入荷する貿易商なんか存在しないよねぇ。……特に、この世界では。

本当は数カ月に1回くらいが自然なんだろうけど、それだと保管場所や商品の劣化の問題があるから、少しずつ運ばざるを得ない。だけど、それをわざわざ対外的に知らせる必要はないので、搬入頻度は、私とレフィリア貿易の首脳陣しか知らない。

「じゃ、そのあたりのことは、全てレフィリアの好きにして。敵対しそうなところには厳しく適用して、友好的なところには多少の融通を利かせてあげて、取引を継続してあげてね。手に入れた武器は、有効に使わなきゃね!」

「 はい(イエス) 、 殿下の御心のままに(ユア・ハイネス) !」

……誰が『殿下』やねん!

レフィリアは、冗談で言っているのか、それとも本当に私が王族や皇族だと思っているのか……。

ま、平民であるレフィリアから見れば、貴族も王族・皇族も大差ないか。逆らったり御機嫌を損ねたりすれば、簡単に首が飛ぶ……比喩的表現ではなく、文字通り、物理的に……という点では。

「それじゃ、また、商品は適当に補充しとくからね。『シャロリア・テラス』を目指して、頑張って!」

「はいっ!!」

そう、あの名作小説を大幅に翻案・意訳・短縮して、語り聞かせてあげたのだ、レフィリアに。

そしてレフィリアは、あの物語と同じような、王都で高級商店が建ち並ぶ、 側壁を共有した商店街(テラス) のひとつである『シャロリア・テラス』に狙いを定めたのである。

……どうなっても、知らない。

レフィリアの父親と兄は、当然ながら、ウォンレード伯爵とエフレッド子爵というのが国王と王太子の変名であることを知っている。しかし、商売については勉強し、店の手伝いをしてはいても、実際に顧客との取引の場に行くことも、顧客ひとりひとりとの付き合いも、そして貴族のパーティーに出席することもないレフィリアは、それを知らなかった。そして勿論、ミツハも。

なので、王宮関係の者達が丸々レフィリア貿易が扱う商品から遮断されていることなど、ふたりは知る由もなかったのである。

* *

よし、コレットちゃんとサビーネちゃんの機嫌も取ったし、レフィリア貿易の方もしばらくは週イチくらいの転送補充だけでいいし、『Gold coin』の方もデキる店長達に任せておけば大丈夫だ。……多少の赤字になっても問題ないし。

で、じゃあ、何をするかと言うと……。

領地経営だよ、我がヤマノ子爵領の!

新大陸でのことは、誰に頼まれたわけでもなく、私が私費で勝手にやっていることだ。最初の金塊も、王様から貰ったわけじゃなくて、私が借りているだけで、後で返さなきゃならない。だからアレは、任務や義務ではなく、ただのボランティアだ。

でも、領地経営は違う。

それは貴族位を叙爵された私の義務であり、領地と領民を守らなきゃならない。……私の命と安全の次くらいの優先順位で。

忙しすぎるだろ、私……。

そういうわけで、久し振りの、領地邸での長期滞在。

いや、時々日本の自宅や王都に行くけど、『基本的な滞在地』という意味でね。

そして、私が仕事に掛かろうとしていると……。

「よし、私がミツハの占有権を主張するよ!」

コレットちゃんが、何やらよく分からない主張をしてきた。

いきなり何を言い出すのかと思い、話を聞いてみると……。

「毎日みんなにミツハのいいところを話して聞かせていたら、私ばっかり一緒にいるのはずるい、ということになっちゃって、リアやノエル、ニネット達が私の座を奪おうと画策していて……」

「余計なことを言うからだよ。自業自得!」

「そんなぁ……」

リアは、使用人兼商業アドバイザーのラシェルさんの娘で、この前5歳になったはず。ノエルは、長期奉公という名の人身売買モドキの危機を逃れた、ええと、この子も誕生日がきて11歳になったんだっけ、ヤマノ子爵家メイド少女隊のひとり。ニネットは漁村出身のメイドで、確か誕生日はまだのはずだから、12歳のままか。

ニネットは12歳にしては体格がいいから、私より少し身長が高い。……まぁ、間もなく13歳だから、西欧系人種と日本人の違い、ってことで……。

うちではちゃんと栄養豊富な食事をたっぷりと与えているから、身長も、そして胸も私を上回っているのは、仕方ない。そう、人種の違い、人種の違い!!

……くそ。

とにかく、ヤマノ家のメイドのうち未成年であるノエルとニネットのふたりに、メイド見習いのリア、家臣候補のコレットちゃんを加えた4人が、我がヤマノ家が誇る、メイド少女隊である!

一部、少女ではなく幼女だったり、メイドじゃないのが混じっていたりするけど、小さいことは気にしない!

「ミツハは、大きいことでも気にしないじゃない!」

え? コレットちゃん、人の心が読める……

「全部、声に出てるよ!」

そうですか……。

とにかく、ちょこちょこフォローはしていたけれど、少し本格的に事業を見直そう。

というわけで集めた、主要メンバー。

「ランディさん、開発状況の報告を」

初っぱなは、我がヤマノ領の研究開発を担う、ランディさんから。

「はい。銃の開発は、教えて戴きました『フックカッティング』と呼ばれる方法を試すべく、そのやり方を考えているのですが……」

「バレルをうまく保持して回転させる方法、その内部にカッターを送り込む方法、バレルに旋条を刻めるだけの強度を持ったカッターの作成等で 躓(つまず) いている、と……」

つまり、進展は殆どなし、ってことだ。

まだ、滑腔銃身すら再現が難しい段階なのに、ちょっと無茶だったか……。

大砲の方は、鉄も人手もないこんな田舎で作れるはずもなく、ボーゼス伯爵に丸投げ。帆船と併行して、伯爵領で研究開発が進んでいる。

大砲の方が、見本を元にして複製するのはやりやすいだろう。ライフリングも、ライット・システムとかならば、比較的簡単っぽい。

まぁ、まだ時間はある。私が怪我や病気で早死にする可能性は殆どないから、事故、暗殺、国から追放、とかで私が迎撃に参加できなくなった場合を除けば、何とでもなる。

私抜きで迎撃できるようになるまでの猶予時間は、まだかなりあるはずだ。地球の知識を提供し続け、ライフル銃、ライフル砲、そして炸薬入りの砲弾が作れるようになるのに充分な時間が……。

「ま、あまり焦らずに、少しずつ進めよう。全く成果が出ていないわけじゃないんだから……。

じゃ、次は農業、林業、漁業、そして町の方の報告をお願い」

拿捕船の所有権の3分の2を国とボーゼス伯爵に売ったり、イーラスを国に売却したりして領地予算はかなり余裕ができたけれど、それはあくまでも『臨時収入』だ、アテにして頼るべきお金じゃない。

それに、あのお金は鉱物探査や製鉄、漁船の建造、農地改良とかの先行投資に注ぎ込むべきお金だ。あぶく銭は、そういう使い方をするものであって、通常経費に組み込むべきものじゃない。競馬で儲けたお金で家計をやりくりしようと考えちゃ駄目なのと同じだ。

そして勿論、あれは領地の、領民のためのお金であり、私の個人的な老後資産にはできない。

某国から戴いた『戦争による押収資産』も、うちの領地と他国との戦争、という名目だから、私個人の資産にはならないんだよねぇ。一応王様に報告して許可を貰ったから、国にも分け前を出さなきゃなんないし……。

王都絶対防衛戦の時といい、戦争は儲かるよねぇ。

誰か、王国や領地とは関係なく、個人的に私に戦争吹っ掛けてくれないかなぁ……。