軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

156 捜 索 4

「本日も、よろしくお願いしますね」

今日は、『女神の信者獲得作戦』、2回目だ。2フライト目、と言うべきかな。

とにかく、前回と同じ流れで、 離陸(テイク・オフ) 。

救難艦隊の前回の位置へ転移して、そこから推測位置へと向かう。帆船の2日分の移動距離なんか、この哨戒機だと30分もかからない。

帆船の最高速度は割と速いけれど、それは、理想的な方向からの風を受け続ければ、の話であって、完全な向かい風とかだと、そりゃ風上にも進めるけれど、ジグザグに間切って進むことになるから、対水速度ではなく進行方向に対する移動速度としては、ガタ落ちになる。

だから、一時的な最高速度ならばともかく、長期間の平均速度としては、5~6ノットくらいがせいぜいだろう。

哨戒機の 搭乗員(クリュー) は、前回と同じメンバー。

そりゃ、慣れた者の方がいいに決まってるから、この任務は固定メンバーで、同じチームが担当することになったのだろう。……毎日飛ぶことにしなくてよかった。

搭乗員の皆さんは、お客さんである私とは違って、飛行前のブリーフィングとか、準備とか、色々あるだろうし、飛行後も、報告やら書類提出とかがあるに違いない。そして多分、フライト関係以外のデスクワークとかも抱えているだろうし。フライトだけが仕事、ってわけじゃないだろうからね。特に、士官の人達は。だから、毎日だと、かなり迷惑を掛けることになったはずだ。

そして、すぐに救難艦隊を見つけて、直上をオントップ。高度が高いから、エンジン音で気付かれることもない。

……いや、別に、気付かれても構わないんだけど。どうせ、『御使い様を乗せて運ぶ、天界の鳥』くらいに思われるだけだろうからね。

あ。ヤバい。

遭難船の方では『女神の使い』と名乗ったのに、救難艦隊の方では、女神扱いだった……。

……でも、思い返しても、救難艦隊の方では名乗ってないよね。

ならば、彼らが勝手に勘違いしているだけで、私の肩書きは『御使い様』一択だ。

御使い様ならば、元は人間だったとか、今でも現役の人間で、時々女神様に頼まれて使い走りをやっているだけ、とか、どうとでも言える。これが『女神様』となると、色々と面倒だし、すぐにボロが出るだろうし、旧大陸と接触して私が仲介することになったりしたら、不整合が起きるからなぁ。

その点、御使い様なら、『雷の姫巫女様』と似たようなもんだから、何とかなるなる!

……よっし、遭難船『イーラス』、見っけ!

あとは、ルーティンワーク。船に降りて、景気のいいことを言って乗員の士気を高めて、戻るだけの簡単なお仕事。テキストはバインダー式だ。

そして、『イーラス』での仕事を終えて、次は救難艦隊旗艦へ。

転そ……、ん?

ま、いっか。 転送(beam up) !

そして、今回はちゃんと『我は女神の使いである』と名乗って、針路をほんの僅か修正して、哨戒機に……。

う~ん、やっぱり、気になるなぁ……。

いや、さっき哨戒機から転移しようとした時、何だか学者さんの眼がおかしかったような気がするんだよねぇ。

私が転移する瞬間を見ようとしてる、って感じじゃなくて、私の身体……、いや、姿勢というか、体勢というか、何かそういうのを確認しているような、覚えようとしているような、何とも言えない視線が……。

よし、飛んでいる航空機の中に転移してもあまりよろけずに済むことは確認済みだから、椅子から少し離れたところへ転移しよう。

転送(beam up) !

「…………」

私の目の前には、何やら棒状のものを握り締めて、『私がその座席に座ったとしたら、口があるあたり』に狙いをつけて構えている学者さんの後ろ姿が。

そして、座席の後ろには、両手を胸の前で開いて待ち構えている、別の学者さんが……。

当然のことながら、位置関係と体勢から、座席のうしろの学者さんとは、まともに眼が合った。

「……」

「…………」

「「………………」」

たらり、と額から汗を流す学者さん。

機内、空調効いてるよ、うん。

そして、怪しい棒を持った学者さん。自分の仕事に全力集中してるのは分かるけど、目の前の同僚の様子がおかしいことくらい、気付こうよ。

ま、仕方ないから、今回は私が……。

ぽん!

「……」

ぽんぽん!

「今、大事なとこなんだ、邪魔する……な……」

しつこく肩を叩かれたため、怒鳴りながら振り向いた学者さんの声が尻すぼみになり、そして静寂が広がった。

し~~ん……。

気まずい! メチャ、気まずいぃ!!

いや、それは、向こうの方がもっと気まずいか……。

そうじゃない! 今、私、怒るとこ!!

「……どういうことかな?」

「「……」」

「どういうことなのかな?」

「「…………」」

「ど・う・い・う・こ・と・な・の・か・な!」

「「すみませんでしたああああぁ~~!!」」

問い詰めた結果、どうやら、上からの指示ではなく、このふたりの独断、つまり暴走らしい。

前回、本当に偶然、私の口に突っ込まれることになった検知器の先端部分。アレで、私の口腔内細胞が採取できたと思い、異世界の超能力者のDNAが分析できると狂喜したのに、結果的には、何も採取されていなかった。

そして、どうしても諦めきれず、再び『偶然』に頼ることに……。

「どこが『偶然』かッッ!!」

私、激おこである!

他の学者さん達を始め、不測の事態に備えて同乗している情報部の人? 政治将校? 何か、そういう役割の人も、搭乗員のみなさんも、眼を逸らせて、決して私とは眼が合わないようにしている。

そりゃまぁ、私を激怒させた者達、というリストに自分の名が載るのは絶対嫌だろうから、無関係を貫くしかないよね。下手をすれば、降格処分どころじゃ済まないからね、そうなると……。

というか、不測の事態に備えて同乗している人! どうしてあなたまで眼を逸らせて知らん振りしてるの! こういう時にうまく取り纏めるために乗ってるんじゃないの?

「……帰る!」

本当は、この後、新大陸の上を飛んで貰う予定だったけど、今日はもういいや。また、次回があるから。

「あちらの世界に戻ったら、なぜかふたり程人数が減っていたりして……」

私が何気なく呟いた独り言に、ふたりほど蒼白になっている人がいたけど、知らん!

せいぜい、ビビっていろ!!

あ、椅子の後ろで両手を構えていた方は、突然口の中に棒を突っ込まれた私が暴れるのに備えて、助ける振りをして頭を固定して、採取を助ける役割だったらしい。

……そりゃ、暴れるわ!!

結局、帰投後にクレームを付けて、そのふたりは次回から搭乗させないよう厳命。

いや、研究熱心なだけで、そう悪い人じゃないのかも知れない。

でも、私にとっては、明らかな敵対行為であり、裏切りだ。

本当ならば、この国に依頼するのは打ち切って、他国に乗り換えてもいい事案だろう。

ま、今から再度話を通すのも面倒だし、チャートやら何やら、せっかくのノウハウが無駄になるから、乗り換えないけどね。それに、国や軍として裏切ったわけじゃないし、他国だと、もっと酷いことになるかも知れないし。

うん、この国は、誠実な方なんだ。あのふたりを排除するだけで我慢して、収めよう。

あのふたりは、私から法的な処罰を求めることはないけれど、それなりの報いは受けることになるだろう。私が、『以後、私に関係することや、私が提供したものに関する研究等には、一切関わらせないで欲しい』と要望したから。そして、次に何かあれば、以後、私がこの国に何かを頼むことも、何かを提供することも、二度とない。そう、はっきりと断言しておいたから。

魔が差しただけかも知れないけれど、ここで甘い顔を見せれば、第2、第3の『偶然』を狙った連中が現れるに決まっているから、温情を掛けることはできない。それは、悪手中の悪手だ。

ま、自業自得だから、仕方ないよね。

と、まぁ、色々あって、あれから数回の誘導を経て、いよいよ最終日、遭難船と救難艦隊の 会合(ランデブー) の日を迎えたのである。

あ、ちゃんと、新大陸の上も飛んで貰った。

勿論、大陸全部をくまなく、というわけにはいかないから、近隣の、主要なところだけだけど、それでも、大助かりだ。……そのうち、ヴァネル王国の周辺国にも手を回す必要が生じるかも知れないし。