軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

123 ギャラリーカフェ

あの、悪夢の魔物討伐事件から数日。

伯爵様のところに謝罪とお礼に行き、弱みを突かれてイリス様とベアトリスちゃんの 着せ替え人形(オモチャ) にされ、後でアレクシス様にどうして呼ばなかったと怒られ……、って、知らんがな!

隊長さん達は、7.62ミリ弾の炸裂弾頭(エクスプローダー弾)について検討したらしいが、その程度の弾頭に炸薬を仕込んでも実質的な効果は殆ど見込めず、貫通力の低下と予算が 嵩(かさ) むだけ、という結果に終わったらしい。

そりゃ、そんなに効果があれば、とっくにもっと普及してるよね。焦っちゃ駄目だよ、隊長さん。

そして私は、気持ちの切り替えのために、次なる計画に着手していた。

そう、開業届けを出した『彫刻 コレット』の取引相手の作成である。

場所は、あの『第2回異世界懇談会』、通称『イセコン2』の夜に個別会談を行った国のひとつ。国籍を付与してくれ、兵役と納税の義務を免除してくれた某国である。既に不動産屋に手を回してあり、店は押さえてある。従業員の募集広告も出してあり、今日はいよいよ採用面接の日であった。

いやぁ、就職活動もせずに、自分が採用面接をする側になるとは思ってもいなかった……、って、領地邸のメイド採用面接をやったな、そういえば。

でも、あれは地球とは採用制度も採用基準も全く異なる異世界での話だ。地球では、途上国以外では結構被雇用側の権利が重視されているから、おかしな人を雇っても簡単にクビにできないから大変だ。慎重にいかなくちゃ……。

私が出した募集の条件は、こんな感じだった。

ギャラリーカフェ従業員募集。

店長兼調理員1名。経験不問。住み込み可。週給620ドル、プラス喫茶部純利益の1割。

ウェイトレス1名。経験不問。週給420ドル、プラス喫茶部純利益の1割。

共に完全週休2日制、社会保険完備、労働保険あり。

勤務時間、10:00~18:00 昼食は賄いあり。

店長は、日本円にしておよそ月給30万円、ウェイトレスは20万円くらいになる。プラス、歩合。さすがにギャラリーの売り上げは渡せないが、喫茶部分の利益の一部を回す。これで、やる気を出して貰おう。

但しこれは、ドルを円に換算するとこの金額になる、ということであり、現地の物価や給与水準から考えると、かなりの好条件になる。なので、あまり大々的に募集したわけではないけれど、かなりの応募があったらしい。

……『らしい』というのは、応募の段階で国の何とかいう部門が徹底的な調査を行ったらしく、かなりの者がその段階で落とされたらしいのだ。

さすがに他国の間諜が紛れ込んでいたりはしなかったらしいけど、犯罪組織の関係者やその家族・友人等、更生した様子のない犯罪常習者、乗っ取り等を行う悪質な商人の関係者、素行の怪しい者、その他全ての面に渡って『問題がある者』を完全に排除したらしい。

いや、私の情報は漏れていないらしいのに、そんなに怪しいのが混じってたの? 治安悪すぎ!

え、『条件が良過ぎるから、変なのが 集(たか) ってくる』? 『条件は、良くすればいいというものではない。相場というものを考えろ』? すみません……。

とにかく、怖い事前調査を無事クリアした応募者の面接に臨んだわけであるが。

「…………」

「…………」

この、目の前にいる子供は何?

私は、手にした応募書類を何度も眺めたが、そこには年齢が記入されていなかった。

「あ、あの、ルディナちゃ……、さんは、何歳でしょうか?」

「はい、13歳です!」

「ど、どうしてこの店に応募を?」

「はい、募集要項に、年齢制限がなかったからです!」

おおぅ、書き忘れていたよ……。

っていうか、それ、どこかで読んだ! メイドか何かの募集の話で!

私は、がっくりと肩を落とした。

「……あの、だ、駄目ですか?」

いかんいかん、これは仕事だ。私も、ルディナちゃんも。ここは、ビジネスライクに。

「希望職種は、店長とウェイトレスの両方にマルが付けてありますが、料理の方は?」

「ひととおりは……。計算も得意です」

そして面接は淡々と進み、全員の面接が終了した。さすがに、ふたりめ以降は16歳以上の者ばかりだった。

ウェイトレスはともかく、店長の方は男女の別は気にしていなかったけど、面接に来た人達のうち、男の人達は皆、何だかあまり雇いたくない人ばかりだった。事前に排除されたのは身元的な条件だけだから、性格や仕事ができるかどうかは関係ないんだよね。だから、使えない人も残ってた。

そして男の人達は、私が子供だと思って、何やら良からぬことを考えているような気配が……。

何しろ、何か質問はないかと尋ねると、私の両親のこととか、実家のこととかを聞いてくるんだ。どっちが面接官だよ!

何か、良からぬことを考えていそうな感じがビンビンだ。親の金で道楽する金持ちの小娘から店のお金を横領するのは簡単だ、とか、私を足掛かりにして親に取り入ろうとか考えていそうだなぁ。

その点、女性でそういうタイプの人は比較的少なく……何人かはいたけど……、店長も女性から選ぶことにした。その方が、私もやりやすいしね。

最初から女性限定にしても良かったけど、一応は、採用に性差別は持ち込まないつもりだったんだ。でも、結果がこれじゃあ、仕方ない。ウェイトレスさんの職場環境も守らなきゃ、パワハラやセクハラでも起こされちゃ大変だ。

さて、では、まず店長を選ぶか。書類と面接結果を検討して、と……。

「やべぇ。ルディナちゃんが一番優秀だ……」

* *

私は、ギャラリーカフェの準備と併行して、もうひとつの大仕事を進めていた。

「すみません、お世話になります」

「おお、ようこそお越し下さいました! 当基地の者達一同、歓迎致します!」

『イセコン2』の時に話をした外交官のおじさんに連れられて訪問したのは、ある国の航空基地。ギャラリーカフェを準備している国とは別の国だ。あまりひとつの国に頼み事を集中するのは、バランス的に良くないからね。広く浅く、が鉄則だ。

そして、VIP待遇で訪問した基地で迎えてくれたのは、この基地で一番偉い人。基地司令とか、航空群司令とかいうのかな。

いかん、陸軍か海軍か空軍か、聞いてない。どの軍も、飛行機は持っているよね……。

とりあえず、公室に通されて、紅茶と茶菓子を出して貰って、御歓談。ま、皆さんの立場や都合もあるだろうから、素直にお付き合いする。どうせ、上っ面だけの社交辞令だし。

適当に話を合わせた後、基地内の見学をさせてくれるらしい。

自国の力のアピールか、親睦目的か。

航空基地の見学なんて、……大好きだよ!!

よし、こんな機会は滅多にない。がっつり見て廻るよ!

あ、いや、私が見学を申し込めば、どこの国でも見せてくれそうだな。

見て廻っているうちに判明。空軍基地だ、ここ。

まぁ、今回の私の要望から、陸軍の航空隊、ということはないとは思っていたけど、海軍の可能性はあったからね。洋上長距離飛行は海軍の得意分野だし。

でも、ま、この仕事を海軍に取られたら、空軍の面子が潰れるか。この国にとって、いや、おそらく『ウルフファング』を除けば、この世界初の偉業なのだから。

基地内見学の最後に連れて行かれたのが、滑走路脇にあるエプロン。乗員や乗客の乗降や貨物の積み下ろし、燃料の補給等のために航空機を駐機する場所である。そして、そこに駐機された航空機。

戦闘機とかじゃない。長距離飛行ができる大型機である。

エアバスやボーイングの大型機なら1万5000キロ、約8100マイルを飛行できるが、そんな民間機を搭乗員込みでチャーターできるはずもないし、秘密保全上の問題もある。なので、長距離を飛行できる航空機を持ち、秘密保全が万全で、しかも 無料(ただ) で使えるところに頼むのは当たり前だ。

どうやら、用意してくれたのは空中給油機らしい。『充分な航続距離があるもの』という条件で、おおまかな必要航続距離を提示したけれど、条件に合うのがこれだったらしい。

ま、巨大な戦略爆撃機とかを使うはずもなし、こんなところが妥当か。多分、給油用タンクの燃料も自機で使えるんだろうし。普通、そう設計するよね?

どうやら、機体の準備は万端らしい。

そして、お手洗いを済ませて、フライトスーツに着替える。

いや、トイレは機内にもあるらしいし、別に服を着替えなくてもいいらしいけど、そこはそれ、あんまり機内トイレは使いたくないし、せっかく軍用機に乗るのなら、フライトスーツは着てみたい。当たり前じゃん!

よし、準備万端、参りますか!

……って、外交官のおじさんも乗るの?

え、どこからともなく現れた、この人達は?

ああ、こんな機会、逃すわけがないか……。

というわけで、学者先生達の一団と共に、搭乗!