作品タイトル不明
113 姫巫女の帰還
帰還である。
いや、別に、任務をブッチしたわけじゃない。
あの後、3人で王都を出発した。あの国での担当分の仕事は終わったから。
勿論、王都を出るまでは歩きで、その後、転移でビッグ・ローリーを召喚。
その後は、面倒事を押し付けてさっさと出発したことを伯爵様に無線で愚痴られたり、また次の国でひと 悶着(もんちゃく) あったりと、色々なことがあったけど、予定していた国を全て巡り、いよいよ国に戻ることとなったのである。
全部で2カ月半くらいかかったけど、どこの国も、割とスムーズに行くか、時々最初の2国と似たようなことがあったりで、延々と語る程のことではない。
状況はほぼリアルタイムで王様に知らされるため、この使節団の帰還を待たずして、既に本交渉の使節団が出発しているらしい。そして最初の国の王女様は勿論のこと、ふたつめの国の、あの王様も、素直に調印したらしい。うむうむ、「学習効果有り」ってやつだね。
そして、予定されていたうちの一番遠くの国まで行った我々は、帰還の途に就いたわけだけど。
最後の国を出て、『王都の外に隠しておいた』ビッグ・ローリーを回収して、伯爵様達に別れを告げた。
「じゃ、お先に。次は、王宮でお会いしましょう!」
「「え?」」
伯爵様とクラルジュ様が、きょとんとした顔をしているけれど。
「いえ、もう任務は全て終わったから、合流する必要はないでしょう? だから、王都まで真っ直ぐ帰りますから、今度お会いするのは、王宮で、皆さんの凱旋帰国をお迎えするイベントになると思うのですけど……」
「「えええええええ!」」
どうやら、帰路も同じルートだから、使節団は、各国の首脳陣に他国との事前交渉の結果を報告しつつ、再び歓迎パーティーをこなしながら帰還するらしい。
でも、それには、私達は必要ないよね?
それに、2カ月半は長かった。いくら、時々領地に顔を出しているとはいっても。
王都には行くわけにはいかなかったしね。大々的に転移のことを宣伝するつもりはないから。
そう、異国の旅は、もう充分に満喫した。違うルートならばともかく、同じルートならば、もう、さっさと帰りたい。サビーネちゃんもコレットちゃんも、同意見だ。
「ま、ままま、待て! 待ってくれ! 目玉商品抜きでは、歓迎パーティーの準備をして待ってくれている各国に、申し訳が……」
「じゃ、お先にぃ~!」
必死で止める伯爵様達を振り切って、さっさとビッグ・ローリーに乗った私達は、アクセルを踏み込んで、スクランブル・ダッシュ!
皆さんにも都合や思惑があるんだろうけど、ちんたらと時間をかけて、貴族の皆さんからの勧誘合戦にお付き合いするのは真っ平御免! じゃ、バハハーイ!
そういうわけでやってきた、日本の我が家。
いや、本隊と分かれた瞬間に王都に戻ったのでは、さすがに計算が合わなさ過ぎる。せめて一週間くらいは時間を潰さないと。
そういうわけで、一週間の休暇である。
今日はもうあまり時間がないから、いつものデパートで、お子様ランチ他。
「ミ、ミツハ、まだぁ?」
「 急(せ) かさないでよ、コレットちゃん!」
「どうして姉さまが最初にはいるのよ! 転移でよそのトイレに連れて行って貰えないじゃないの、いったい何考えてるのよ!」
「ご、ごめん……」
全く学習効果のない3人であった。
そして翌日。
「今日は、遊園地に行くよ!」
「「ゆうえんち?」」
「そう、日本で一番と言われる遊園地!」
サビーネちゃんとコレットちゃんには、そもそも、「ゆうえんち」が何か、分かっていなかった。ふたりが観たアニメには、説明付きの遊園地のシーンが含まれていなかったようである。
「「「ぎゃああああぁ~~!!」」」
「「どうしてミツハも叫ぶの!」」
「いや、実は、私もここに来るのは初めてなのよぉ!」
絶叫系マシン、恐るべし!!
あ、勿論、移動は異世界経由の転移で。無駄なお金や時間は使わないよ!
2日目。
「今日は、東急ハンズへ行きます!」
開店時間から閉店時間まで、食事とお手洗い以外の全ての時間を費やしたけど、全部廻りきれなかったよ……。東急ハンズ、恐るべし!
3日目。
「今日は、富士山に行きます」
うん、『富士登山』じゃない、『富士山行き』だ。……転移で。
富士山は、登るのよりも、 麓(ふもと) から観るのがいいんだよねぇ。特に、夕方。
あの、この世ではないかのような、幻想的な美しさ。
富士山は、日本で一番標高が高いからいいんじゃない。あの、何とも言えない、まさに『霊峰』という名にふさわしい 佇(たたず) まい。
さすがに富士山のことはアニメとかで知っていたらしいふたりも、驚きと感動に満ちた顔をしていた。
そして勿論、山頂にも行った。転移で。
「姉さま、感動も何もないよ!」
「ミツハ、台無しだよ!」
……あ、やっぱり?
4日目、5日目とあちこちを廻り、そして6日目。
「おじさ~ん、これ、下さ~い!」
「おお、これはこれは、山野様!」
やって来たのは、既にお馴染みの、ソーラレイ、じゃない、ソーラーシステム屋さん。
……別に、宇宙要塞を攻撃するわけじゃない。
約束は、守らなきゃならないからね。それが、強制されたものじゃない限り。
「3回目のと同じセットでお願いします」
「はい、すぐに御用意致します!」
もう4回目だ、話は早い。
3回目というのは、王宮の、サビーネちゃんのところに設置したタイプ。バッテリー付きで、無線機とLEDスタンドと小型扇風機くらいは 賄(まかな) える、必要最低限のやつだ。
サビーネちゃんのところは、扇風機ではなく小型冷蔵庫があるけれど、レミア王女には冷蔵庫を提供する必要はないだろう。扇風機でも、大サービスだ。
ソーラー発電セットを家に配達するよう頼んで、帰宅。
この短期間に、個人で4セットも、そしてそのうち2回はかなり大掛かりなセットを頼んだから、多分お得意さんなんだろう。値引きと、オマケを付けてくれた。そして工事を引き受けるのは、既に諦めている模様。うん、4回目だからねぇ……。
多分、日本各地に別荘を持っていて、自分で組むのが趣味、とでも思われてるかな。
ま、私も4回目ともなると、既にベテランだ。いざとなれば、あのお店でソーラー発電システムの設置工事のバイトとして働けるよ。
「レミア殿下、来たよ~!」
「ミ、ミツハちゃん!」
うん、いつの間にか、私の呼び名は『ミツハちゃん』になってた。
私の方が年上だけど、それを言っても信じては貰えまい。……もういい。慣れた!
「いつも、突然ですのね……」
うん、それ、隊長さんにも言われた!
「じゃ、早速だけど、お約束の品を……」
そう言いながら、抱えていた荷物を下ろす、私達3人。
そう、ソーラーシステムの一部だ。
手ぶらで来て色々と設置すると、殿下以外の人達に怪しまれるから、一応、荷物を持ってきたわけだ。
……殿下は怪しまないか? あはは……。
勿論、全部抱えてきたりはできないから、ほんの一部だけ。残りは、後で殿下の部屋に直接転送する。
「じゃ、設置工事を始めるよ!」
「「うん!」」
よしよし、今回は助手にも頑張って貰おうかな。