軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

150 女性騎士

お茶会に向けてサッシュバル夫人と一緒に、食器や花などを始めとしたテーブルコーディネートや、茶葉や茶菓子の選定、当日会場でサーブする使用人たちの選任――と忙しく準備をしている最中に、珍しくディディエから時間を取ってほしいと頼まれた。

何だろう?

ディディエとマークにはこれからオーベルジュ絡みで色々とお世話になる予定なので、二つ返事で了解して応接室での午後のお茶に誘った。

◇◇◇ ◇◇◇

応接室に入ると、ディディエが立ったまま待っていてくれた。

私が着席し、彼にも席に着くよう促す。

お菓子にはディディエの好物のプリンを用意してもらったけど……そろそろこの辺でアルマにストップをかけた方がよさそうだな。

むかーし、公爵を驚かせようと直径十八センチくらいのデッカデッカの『どでかプリン』を作ろうかと妄想したことがあったけれど。

ディディエの前に置かれたプリンも、そこまではいかないけれど直径十二センチくらいある。つまり四号サイズのホールケーキ並み。

どうしてそうなったのかといえば、それはまあ、私の余計な一言があったから。

「ディディエには小さすぎるのかな? 二口くらいで食べちゃってない? 必死に手と口を動かさないと食べ終わらないくらいのものを出してみようか……」

独り言だったのに。

あまりにディディエがペロリと平らげてしまうから、「もぉー!」って心の中で叫んでいただけなのに。

まさか、アルマがやる気を出して大きなプリンを作り始めるとは思わなかった。

しかも、回を重ねるごとに大きくなっていっている……。

そんな大きなプリンもディディエにかかれば一分もしないうちに消えてなくなるんだから、まだまだ余裕みたい。

いや、でも。さすがに五号、六号とサイズアップしていくのはなしだな。

どこでサッシュバル夫人に見られるかわかんないもんね。絶対に私が指示したって思われる。

いかんいかん。話があるんだったね。

ここは私から振ってあげなきゃね。

「コホン。それで何かしら? ディディエが改まって話がしたいなんて初めてよね?」

「はい。実は先日知人から連絡があり、女性騎士の候補が見つかったのです」

えー! 朗報じゃん!

「そうなの?」

「はい。少し事情がありまして、すぐに働ける仕事を探していたらしいのです。その者は王立学園の騎士コースを卒業しており、現在はさる侯爵家で侯爵夫人の護衛を担っております。人柄は申し分ないと知人が太鼓判を押しておりますので、騎士が駄目でも使用人として採用いただけないかと思いまして」

ん? つまり、仕事は何でもいいから早々にうちの領地に呼び寄せたいってこと?

「その事情とやらは聞いているの?」

「はい。その者はシェリルと申しますが、同じ侯爵家の男性騎士と婚約しておりました。ですが、婚約者がどうやらメイドと浮気をしたらしく、その――子どもができてしまったのでシェリルとは結婚できないと――」

「はぁん!? あ、ごめんなさい。どうぞ、続けて」

いけない。つい素が出ちゃった。『デフォルト』じゃなくて『微笑』をセット。

「はい。結局、その男性騎士とメイドが結婚することになり、シェリルは婚約を破棄されたのです。同僚から腫れ物に触るような扱いをされてシェリル自身も居づらいようですし、何より、婚約を破棄されたということで、侯爵夫人の護衛任務から外されてしまったのです」

え? 何で? 外される理由がわかんないよ。

「婚約を破棄されたから護衛任務を外されるっていうどうことなの?」

「それは――その――やはり経歴に傷がついた訳なので――」

「はあ?」

……う。いかんいかん。

顔が――ちょっと沸騰しそうな血を抑えるのが精一杯で、表情の方はうまく取り繕えない。

それにしても、そんな馬鹿な話ってある?

浮気されて結婚を取りやめただけでしょう?

どうして被害者なのに経歴に傷がついたことになるの?

そもそも職場の風紀を乱しておいて、その男はお咎めなしなの?

っていうか、完全にざまぁ案件じゃないのっ!!

うぉぉぉぉ!! ムカつく!! 他人事だけど許せーん!!

その男もだけど、この世界の常識が許せなーい!!

「シェリルを採用します。まずは早馬で彼女に採用の連絡をしてちょうだい。すぐに荷物をまとめるようにとね。一週間後に我が家の家紋入りの馬車をその侯爵家の家の前まで迎えにやるので、挨拶とか引き継ぎとか諸々済ませておくようにと」

「マルティーヌ様! かしこまりました。今から手紙を書いてもよろしいでしょうか」

「もちろんよ! 急いでちょうだい」

「はい!」

なんか、女性騎士が見つかったのはいいけれど、彼女にしてみれば不本意だよね。

まるで逃げるように去るなんて。

侯爵家で働いていたのに、田舎の格下の伯爵家に転職なんてねぇ……。キャリアアップとはいえないもんねぇ……。

せめて道中はくつろげるように、しっかりと改造した馬車を迎えにやるからね。