軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

149 お茶会を開催します

公爵を見送った後のお茶の時間は、サッシュバル夫人と二人だ。

さすがに半年以上、毎日のように顔を合わせていれば、些細な変化にも気がつくようになる。

今日の夫人は何かを言いたげな様子。

お菓子を食べて、ひとしきりお茶を堪能したところで切り出された。

「リュドビク様から伺いましたが、マルティーヌ様が楽しみにされていたオーベルジュは建物が完成し、あとは食器類の納入を待つだけだとか」

「はい。予定よりも早く完成しましたので、従業員の研修も余裕を持ってできると思います」

「昨日リュドビク様の前に並べられていたお料理がそこで食べられるのですね」

「そうなのです。レストランで提供するには少し軽すぎるかもしれないと心配していたのですが、問題ないようで安心いたしました」

「リュドビク様には最初のお客様として、マルティーヌ様のご友人をお招きするとお話ししたそうですね」

「……ええ」

ん? どういう流れ? 展開が読めないんですけど。

「では、よい機会ですので、そのオーベルジュでお茶会を開かれてはいかがでしょう?」

…………! 大人だけで話をしていたと思ったら、そんなことを相談していたのか。

「マルティーヌ様には是非とも社交に励んでいただきとうございます」

シャコーニハゲム……遠い目をしたくなる。

ちょっとよくわかりません。とりあえず甘い物を食べて横になろうか。

「マルティーヌ様の初めての主催ですから、ごくごく内輪で気心の知れた方をお招きしてご経験を積まれるとよろしいかと」

「主催……ですか?」

「ええ。学園入学までにある程度の場数は踏んでおいた方がよいので。特に主催する側となると大変ですからね。普通は令嬢のお母様同士で示し合わせて互いに招き合うのですが、マルティーヌ様は既に当主になられましたから、領地にいらっしゃる間は他領で開かれるお茶会に参加するのは難しいでしょうし、私がお側にいられる間にぜひ主催者の立場を経験していただきたいのです。リュドビク様も私が監督者として同席することを条件に許可してくださいましたので、一月程かけてお茶会の準備をいたしましょう」

はい、確定事項だったんですね。

「お招きしたお客様からお礼にご招待されるでしょうから、お客様として参加する機会は招待客の数だけあります。王都に戻られると忙しくなるかもしれませんね」

「頑張ります」

「では早速午後の授業で招待状を書く練習をいたしましょう」

「はい。よろしくお願いいたします」

すごいわ、私。これっぽっちも嫌だという感情を出さずに夫人に微笑み返せたと思う。

あー、でもお茶会かー。

うっ。招待状って手書きだよね。パチパチ打てないって本当に不便。

最後の最後で書き間違えたら最初っからやり直しだなんて……。

それでもまあ、刺繍をやらされるよりマシか。

◇◇◇ ◇◇◇

お茶会の開催日を一月半後に決め、ソフィアたちに招待状を発送した。

招待客を検討するにあたり、私が、「友人は一人しかいない」と告げると、サッシュバル夫人は驚いて、「え?」って声が出ちゃってた。

普通は招く人と招かない人を決めるのが難しいのに、まさか招く人を探すことになるとは考えもしなかったらしい。

私、強制的に引きこもらされていたからね。 アイツ(ゲス親父) にね。

全然仲良しじゃないのに、顔見知りで話したことがあるというだけで、威張りん坊のルシアナも呼ぶことになってしまった。

正確には、ソフィアとルシアナが張り合っている間柄で、私はたまたまソフィアの側にいて二人の会話を聞いていたに過ぎないんだけど。

まあ同じ歳で、顔と名前くらいはお互いに知っているしね。

王都にいるソフィアとルシアナに、わざわざモンテンセン伯爵領に来ていただくのだから、それはそれは丁寧に、これでもかと下手に詫びながら(身分的には伯爵である私が伯爵令嬢である彼女たちよりは上なんだけど)招待状を書いた。

秋の王立学園入学を控えた子息令嬢たちは、もう大半が既に王都で暮らしているらしい。

社交シーズンなので地方在住の親たちもタウンハウスで生活しているからね。

二人から喜んで出席させてもらうという返事が届き、サッシュバル夫人が胸を撫で下ろしていた。

もしかして、断られるかもと心配していた?

なんか、すみません。心配かけて。

そしてさりげなくオーベルジュのことも書いて、宿泊先をカントリーハウスとどっちを希望するか尋ねていたんだけど、ソフィアもルシアナもオーベルジュを希望していた!

しかも、二人はそれぞれ母親と一緒に来るらしいけれど、シングルユースではなく、二人一部屋というものを体験してみたいと書いてあった。

数日後に届いたソフィアからの手紙で、これは両家で話し合った結果、こういう返事をすることになったらしい。

両家とも、侍女と護衛を二人ずつと足並みを揃えている。

護衛……そう、護衛。

貴族だもんね、やっぱり。

レイモンと話し合って、貴族がお客様のときには、うちからも護衛を出すことにした。

外出先で少人数で護衛する際、誰か一人がガッツリ夜勤をしてしまうと夜勤明けの休息が必要となり、翌日の日中の警備が手薄になってしまう。

だから通常は二交代制で丑三つ時に交代して数時間ずつ仮眠を取るらしい。

そこで、夜九時から明朝の六時まで、つまりその日最後の鐘から翌日の最初の鐘までの間を、我が領の騎士が見張りにつくというサービスを提供するのだ。

もちろん、「それではお願いしますね」なんて言う騎士はいないだろうけれど、気を張らなくていい分、ちゃんと休息を取れると思う。

本来、夜間であろうとなかろうと、領内で襲撃なんて発生しちゃいけないんだけどね。

まあ一応、うちの騎士たちに騎士っぽい仕事をあてがってあげられない私からのプレゼントでもある。ふふふ。