軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そして改装。

さて、ハクさんから20万DPも貰ったのはいいけど、これで何をするかまだ決まっていないのが現状だ。

ちなみに今回の20万DPは「大量であり、ロスがあると良くない」という理由から口移しによる譲渡であった、とだけ言っておこう。ごちそうさまです。

せっかくなので、スライムとか召喚して育ててみようかなぁ、とDPカタログを眺めてみる。

この世界には、日本で言うところのスライムと呼べるモンスターが大きく分けて2種類いる。

1つは、ゼリー。こちらは本格的に弱い。ぷるんぷるんしている動く半透明なゼリーで、すぐ死ぬ。攻撃力もほぼ無い。そして、1匹1DPと、異様なほどお安い。……あと食用にもなるらしい。もしかしてカンテンとかゼラチンの代わりになるのかな、コレ。

ゴブリンですら討伐依頼になるというのに、こいつらは完全にスルーされるレベルの雑魚である。

で、もう1つがスライム。ねばーっとしてどろぉーっとしていて、変幻自在で打撃無効な体を持つ。1匹1万DPとかする。弱点の属性には異様に弱いが、何でも食べる雑食性もある。当然、人だって食べる。

この世界でスライムといえばこっち。そういえば、お隣の『火焔窟』にはマグマスライムってのが居たな。

……初心者用ダンジョンとして、とりあえずなんとなくだがゼリースポーンをいくつかダンジョン内に配置してみた。元モンスターの100倍でも100DP。とてもお安い。

無駄遣いではない、食べられるんだから。冒険者やゴブリンのオヤツになるんじゃないかな。

そしてなんとなく、なんとなくゼリーを1匹、手元に呼び寄せる。そして、試しに揉んでみる。……おお、うん、思った通りだ。ぷるんぷるんだ。

俺はふと思いついて、唐突に、今まさに思いついたので、そのゼリーを枕にして、横になった。おぉぉ、やっぱりぷにょんと結構いい感じだ。天上枕にも負けないとてもいい枕じゃないか。こんなのが1DPで手に入るとは……スヤァ……

*

昼寝から起きたらゼリーが潰れて瀕死になっており、俺の顔がカピカピになっていた。頭の重量でじんわりと体液が染み出てきていたらしい。これは改善しなければならない点だな。菓子パンの包装ビニールを加工してカバーにするとかどうだろう。どうにしてもゼリー潰れるけど。

「ねぇケーマ。勇者対策はいいの?」

「んー、ぶっちゃけ、必要ない」

「ないの?! ハク姉様から20万DPも貰っておいて何もしないの?!」

うん、勇者対策なんだけど、正直何もする必要が無いんじゃないか、と思っている。せいぜい牢屋に行かせなければいいやという程度だ。

ダンジョンの一番奥まで潜られたところで、ボスのアイアンハニワゴーレムが壊されて自作の魔剣ゴーレムブレードがいくつか取られる程度だし、ハクさんの教育(洗脳)の成果でコアを破壊される心配もない。

そもそもダンジョンの奥に置いてあるのはダミーコアで、本物は宿屋のロクコの部屋にある。むしろロクコの部屋に置いてある方が防犯的にマズイんじゃないかなと思う程だ。侵入者があればすぐわかるけど。……いつでもキャスリングできるんだし、普段はダンジョンの奥に置いて、勇者が来たらこの配置にすればいいかな。

というわけで、やりすぎて要注意ダンジョンにされないようにするほうが重要だ。勇者がどのくらいの実力を持っているのかを測るいい機会かもしれない。

必要な準備と言えば補充用のアイアンハニワゴーレムと魔剣を作っておくくらいだろう。

俺はかなり気楽に構えていた。

「まぁ、20万DP貰ったし、ダンジョンの強化は進めておこう。……具体的には、新エリアを作る」

「うん、どういうエリアを作るの?」

考えているのは2つ。コロシアムエリアと、草原エリアだ。

コロシアムエリアはボス部屋の前にずいっと挿入して、草原エリアは倉庫エリアから行けるようにする。

倉庫エリアからコロシアムエリアに進めばボス戦、草原エリアに進めば行き止まりになるわけだ。

そして草原エリアには、ハクさんと人間牧場の話をしていた時に教えてもらった地形設備、「 空(そら) (5万DP)」と「草原(500DP)」を設置する予定だ。教えてもらうまでカタログに表示されてなかったと思うんだが、これも何か条件があったんだろうな。

地形設備は、フロア全体に適用されて、たとえば「空」なら太陽があって日光も降り注ぐし、夜だってちゃんとある。たまに雨もふるとかで、まさに「空」だとか。

他にも「海辺」とか「火山」とかの地形がDPで手に入るようだ。「火山」は100DPと安いが、「海辺」は10万DPを超えていた。山に海は不自然だから高いってことだと思う。

DPを使って地形を作れば、そこだけまるで外の世界であるかのようにできるわけだ。本来は地形に依存したモンスターが快適に過ごすための設備なんだろうけど、人間牧場の人間たちがなるべくストレスが無く長持ちするようにという意図でも使える、という話だった。

もっとも、地形効果で「空」があっても部屋の広さはかわらず、あらかじめ指定した部屋の広さで天井もあるらしい。なので、なるべく広い部屋にするつもりだ。……村とかは作れないレベルにしておこう。定住されるのは入口前だけで十分だ。

というか、天井があるくせに「空」ってのは実際どんなもんか確かめたくて、草原エリアを設置することにしたという意図もある。

「それと、草原エリアには『安全地帯』も設置しよう。野宿用エリアと考えてもいい。ここで安心して休んでもらえるようにしようか。……ウサギでも放しとくか?」

「冒険者に親切ね」

「ああ。『安全地帯』の、本来の役目を果たすための場所だからな」

『安全地帯』の本来の役目。それは、冒険者が安心してだらけきったところを奇襲して、始末するというモノだ。

もちろん普段はモンスターを入れない、安全に休める野営地として使えるようにする。毎回やってはダメだ。滅多にやらないから効果があるのだ。

「ボス前で、一旦戻って休むとして。油断したところでどーん、ってわけね!」

「まぁそういうところだ」

というわけで、結構な改装をすることにした。どちらもまずはゴーレムで穴掘ってからになるから、完成までそれなりに時間がかかるだろうな。マップを見つつ『火焔窟』とぶつからないように気を付けて掘らねば。

でも改装といっても今のところ謎解きエリアより奥は情報が漏れていないし、外から見ればゼリーが増えた程度になるんだろうな。

*

「ケーマ様。お知らせがあります」

翌日、ギルドの方から受付嬢さんがやってきた。

「御存知かもしれませんが、転換期の予兆があります。しばらくダンジョンに入るのは控えるか、1層まででお願いします」

「ああ……ハイ、ワカリマシタ」

そうか、転換期かぁ。普段見かけないモンスターが出てくるってことは、そうなるよなぁ。ダンジョンバトルする予定ないんだけど……うん、忘れてた。

ちなみにダンジョンの入り口からモンスターが溢れることを懸念して、警戒線を置くらしい。俺もシフトに組み込まれていた。ギルドからの指名依頼扱いで。

なんかごめんなさい。

ちなみに貴族の探索隊が帰ってこなかったのも、ダンジョン内で異変があったのに巻き込まれたのではないかという話になっていて、そこは儲けものだった。

「なるほど、ゼリースポーンの配置にはそういう意味があったのね」

「いや、偶然だけどな。むしろ予想外だ」

「え、そうなの? ケーマにしては珍しいわね、寝ぼけてたの?」

かもしれない。色々と規模が大きくなって考えが追い付かなかったり忘れたりしているというのもあるだろう。もっと色々任せられる部下を増やす必要があるな。…… 労働力(ゴーレム) ならいくらでも作れるから、やはり管理できる知恵があるヤツがほしい。ダンジョン管理用に部下を増やすか。

ダンジョン内限定なら3人娘と違って人型にこだわる必要も無いし。アラクネとかそのあたりいっちゃってみるか? ……あ、知恵がありそうで戦闘力もあるモンスターだと10万DPとか普通にする。ちょっと躊躇するレベルだ。1体はいけるか?

……って、いやちょっとまて。

「そもそも パートナー(ロクコ) がそういうところ気が付いてくれればいいんじゃないか?」

「えっ、そこ私が気付くべきとこだったの?!」

ロクコは素で驚いていた。おいパートナー。おい。

何でいつの間にか俺考える担当ロクコのんびりする担当になってるんだ。

「うん、俺も普通に間違えたり忘れたりするからな?」

「あっは、ケーマも冗談いうのねぇ」

「冗談じゃないぞ?! ダンジョンマスターってことを除けば俺、普通の人間なんだからな?!」

「……いやー、山賊を蹴散らしたときからもうケーマに任せておけば万事大丈夫だと思って、ゴーレム動かす練習ばっかしてたわ」

俺がそんなに信用されてたとか驚きだよ。かなりぐーたら寝て過ごしてたと思うんだけど。

今後はもっとロクコの意見を求めなければ。というか、ロクコにもダンジョンを作っていってもらおう。

以前はDPがギリギリでそうもできなかったけど、今やハクさんの収入とかで懐は温かいのだ。

「わかったわ。じゃあ私も自分で考えてダンジョンつくってみるわね」

「ああ。そっちはロクコに任せるから、ゴブリンいっぱいのダンジョンにしていいぞ。様子は見るけど」

「私はそんなゴブリン好きってわけじゃないんだからね?!」

ロクコにはゴーレム倉庫から分岐する形で、新たにダンジョンを作っていってもらう事となった。

そして、しばらく俺は警戒線の仕事に引っ張り出されてしまい、様子を見るほどの余裕がなくなってしまった。

……ロクコのダンジョン。俺がその内容を知ったのは、すべてが完成してからだった。