軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハクさんからの情報

ダンジョンにおける貴族の殺害という悲しい事件(犯人は尋問の結果自白したらしい)があった数日後、ハクさんがまた遊びに来た。

この人、もしかして暇なんだろうか。と、思っていたが、今日は別に用事もあるようだった。

ロクコと一緒に部屋に呼ばれて、クリームソーダを持って向かった。

「今度ここに勇者が来るわ」

それは衝撃的な情報だった。

「えっ、勇者ですか? ……まじですか?」

「嘘言ってどうするのよ。まぁ気持ちは分かるけど」

「あれ? いつも言ってる『神の先兵』、じゃなくて『勇者』なの? ハク姉さま」

「ロクコちゃんは賢いわね。ええ、洗脳教育してあるから、もう私の手駒よ。心配することはあまりないと思うわ」

と、少しほっと息をつく。洗脳とか聞こえたけどそこは気にしないでおこう。

「ウチの国で勝手に勇者召喚の儀式をやったバカが居てね……末端貴族のひとりだったんだけど、おかげでロクコちゃんに会いに来る予定が狂っちゃって。財産没収して、当主を処刑したわ」

あの、その財産没収と処刑ってロクコに会いに来る予定が狂ったから、じゃなくて、勇者召喚を勝手にやったから、でいいんだよね? よね?

というか、勇者召喚ってそんなホイホイできるもんなのか。

「本来はそうそうできるものじゃないんだけどね、かなりの対価が必要だし。……DPでいうと500億ってところかしら」

今回、その対価をチャラにできる特殊なアイテム、『神の涙』が使われたらしい。

曰く、このアイテム自体に大した価値はなく、勇者召喚のコストを神様が払ってくれるという代物だとか。勇者引換券だな。

「その貴族はなんで勇者召喚したんですか?」

「手柄が欲しかったんでしょうよ、ちょうど魔王領に面しててよくちょっかい出されてる土地だったし、勇者をぶつけて魔王を倒せれば……ってとこだったんでしょうね」

魔王。ファンタジーの代表きたよコレ。

「ちなみに魔王の正体は第6番コアよ。ダンジョン名は『魔王城』、城型のダンジョンね」

魔王もダンジョンコアかよ。だいぶ前にそんな話聞いたことあるけど、実話だったのか。……あれ? でもそれはもう倒されてたって言ってたような?

「それはたしか66番ね。6番と同型のダンジョンコアで、魔王の取り巻きの1人ね。他にも何人か取り巻きがいるわ。……魔王派閥ってところかしら」

派閥とかあるのか、ダンジョンコア。……俺達はハクさんの派閥に所属してるってことになるんだろうな。実際DPいっぱい貰ってるし文句はないけど。

「まぁいいわ、話を戻すけど、そんなわけで神の先兵……勇者が1人召喚されていたのよ」

「されていた、って気になる言い回しですね。いつ召喚されていたんですか?」

「察しが良くて助かるわ。3年前よ、領地で鍛えていたみたい。一応私の作った『勇者育成マニュアル』に従って教育はしてたみたいだけど……そこまでするんだったらちゃんと報告・申請した上で私立ち会いの元やれば処罰されることも無かったのに、魔王を倒してから事後報告すれば大きな手柄になる、と考えてたみたいね」

2代前までの当主はマシだったはずだけど、やっぱり人間は世代変わるとダメね。とハクさんはぼやいた。

何歳だよ、とか思ってない。思ったら殺されそうだし思ってない。

ちなみに、ハクさん謹製『勇者育成マニュアル』は、神の先兵に対して『壊してはいけないダンジョン』『壊していいダンジョン』を教えるための、とっても(ハクさんに)都合がいい知識を植え付けるマニュアルだそうな。

あ、前の『ただの洞窟』のようなダンジョンは勿論、今の『欲望の洞窟』のように冒険者ギルドがばっちり利用しようとしている場合は当然壊してはいけないタイプになっている。帝国の 礎(いしずえ) となっている、ハクさんの『白の迷宮』は、いわずもがな。

「……ああ、そういえば、今6人ほど侵入者を捕らえて監禁してるんですけど、これだと『壊していいダンジョン』になるんですか?」

「バレたらなりそうね。でも、しっかり対策してるんでしょう? なら問題ないわ」

牢屋だけど、完全に隔離している。強度は落ちるが、ダンジョンの機能で『配置』をしなければ入れない場所となっているから、普通の侵入者が牢屋へたどり着くことはない。

……それだと強度は格段に落ちるはずなのだが、レイいわく、もう二度と喋れないし逃げられない身体になっているから大丈夫とのことで……問題はないらしい。詳細は聞いてない。

うん、バレなきゃいいんだよ。前は人員もノウハウもなかったから自分で却下したけど、人間牧場はやはり有用な施設だ。華麗な手のひら返しというのは分かっているが、たった6人から1日1300DPってのは儲かりすぎる。

いつでも埋め立てできるようにしとこう、証拠隠滅の自爆スイッチ的な。

「で、その勇者がね、このダンジョンで出てきたトランプや遊び方の話を聞いてね。『元の世界となにか繋りがあるんじゃないか?』って言ってたわ。ケーマさんの狙い通り、誘い出されたってわけね」

「……ああ、そういうことですか」

そうか、勇者が持ち込んだ異世界のモノがなぜかドロップするようになったダンジョン、っていうのは確かに怪しいもんな。

……ハクさんの頭の中では俺がすごい策士になってるみたいなんだけど、全然狙い通りじゃないんです。単なる凡ミスですスミマセン。とりあえず内心の動揺を隠して「当然ですよフフフ」みたいに言っておこう。

「ま、勇者を使って何をするのかはしらないけど、今度来るニシミって勇者は私の手駒だから……ダンジョンコアのことは『ダンジョン学入門』にある事を守って隠しつつ、適当にあしらって生かして返して頂戴?」

「仕方ないですね、分かりました」

「ふふ、素直な子は嫌いじゃないわ。……そうね、なにか欲しい物でもあれば、少しは融通するわよ?」

ならこのガーターベルトとソックスをプレゼントするので履いてください、は、言いたいけど止めといた方が良いな。

……おいロクコ、なぜ睨む。言わない、言わないってば。

「じゃあDPを。ダンジョンの方、対勇者生け捕り用に少し弄っておきたいですからね」

「ならこちらの頼みを聞いてくれるお礼として、前払いで20万DP渡しておくわね」

ウチの今の収入100日分以上をさらっとくれるとか恐ろしいお人だ……数日前の収入なら400日分だぞ。

しかも別途宿泊料金にロクコへのチップを欠かさない。ハクさんは、底が知れないな……。