軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン攻略:脱出完了

背後でダンジョンの入り口が崩れ落ち、埋まった。

「ふぅ……無事、ダンジョンを脱出したな」

「うむ。二人ともお疲れ様だ」

「そうですね」

「俺が通りすがったものの、ナリキンもこれで無事に試練達成だな」

「ですな。いやぁ、ギリギリだった」

「そうですね」

聖女がナリキンの背に背負われたままの俺をジト目で見つつ答える。

「ふっふっふ、『みなし夫婦』を妨害されたのがそんなに恨めしいか」

「え?」

「ん?」

「そんなものは良いのです。私もキョウ様をおんぶしたいのですが!」

「そ、そんなもの!?」

それを妨害するためだけに俺ここまで来たんだが!?

『聖女様とキョウ様か……アリだな』

『 婦婦(ふーふ) 仲が良さそうでなによりです』

『尊い……』

「……あー、ええと。どうぞ? ですかな?」

「おいナリキン。もうダンジョンから脱出したんだから降りるだけだが?」

「まぁまぁ。帰るにしても、私に背負わせてくださいませキョウ様」

「お断りしたいところだな。みなしの夫婦になるでもないわけだし」

「うふふ」

ニコニコと嬉しそうに聖女が笑う。

「……なんだ、含みのある笑い方だな?」

「あら。だって、ここから帰るまでがダンジョン攻略なのですよ? 初代聖女も言っています。『家に帰るまでがダンジョン攻略である』と」

なるほど、それはレオナの言いそうなセリフだな。

「……ん? ちょっとまて。ここから帰るまで?」

「おっと。つい言ってしまいました」

「つ、つまりまだ『みなし夫婦』は終わってないってことか……!?」

「ふふっ、そういうことです。そしてここから家に――クロマクに帰るのには、最低1日はかかりますね?」

「な、な、な……」

なんということだ。

「そんな……! 帰るまでがダンジョン攻略だって!?」

「ええ。そう。そうなんですよキョウ様」

「なんてこった……じゃあ、今すぐ拠点に帰りでもしないかぎり『みなし夫婦』になっちまうのか!?」

「はい。私達が夫婦になる未来は揺らがない――そういうことです!」

なんということだ。

だから、聖女アルカは既に勝利を確信してのこの余裕……俺はナリキンの背中から崩れ落ちるように地面に降りる。

「く、なんてこったショックで脚が動かん。だがこうなっては仕方ないな。アルカ、俺をおんぶしてくれるか」

「ええ、お任せくださいキョウ様」

そして聖女アルカは俺を背負い――俺は背負われる。

目の前にはアルカの、緑色の髪の毛の後頭部。その頭を、左右から掴む。

隙だらけすぎるな。

「お疲れさん。ジャッジメントレイ」

「え、」

ぱぁん! 俺は聖女の頭をフッ飛ばした。

ゼロ距離。水平0角度ではなく、ゼロセンチメートルの【エレメンタルバースト】。

油断していた聖女アルカは首なしの死体となり、前のめりに倒れ、俺の下敷きになった。

幸か不幸かその断面は焼かれて、血は噴き出さなかった。

『え!?』

『きゃああああ!? 頭、頭がっ』

『きょ、キョウ様が、せ、聖女様を!? ひ、人殺しぃっ!?』

「落ち着けお前らー。相手は聖女だ。一足先に帰ってもらっただけだが?」

「あ。そういやアルカ殿は死んでも復活するんでしたな」

「そう。聖女の 拠点(・・) でな」

今すぐ拠点に帰らない限り。

なら今すぐ拠点に帰ってもらえばいい。と、そういうことだ。

流石にそれは予想済みだったので、演技しつつ、ダンジョン攻略が済んでいる事、帰れば終了ということをしっかり確認までさせてもらった。

さすがにわざとらしすぎる演技だったかな? と思ったのだが、案外通用してくれたようだ。

「ほれ、聖女の死体が光になって消えたな? 服も残さず。これは聖女が拠点に帰って復活した証拠だ。いやぁ、ショッキングな映像を見せてしまって悪かったな」

「うむ。ダンジョンの攻略自体はもう終わっているわけだし、アルカ殿に先に帰ってもらって報告してもらう方が効率は良いな。さすがキョウ殿だ」

『え、あ、じゃ、じゃあ聖女様は?』

「今頃クロマクで生き返っているだろう。なに、心配はいらぬよ皆の衆。聖女アルカは、なんといっても我々光神教の誇る『聖女』なのだから。だろう?」

ナリキンが何でもなかったかのように配信でいつも見せる笑顔で言うと、視聴者達は落ち着きを取り戻していく。

『……ナリキン様ほどのお方がそういうなら』

『びっくりしたわ……キョウ様が愛ゆえに聖女様を 弑(しい) したのかと』

『目的のために手段を選ばないとは……強くて怖い!』

「そしてこれで『みなし夫婦』は不成立ってのも確定……だな? 聖女は拠点に帰った。拠点に帰るまでがダンジョン攻略。帰ったら終了だ、少なくとも聖女のダンジョン攻略は!」

「ギリギリで不成立ですな」

『あ! 本当だ!?』

『なんだお前、今気づいたのか?』

『い、いやぁ、いきなり聖女様の頭が吹っ飛んで、驚いててなんも考えられなかった……』

『キョウ様は自分だけが夫婦になるために聖女様を帰したってことね』

『愛……だなぁ』

「いや俺はナリキンと夫婦にならないが? というか……そうだな、ダメ押しで言っておくか。変装してはいるが、俺は男だぞ」

『ああ、『テイ・ A(エース) 』ですね分かります』

『そいや、みなし夫婦避けに性別揃えたりするのが一時期あったなぁ』

『ん? じゃあなんで女になって合流したんだ? やっぱりナリキン様と結婚したいからじゃ?』

あ、あれ? ちょっと予想外の反応なんだが……

もっとこう、驚かれたり否定されたりすると思ったんだけど……?

「キョウ殿。性転換薬は聖王国ではわりと一般的な魔法薬ですぞ?」

「ハッ!? そういえばそうだった!」

性別を反復横跳びした女冒険者の話とかあったなそう言えば!

っていうかそれなら……今、性別揃えるの云々とかいう発言もあったわけだが……

「もしかして聖女に『テイ・ A(エース) 』飲ませて男にすればみなし夫婦問題は解決だったって事か!?」

「あー。あるいは俺が飲んで女になれば、でしたな。いやはや……気付いていませんでした」

『こういう学びがあるから、この配信は後世に残すべきだと思います!』

『また配信やってくださいお願いします!』

『つまり聖女様、死に損では?』

……まぁ、聖女アルカへの制裁も兼ねていたってことで! ヨシ!