軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レッドドラゴンとの交渉

「それで、奥様はなにが不満なので? こちらとしては度重なる『土下寝』により十分謝罪したと思うのですが」

「お、奥様……えへへ……ハッ、じゃ、なくてッ、それだッ! その 『ドゲネ』ってやつ、あれはホントに謝罪なのかッ?!」

おっと、急に核心をついてきたな。頭は悪くないのかもしれない。

「頭だけでなく身体まで下げる、これ以上ない謝罪の姿勢でしょう。逆に聞きますが、奥様はどういう姿勢が謝罪の姿勢だと?」

「むッ……うーむ、確かに言われてみれば……腹を見せて、寝転がる……とかッ?!」

「わかりました。仰向けで『土下寝』すればいいのですね?」

「あれッ?! そうなのかッ?」

「姿勢は同じです。しかし、これほどまで謝罪しているというのにいまだに信じてくれないとは……悲しいですね」

「い、いやッ、別に信じていないわけじゃないぞッ?」

顔に手を当て目を伏せて、ちょっと大げさかな? というくらいのジェスチャーを見せてやったんだが、まるで自分が悪い事をしているかのように反応してしまうレッドドラゴン。さすがチョロマンダーの奥様だな。

「そうですねぇ、本当に信じてるっていうなら……実はあの横穴あけた洞窟、ウチから山の反対側まで通したいんですが、どうにかなりません?」

「……それは無理だなッ!」

「おや……奥様、つまり信じてくれていないと……」

「いやッ! そうじゃないッ! えーと、そもそもこのツィーア山自体、ほぼアタイのダンジョンなんだ! オマエが洞窟を通せるスキマが無いッ!」

慌てた様子で否定するレッドドラゴン。って、待て、今なんて言った?

「ツィーア山自体、ほぼそちらのダンジョン、とは、どういうことです?」

「こう、山があるだろう? ガバッといったとこがだいたい全部アタイのダンジョンだッ!」

山の、ほぼすべてが『火焔窟』である、ということだろうか。

ちょっと分かりにくいので模型を作ってみよう。クレイゴーレムのおまけで作った粘土を取り出し、マップを見ながらおおざっぱにツィーア山の形にする。

「おッ? これはツィーア山かッ! オマエ器用だなッ!」

「どうも。えーと、ツィーア山がこうだとしまして、どのくらいが『火焔窟』なんですか?」

「だいたいこんくらいだな!」

8割以上、ごっそりと粘土が持ってかれた。のこった2割弱のうちのさらに半分程度がいまのうちのダンジョンの規模だ。本当にツィーア山の端でしかない。

……でけえなぁ火焔窟。……よくここぶつからずにトンネルを掘り進められたな。

「つーかオマエ、いつのまにウチの山にダンジョン作ってたんだッ?!」

「あー、それについてはうちのダンジョンコアに問い合わせるんで……ロクコ、いつからだー?」

『え? …………詳しく数えてないけど、とりあえず10年くらい前かしら?』

返事が返ってきた。10年かー……

「10年くらい前からだそうです」

「ウチは500年前くらいからやってるなッ! ウチのほうが先だッ!」

「まァ、695番じゃぁそんなもんだろォ……ん? そういえば695番ってェとォ、なんで俺ァ695番のことを人型だって覚えてたんだっけかァ?」

はてェ? と、どうでもよさそうなことで考え込むイッテツ。……チョロマンダーはおいといて、ここは交渉だな。

マスター同士の交渉……腕の見せ所、みせてやんよ!

「どうにかトンネル通せないですかね?」

「うーん、ここまではほんと偶然隙間をすりぬけて洞窟が伸びてたみたいだけど、こっから先は無理だなッ! どこいってもウチのダンジョンで、ネズミ一匹通れやしないよッ!」

「一部、トンネル作る分だけウチに分けてくれませんか? なんならDP払ってもいいですけど」

「おう、50万DPくれるならいいよッ! 領域の上書きと、洞窟がまっすぐ伸びた場合にある施設をどかすのにそんぐらいかかるからなッ!」

50万DP……いや、洞窟の施設を動かすのにはそんなかからなかったと思う。しかも領域の上書き、ってのはむしろこっちで使う内容じゃないか? つまりこれは、ボッてる?

チョロ嫁のくせに生意気な!

「50万はさすがに手が出ませんね」

「そうか? 自分でいうのもなんだけど、結構ギリギリで良心価格だぞッ」

むむ、領域のやりとりってどれくらいが相場だとかそういうのは無いだろうし、あっても分からない。ロクコに聞いても分からないだろうし、かといって相手のいう50万DPをそのまま払うのはこちらのDP的に無理だ。

値切りたいところだが、このレッドドラゴン、正直者っぽいから本当にギリギリの価格を提示してそうだ。

……と、そういえば金貨でなら持ち合わせがないわけでもないんだった。

「金貨50枚ではダメですか?」

「金貨もらってどーすんだ? バカだなッ、DPじゃなきゃ使えないだろッ!」

笑顔で断るレッドドラゴン。

やはりダメか。金貨で支払えるのなら払っても良かったんだけどな。

……いやまてよ? ドラゴンは光り物が大好きらしいし、現物をちらつかせてみよう。

「……金貨1枚を1万DPで買い取っていただく形では?」

俺はキラリと輝く金貨を1枚取り出し、レッドドラゴンに見せるように右手に持つ。

「ハハハ、金貨1枚に1万DPなんて……そんな……ど、どーしよっかなッ!?」

釣れたーーーッ!(フィーーッシュ!) 俺がゆっくりと金貨を動かすと、それを目で追うレッドドラゴン。右に動かせば右に、左上に動かせば左上に顔が向く。完全にかかっている。

っと、だがまだだ。相手はまだ悩んでいる。俺はさらにピカピカに磨いた銀貨を1枚とりだし、左手に持つ。

「今なら金貨10枚ごとに銀貨が1枚オマケについてきます」

「なッ! そ、それは、へぇ、本当にッ?!」

「本当ですとも! 嘘は申しません!」

言いながら左手の銀貨をぐーるぐーる回すと、つられて顔がぐーるぐーると回るレッドドラゴン。

これは……もうひと押しでイケるな。

「で、でもなッ、うーん……?」

「おおっと奥様、そんな、まだまだご不満ですか? ……いいでしょう、では本日は特別に、本日、今だけのサービスです! 今日! 今ここで! 金貨50枚をまとめて50万DPで買うお約束をいただけた場合のみ! おまけの銀貨に加えて……この、クリスタルの騎士像をプレゼント!」

「うおおぉおおッ?!」

俺は透明に輝く騎士像をテーブルに置いた瞬間、レッドドラゴンがくわっと目を見開いた。

高さ20センチのクリスタル騎士像は、マナポーションの瓶で作ったものだ。

「こ、これはッ……今にも動きそうだ……ッ! 素晴らしいッ!」

動かそうと思えば実際に動く。ゴーレムだしな。対ドラゴン用に作っておいた一品なので無駄にキラキラと光を反射するようにしている。レッドドラゴンの目も負けないくらいキラキラしている。

「こちらは今すぐいいお返事を頂けた場合のみのご提供となります」

「よ、よしッ! いいだろう112ッ?!」

あたかもおねだりする子供のように、ぼーっと考え事をしていたイッテツをぺしぺしと叩くレッドドラゴン。

「あァ? ……まて、今、大事な事を考えてるんだァ」

「むぅ、早くしてくれッ! 今すぐじゃなきゃあの像が手に入らないんだってッ!」

「あァー仕方ねぇなァ。……あ。思い出したァ!!」

急に大声を上げるイッテツ。

「695番は、『裏切者』の89番の仲間じゃねぇえかァアアアア!!!」

ゴォウ! とその口から火が漏れた。

……ハクさん、ダンジョンコア界隈だと『裏切者』扱いなんだね。まぁ他のダンジョンコア狩ってるもんね。