軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

チョロマンダー

『ただ寝てるだけじゃねェエエかァアアアア!!!!!』

埋めていた通路の土砂をふきとばし、サラマンダーが再来した。

バレたのは5日目だった。

思ってたより遅かったな。でもここまで来たら騙されきってほしかった。折角堂々と12時間寝る口実ができていたのに。

通路までゴーレムを出迎えに出すと、大人しく誘導に従ってくれるようなのでだいぶ理性的なことが窺える。土砂吹っ飛ばして少し頭が冷えたのかもしれない。

こんなこともあろうかと通路の途中に部屋を作っておいたので、今度はそこに『配置』するように移動する。徒歩移動しなくていいのは楽でいい。

「で、お前……ふざけてんのかァ?!」

「失敬な。俺は本気だぞ、『土下寝』がまさか寝ているだけのものだと思っているのか? 心外だな」

「そ、そうなのかァ?」

あれ、この反応はあれだな、また言いくるめられるな。

「ああ、そもそも『土下寝』が寝ているだけだと言ってしまえば、『土下座』だって座っているだけだろう?」

「うぐぐっ、そ、それもそうだなァ」

「これほど謝罪の気持ちを示しているというのに、折角塞いだ壁を破壊してくるとは……」

「えっ。あァァ、いやァ、その……」

「……この落とし前、どうつけてくれるんだ?」

「む、むむむ……!」

俺の言うことを素直に納得してしまうサラマンダー。ちょろい。実にちょろい。チョロマンダーだな。

「わ、わかったァ。壁はこちらで直しておこうじゃぁないかァ」

「それだけか? 俺の謝罪を貶めたのについては何も無しか?」

「……すまなかったァ」

「いや、分かってくれればそれでいいんだ。こちらも言いすぎた」

「お、おぉ、お前いいやつだなァ」

「ちなみに第112番ダンジョンコア、マスターがいるということは名前があるんだろう? 人間には第112番ダンジョンコア、って言いにくいんだよな、そっちの名前を教えてくれないか?」

「おぉ、『112』だァ。マスターにつけてもらった、ドラゴン語で112番という意味の言葉でなァ」

しまった普通に『112』に翻訳されてしまった。ドラゴン語とかあるんだ。

「そうか、いい名前だな。だがドラゴンの発音も俺には言いにくかった。……実は俺は異世界の出身なんだが、そちらで112をもじった名前で呼んではダメか?」

「おお! ええぞォ、なんという名だァ?」

こんなこともあろうかと、5日間寝ている間に考えておいたのだ。

「イッテツだ。1、12、と分解して、さらに12を10と2にしたら、イ、テ、ツ、となるから、イッテツ。どうだ?」

「ほぉ、気に入ったァ、その名前で呼んでくれェ」

チョロマンダー改めイッテツは、嬉しそう笑った。

「ああ、イッテツ。俺は増田桂馬だ」

「ケーマだな、覚えたぞォ」

そしてイッテツは上機嫌で帰って行った。さすがチョロマンダー、また騙されてやがる。

……うん、マスターが居るヤツに新しく名前を付けてもマスターの上書きとかは発生しないな。

*

「ってやっぱりおかしいだろォ?!」

と、チョロマンダーのイッテツが再びやってきたのはさらに3日後だった。

今回は早かったなー。うちのダンジョンの探索してたパーティーも入れ替わったぞ。

今はDランクのパーティーが1組、Eランクが2組だ。

罠の対処を覚えるのや、ゴブリンやゴーレム相手の戦闘訓練が目的なのか、今きてる冒険者はそれほどお宝を探そうって気がないようだ。おかげでこっちもわざわざ高いお宝を補充する必要もなく、DP消費が少なくて助かっている。

宿の客は増えてきたけど、飯はロクコが、受付はイチカが担当できるからな。トラブルは冒険者ギルドに押し付けるので俺はたまに浄化しに部屋を回るくらいだ。

いや、最近は『土下寝』に忙しくて仕事できなかったんだったな。ハハハ。

「おお、イッテツ。よく来たな。で、なにがおかしいんだ?」

「うちのマスターが言ってたぞォ、騙されてるって! 俺もお前に謝罪の意を示すために『ドゲネ』を試したんだが、何も大変なことはなかったぞォ! マスターもわざわざ人化して試してくれたが、全くもって快適であったとォ!」

わざわざ試したのか。律儀な奴め。

そしてドラゴンは人化できるんだな……

「そもそもイッテツの場合『土下寝』できないだろう。サラマンダーは立ってる方がつらいんじゃないか? 人間は体の構造が違うんだから当然だな」

「そ、そォかァ?」

「あとドラゴンの人化というのはあくまで人の姿を真似るだけじゃないのか? 実際、耐久力は本当の人間の比じゃないだろう? 俺はただの人間だ、比べられても困る。もし俺が『火焔窟』で横になったらヤケドするだろう」

「おォ……それもそうかァ」

「そもそも、普通の人間は『土下寝』をしているとあまりのつらさに意識が飛ぶことすらあるんだぞ? 俺も何度意識が飛んだことか……」

「な、なんだってェ?! そうだったのかァ……」

まぁ眠気で目蓋を開けてるのがつらくなって寝落ちるだけだけどな!

「それで、イッテツは俺にどうしろというんだ?」

「う、うむゥ……ど、どうしたらいいんだろうかァ?」

それ俺に聞くのかよ。聞くなよ。

「わかった、どうも不満なようだな……1日12時間の『土下寝』じゃ足りなかったか」

「そ、そォいうこと、なのかァ?」

「それじゃあ更にもう1人、俺には部下がいるんだが、そいつにも『土下寝』を強要する!」

「な、なんとォ!」

「しかも俺が直々に拘束し、動けない状態にする。強制的に『土下寝』だ!」

「なんだってェ! ……フーム、そこまでしてくれるンなら十分だろォ。ケーマも意志は固いようだなァ、分かったァ」

イッテツはまたも帰って行った。

このペースだと次に来るのは1日後だろうか。

……まぁ、約束してしまったし、俺はニクを抱き枕にして寝ることにした。いつも通りに。

*

「よく考えたら『ドゲネ』はやっぱり寝てるだけじゃねェかァ?!」

「ん? ああ、イッテツ。また来たのか、暇だなー」

イッテツはさらに1日後……まぁ翌日きた。

頭の上に、赤いトカゲの尻尾……いや、ワニの尻尾が生えた女の子を連れて。

「……そちらの方は?」

「うちのマスターだァ!」

「おうッ! てめぇがアタイの旦那の112を口車に乗せてるってのは分かってるんだよッ!」

マスターってレッドドラゴンじゃないか。それドラゴンの尻尾か。そしてイッテツが旦那なのか。

「ちなみに元の姿だとデカすぎて通れないからわざわざ人化してきてやったんだ、感謝しなッ!」

「それはそれは、どうもありがとうございます」

「おうッ それでいんだッ! どういたしましてッ!」

胸を張って満足げなレッドドラゴン少女。

「で、奥様はなにが不満だと仰るので?」

「奥様……そう、アタイは奥様だよッ! なぁ112!」

「おうゥ、おめェは俺の愛しの奥様だァ。レドラ、愛してるぜェ」

おい、ウチのダンジョンで急に 惚気(のろけ) んなよ。自分のとこ帰ってからやれよ。

「はッ! ちがうそうじゃないッ、危うく口車に乗せられるところだったッ! なんてヤツだ……ッ」

「おォ? そうなのかァ。おいケーマァ! 何してやがるんだァ!」

えー。俺何もしてないよね? あれか、火属性で燃え上がりやすいタイプとかそういうのなのか。

……この夫婦、似た者同士なちょろい気配がする!