軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決闘開始

ラギルは焦っている。

ラギルは他所からは聖女派と思われているが、保守・教皇派である。

元々は時間稼ぎだったのだ。

本来教皇になることを禁止されている聖女。敢えてその聖女を教皇にしたら良いのではと提案することで、教皇様が帰ってくるまでの時間を稼ぐつもりだった。

故に、聖女を本当に教皇にしようとは思っていない。

だが、時間稼ぎのため故に……聖女が教皇になる目を潰されるのは、困るのだ。

マグニは諦観している。

マグニは中立派なのだが、元聖女候補だったこともあり聖女派だと思われている。

故に、聖女がナリキンに負けてくれれば丁度いいと思っている。

聖女派がすり寄ってくることもあり、その舵取りに対して干渉権を残すため、この試練では「聖女がいかに教皇に相応しいかを見せるためだよ」と聖女派には言ってある。どちらともとれる曖昧な言葉だ。

ハッキリ聖女様を支持しているのかどうか答えろと文句を言われたが「おやまぁ、アンタ聖女が勝つと思っていないのかい?」と答えてやれば奴らは黙った。

勿論マグニは聖女が勝つと思ってない。むしろ聖女が勝っては面倒だ。が、ナリキンならなんとかしてくれるだろうと期待している。

ロネスキーは満足している。

革新派であり、前教皇でなければ聖女だろうがナリキンだろうがどちらでも構わない。

この戦いにおいて、どちらが勝っても負けても、ロネスキーは損はない。

なんなら勝った方を支持すればいい。

……ある意味では、3人の中で一番の聖女派といっても良いかもしれない。

そんな上級神官3人の思惑の入り混じる中、ナリキンと聖女の決闘は始まった。

* * *

いつもの法衣に身を包んだ聖女アルカと、ダンジョン配信でおなじみになった全身鎧の教皇候補ナリキン。

ナリキンは武器を取り出して構える。オーソドックスな両手剣であり、その構えは正眼。聖王国でも王道を行く剣士スタイルだ。

ダンジョン探索において全身鎧はタンク職の証であり、防御を鎧に任せず盾も持ち攻撃を仲間に任せる者も多い。その点、両手剣装備は攻守のバランスを取ったソロ攻略者らしさも窺える。

まず先に動いたのは聖女アルカだった。

ダンジョンの戦いは先手有利。一撃で相手を始末すれば損害なく次へ進める。奇襲で戦力を減らせば有利に戦える。その戦闘経験が染みついていた。

取り出したのは戦斧。長い柄の先に重量のある斧と槍の穂先が付いている、対鎧に有効な武器の一つ。対峙するナリキンが全身鎧を纏っているため迷わずチョイスし、襲い掛かる。大きく振りかぶり、頭頂からの一刀両断を狙って振り下ろした。

一方のナリキンはその攻撃をただの大ぶりの一撃ではないと警戒しつつ、前に突っ込む。避けられたら隙が大きい攻撃だが、聖女がそんな隙を無策に晒すはずがない。

思った通り、ナリキンが突っ込むのを見た聖女は迷わず戦斧を捨て小型のナイフを取り出して鎧の隙間を狙ってきた。

が、それはナリキンにとって慣れた攻撃。このところの訓練で何度も味わったナイフ攻撃。あえて少しだけ対処をおくらせて動き、鎧の隙間で挟み込んで受け止めた。

鎧による、白刃取り。

ニクによる指導で身に着けた技である。

失敗して刺されてもその中身は空、刺さることは無い。が、リビングアーマーであることがバレてしまう。そういう意味では、破滅と隣り合わせの見切りが必要だ。

だが、鎧の隙間を埋めるために動きが制限されてしまうし、そのための無駄な動きをして体勢をわざと崩さなければいけない不利もある。

――それは、ただの鎧を着た、ただの人であったらの話である。

ナリキンはその状態で更に身体を動かし、ナイフを万力のように締め上げ奪い取る、だけでなく、その鋼の刃をバギッと割った。

「なッ!?」

オリハルコンコートの鎧による圧倒的防御力を生かした武器破壊。テコの原理もあるが、鎧構造の知識、全身鎧で動き動かす経験、それとそもそもの筋力がなければ成しえない。

さすがにこれには聖女も驚き、そのままナリキンの蹴りを食らってしまった。

鎧の質量を纏う鈍器の一撃。

ダメージと共に後ろに跳び、距離を取って仕切り直す聖女。

……鎧による白刃取りは、ただの大道芸ではなく、今後聖女が鎧の隙間を攻撃しても無駄であると示す 示威行動(デモンストレーション) でもあった。

「なんと攻めにくい……流石ですね、ナリキン様!」

「フフフ。アルカ様こそ」

ここまでは数秒の攻防。聖女は武器を失いダメージを受け、ナリキンは無傷。

小手調べは、ナリキン優勢である。

これだけでもナリキンは聖女と充分渡り合える以上の存在であると証明された。

聖女の本領はダンジョンの攻略だと言っても、ナリキンはそれも負けていない。このたった数秒で、聖女派の屋台骨はズタボロになったと言っても良い。

……もっとも。これは紙一重の結果である。

聖女が事前に疲労しておらずもう少し動きが早ければ、白刃取りは失敗していただろう。そこから不利になっていたのはナリキンだったに違いない。

オリハルコンで強化されたナリキンでもそう感じていた。おそらく、もう一度決闘をしたら通じないだろう。

ちらり、と観客席を見る。そこには ロクファ(ロクコ) と キョウ(ケーマ) 、 シーバ(ロクファ) 、そしてこっそりやってきたコボルトのニクが居た。キョウに首輪のリードを預けて見守ってくれている。

その前で無様な真似をするわけにはいかない。