軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見回りと娘と。

オイロケ通りの見回りを終えた直後の俺の元にソトがやってきた。

カリソト区のオイロケ通りでの話を聞いてきたらしい。……耳が早い、というか、普通にソトの領域だし見ていたのかもしれない。

「すぐそこに良い店がありますよ。個室カフェ『パペッティア』っていうお店です」

「密談によさそうだな。なんでそんな店があるんだ?」

「密談によさそうだからですが?」

立地的にはギリギリでソトのダンジョン領域だった。

密談させてダンジョン機能で覗いて情報をすっぱ抜くのか。やり手すぎるな……

「まぁ今は商談くらいにしかつかわれてませんが、普通に恋人とのデートでも使えますし、子連れのお茶会にも最適ですからね。それなりに需要はありますよ」

「なるほど。じゃあ子連れってことで行くか」

「そうですね!」

ソトに案内され、商業区の個室カフェへと入る。

個室以外にも席があるようで、それなりに客が入っていた。ソトが慣れた様子で「個室お願いしまーす、内側で」と言うと、2階にある4人席の個室に案内された。窓のない個室で、明かりの魔道具が置いてある。

窓側の個室もあるようで、そちらは「外側」らしい。デートやお茶会にはそちらがよさそうだ。

「じゃあ私は店員さんの靴下でー」

「そんなメニューはない。アップルパイ2つ」

メニューを見るとミートパイとかアップルパイが食べられるらしい。

そういえばリンゴはツィーアで普通に売ってたな。酸っぱいからアップルパイ向けだと思ってたっけ。

「ちなみにここ、私の店なので靴下は隠しメニューであるんですよ? まぁ実質パパのお店でもありますね」

「おいソト。家の外でそういうのやめろよ、人間じゃないと思われたら面倒だぞ」

「あはは。さすがにお持ち帰りメニューですから大丈夫ですよ」

そういう問題じゃない気がするのと、普通に娘が事業主になってるので色々と複雑な心境である。

「ていうかオイロケ通りに行くならちゃんと通達してから行ってあげてくださいよ」

「そこはほら、抜き打ちっていうか? 実際悪い組織が入り込んでたとして、そんな通達してたら隠れちゃうだろ」

「それはまぁそう。でもスイラさんからも報告行ってませんでした?」

……

思い返せばミサで会った時に「そういえばオイロケ通りですが、盛況らしいですね」とか言ってたな。サキュバス特有の猥談な雑談じゃなかったのかアレ。

「それにしても面白いコトになってましたねぇ」

「まぁな。まさか教会の下部組織だったとか……そして急に町規模になった弊害だな」

「パパの銅像でもあったらみんな『パパが一番偉い』って、しかも顔もばっちりわかりますよ?」

「……そうか、銅像ってそういう役割があったんだな」

そして今後の対策をアッサリ提示してきた。

SNSどころか写真すらないこの世界において、直接見る以外で偉い人の顔を知るのは肖像画か像か、ということになるわけだ。

……鉄で作ってみるか? いや、錆びるか。なら青銅を調達するとして……自分で自分の像作るのはちょっと恥ずかしいなぁ。

「最初に領主とか名乗ればよかったじゃないですか」

「村長とは名乗ったぞ。あと別に俺、領主じゃないし」

「……あ、そっか。パパってまだ公的には『開拓村の村長』でしたっけ。さっさとハク伯母様にゴレーヌ領の領主に任命してもらわないとですね」

「ちょっとまって? それ未来ではそうなってたってコト?」

「ええ、なんやかんやで」

なんやかんやしちゃったかぁ……

俺は村長としては飾りなのだが、俺以外にソトを制御できるとも思えない。

むしろ俺も制御しきれていないんだけども。

「領主になったら領地の貴族とか色々厄介事が増えるんだろう?」

「大丈夫ですよ。ゴレーヌ領の貴族ってつまり村の重鎮がほぼそのままスライドするだけでしたから。あとはお隣のツィーア領、パヴェーラ領との交流ですが、これも既にありますし。ニクお姉ちゃんとマイちゃんの結婚式とか楽しみですね!」

うん??? あ、そういえばツィーア領主の娘、マイオドールとニクが婚約したままだったな……

「え、ちょっとまって? 未来だとその二人本当に結婚してた?」

「性別弄る薬も私が【ちょい複製】すれば普通に使い放題ですから、なーんの問題もないですね。そうでなくてもレオナさんにお願いすれば最高品質、効果永続のお薬を作ってくれますよ」

混沌製薬、創業者との強いコネがあったわ。

「幸せな家庭を築いていましたし、止める理由はないですね」

「そうなのか?」

「詳しくは秘密です」

……生粋の貴族として教育されているマイオドールは、今後町になったら統治で大活躍してくれそうだな。

うん。止める必要はなさそうだ。

「あ。そうだ。話を戻しますが、像とかつくらなくてもこまめな視察すれば顔覚えてもらえますよ。私はそんなかんじです! カリソト区で私の顔と名前をしらない人はいませんよ」

「ソト、オイロケ通りも視察とかしてたの? 危なくないか?」

「ふふん。並みのニンゲンが私に勝てるとでも?」

「……得意げだが、ダンジョンコアの機能を縛っててやれるのか?」

「私はパパから魔法を習ってる設定なので!! それに視察の時は側近もつけますから」

そうか、秘書とか護衛とか居たら子供でも下手に絡まれることもない、か。

むしろ大人を従えている子供とか絶対お偉いさんだもんな。手を出したら厄介になる事間違いなし、十分威圧になるのか。

「されるとしても誘拐ですが、誘拐なら私はどこでも帰ってこれますし」

「誘拐、されてないよな?」

「心をレオナさんに、以外はありませんね!」

そうだ、コイツ逆にレオナを拉致監禁してたんだった。余計な心配だったか。

「というわけで、顔つなぎするので今から一緒に視察に行きましょうか、パパ」

「おう、いいぞ。そうだ、父親らしく肩車でもしてやろうか」

「え、パパ肩車できるんですか? 倒れません?」

「ゴーレムアシストあるから大丈夫だ。なかったら危ないから提案しないけどな」

ソト、普通に小学3年生くらいだから。俺の体格だとちょっとね。

「じゃあお願いします! 肩車とかめちゃ親子っぽいですねぇ!」

「だろ? いい案だと思うんだ」

「あ。でも……多分あとでママも肩車してあげないと拗ねますね!」

「……ああうん。DP節約形態ならいけるかな」

拗ねるさまを簡単に想像できたので、帰ったら肩車を提案しよう。

かくして、アップルパイを食べた後、ソトを肩車してカリソト区の視察を行った。

……回る場所回る場所でまず「おやソト様、移動補助に雇った冒険者ですか?」と言われまくったりもしたが、その後訂正も兼ねて顔つなぎは一通りできたと思われる。