軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アルコーウェル

そして、さらに数日後。俺達はようやくワコークへと到着した。

木造建築や、漆喰の白い壁に瓦屋根の塀と家、イメージとしては江戸時代くらいの感覚だろうか。そこにいる人々の髪は黒髪ではなかったが、服装も甚平とか浴衣のような、どう見ても和服。まさに和国といったイメージである。あと流石に髪型はちょんまげとかではなかった。

「ここはアルコーウェルって港町ですね」

「そんな名前の町なのか」

ワコークと付けた割には普通に横文字っぽい名前である。

と、ワタルがなにやら舌打ちしそうな顔をしている。

「むむっ……ケーマさんなら何か反応するかと思いましたが……」

「うん? 町の名前になにかあるのか?」

「ええ、酒の井戸――アルコール・ウェルが名前の由来、つまり酒井、サカイってことなんですよ!」

「……そっかー」

どどーん、と重大発表のように言うが、ぶっちゃけどうでもよかったので生返事を返しておいた。ワタルは今度こそ舌打ちした。

というか、話は聞いてるんだぞ。日本かぶれのアメリカ人勇者が作った国、それがワコークだって。

そういう小ネタもちょいちょい仕込んでるに違いないと思ってるよ。

「それじゃ、まずは着替えましょう! こんなこともあろうかと服屋を呼んでますので、みんなで和服を堪能する方向で!」

ワタルがパンパンと手を叩くと、服屋の商人がすすすっと着物をもって現れた。

浴衣とか甚平なんだが。

「あー。イチカ先輩から聞いたことありますよワタルさんー? 確かー、ワフクって下着を付けないんですよねー? えっちー」

「ち、ちがいますよっ!? 別に今どきは下着つけてもいいんですよ!?」

「あー、下着を覗きたいんですもんねー、ワタルさんはー」

「うぅ……ッ! それは見たいですけど! 今は関係ないでしょう!?」

「あらー? じゃあ見なくていいんですかー?」

「……ネルネさん……下着が、見たいです……!」

おうおう、手のひらの上転がされとるわ。

ネルネ、正式にワタルの恋人になってからますます容赦なくなってない?

「ところでワタル。ここだけの話、ネルネとはどこまで進んでるんだ? 船ではずっと一緒の部屋だっただろ?」

「え、いやー。あはは。大丈夫です、ちゃんと責任は取りますので!」

「うん、そこは疑ってないが」

勇者として稼げる分、経済的には妻の一人や二人居てもおかしくないのがワタルである。

……それがどうしてネルネに引っかかってるのか。ソレガワカラナイ……

ともあれ、俺とワタルは甚平を、ネルネとロクコは浴衣に着替えた。衣装は買取だが経費だそうな。

「ケーマ。どう? 似合う?」

「おう。良く似合ってるぞ。俺はどうだ?」

「その紺色いいわね。お父様を連想させる良い色よ、似合ってるわ」

このくらいちゃんと褒めろ、と言わんばかりにカウンターしてくるロクコ。

「ワタルさんはー、ちゃんとできますかー? うふふー?」

「いやぁ、淡い黄色がネルネさんの茶髪と合ってとても可愛らしい! まるで菜の花のように可憐なあなたをエスコートする栄誉を僕にいただけますか?」

「よろしくてよー、ですよー」

と、ネルネの差し出した手をワタルは恭しくつかんだ。なお、ネルネからは褒めてないのだがそれは別にいいらしい。

「……ワタルお前、そういう言葉も話せたんだな」

「ええ。ただ僕がこういうのを言うのはネルネさんにだけですから、他で聞く機会がなかっただけでしょう」

「うんうん、それでこそネルネの婿に相応しいわね」

ちゃっかりネルネを嫁に出すのではなくワタルを婿に迎える方向で話すロクコ。ワタルもそこにはこだわりが無さそうなのでどっちでもよさげだが。

「婿入りしたら、ケーマさんの秘密も教えてもらえるんでしょうかね?」

「そうだなぁ、俺に秘密があるかはさておき、その時はなにかしらあるかもな」

人をモンスターとしてダンジョンの配下に、とかってできるんだろうか。

もしそれができるならワタルにもダンジョンの秘密を教えられるかもな。うん。さすがに勇者を奴隷にはできないし。

「……ところで、俺達ってワコークで何するんだっけ?」

「ヤマタノオロチってモンスターの探索と討伐ですねぇ。探索については、被害が出てる町に向かえばいいだけなので大して手間ではないですが」

ヤマタノオロチ。ヒュドラ亜種、8つの頭を持つ蛇・ドラゴン系モンスターらしい。

「おいおい、そんな危ないヤツ、俺を関わらせるんじゃないよワタル」

「そうですか? でもケーマさん、ドラゴンテイマーじゃないですか」

それは 相手(イグニ) の親と知り合いだったからできたヤラセであって、さすがに知り合いでもなんでもないモンスター相手じゃどうしようもないぞ。

「……ケーマさんならヤマタノオロチを手懐けてしまうかもしれませんね」

「無茶言うなよ。そもそも話とか聞いてもらえないだろうし、普通にひ弱な俺を巻き込むんじゃない。俺は後方支援に徹させてもらうぞ?」

「そう言いながらケーマさんがやらかしてくれるって信じてますよ、僕は」

いやなフラグを立てるんじゃありません……!

「ま、今はアルコーウェルを観光しましょう! さあ行きましょう皆さん!」

「やれやれ……」

と、ワタルとワタルのエスコートするネルネを先頭に俺達はワコークの町へと繰り出した。